あの時のあなたの言葉を私は忘れてしまったことはありません
春と言えば卒業式。皆さんは春になると卒業式を思い出しませんか?
登場人物
・楠つばさ
・小村亮太
・柳沢朱音
桜の蕾が大きくなっていた。卒業式が行われている。大学2生生の私は3月になるとあの時を思い出す。
それは私が中学3年生の時だった。あの頃の私に悲しみや寂しさなんてなかったから卒業式の途中も家で読んでいた読みかけの漫画のことしか考えていなかった。
(早く卒業式、終わらないかなー)
当時の私は本気でそう思っていた。卒業式が終わったら漫画を家で読む。私はそう決めていた。まさかこの予定が壊れるなんて思いもしなかったから。
「卒業生が退場します。」
その言葉だけ私はちゃんと聞いていた。待ちに待った言葉のようだった。泣いている生徒が多い。保護者も泣いている。
(そんなに泣くようなこと、あったっけ?)
当時の私は感情が薄かった。映画だって皆が泣いている中、私はぼーっと見ていたほどだった。
「つばさちゃん、この後時間ある?」
失音が声をかけてきた。友達の誘いを断るなんてちょっと嫌だったから
「あるよ。どうしたの?」
そのな感じで返事をしたのを今でも覚えている。
「よかった!この後、お祝いもかねて私の家に来ない?」
朱音がそう聞いてきたことも覚えている。その後、普通に朱音の家に行った。この後、どうなるかなんて想像も出来なかった。朱音はその時、男子と目を合わせていた。その時の私は不思議だったけど聞かなかった。朱音の家についた。部屋に案内されると朱音が
「ちょっとトイレに行ってくるから待ってて。」
そう私に言ってきた。朱音の目がなにか企んでいる目だったのを鮮明に思い出せる。それでも当時の私は
「分かったー」
軽くそう流した。朱音が部屋を出てすぐに部屋のドアが開いた。朱音だと思った。
「朱音、速かっ…」
そう私は言いかけた。でも朱音ではなかった。あの驚きはそれ以外一度も感じたことがなかった。来たのは小村亮太だったから。小村と言えば学校で女子達がキャーキャー言うレベルのイケメンな顔を持っている男子だった。運動も勉強もできてイケメンで優しい亮太は何度も女子に告白されていたが全部断っていた。恋愛感情なんか持っていなかった私が唯一ちょっと気になっていた男子でもある。誰にも言わなかったけど。そんな亮太が急に来た。
「よっ。偶然だね。」
亮太がいつも通りの声で言ってきた。少し気になる程度で恋愛感情なんていうレベルではなかった私は普通にスルーした。私が朱音を呼びに行こうとしたら亮太が腕を引っ張った。
「俺、お前に嫌なことしたか?」
私は何を言っているか分からなかった。いつも通りの態度で接していたから。
「何言っているの?」
「だからさ、お前に感情はないのか」
亮太が顔を覆った。私はキョトンとしていたらしい。それでも私は
「あなた達はなんか用?」
部屋のドアの影から見えた男子を私は見つけてそう言ってしまった。亮太は顔が赤くなる。
「だから!全部言わないと分からないのかよ!」
亮太がその日、初めて私に怒った。それでも亮太はあの勇気がいる言葉を口にした
「好きです」
その言葉がもう忘れられなかった。
「亮太ー、言えたじゃん!すごいよ。カップル成立ー!」後にいた男子と女子がそう騒いだ。その後はどうしたかもうドタバタで忘れてしまった。でも唯一覚えているのが
「桜の下でまた会おうな」
そう言って桜の下で別れたこと。
ーそしてちゃんと付き合った私だった。
「また思い出しているのか?」
亮太の明るい声は私にとってのなくてはならない物になった。
「あれ、俺の黒歴史だぞ」
今は私と亮太は同じ大学の学部に通っている。
終わり




