七夕
「笹、もらってきたよ」
肩に担いで、高校2年の井野嶽幌が、双子の姉にあたる桜に、ワサワサとした笹を見せながら言った。
「ありがと。そこに立てといて」
桜が、短冊とサインペンを用意して、机の上に並べている。
傘立てのような陶器のツボに、笹を突き立てる。
「みんなは」
「もうすぐ来るみたい」
桜は、次は短冊を笹に結ぶためのヒモの準備をしている。
「七夕ってことは、もう7月だもんなぁ…」
「珍しく愚痴?」
幌が桜の前の椅子に座って、近くの短冊を整えながら言った。
「七夕って、織姫と彦星が一年に一回だけ逢うことができるって日でしょ」
桜が幌に聞く。
「元々は旧暦だから8月ぐらいなんだよな。だから、梅雨のころじゃないから、大概晴れてたそうなんだ。今とは違って、光害がなかったから、天の川も見やすかっただろうね」
「天の川、見たかったなぁ…」
残念ながら空は見えず、どんよりとした雲が、空一面を覆っていた。
「ま、あきらめるんだな。これで雨が降れば、きっと二人が流した悲しみの涙なんだよ」
「そのあたりは会えたからうれし泣きしてるってことにしとこうよ…」
桜が幌に言う。
「そうかもな」
その時、インターホンが鳴り響いて、二人の友人たちが家にやってきたことを知らせた。