弱小ヒーラー、マッサージを受ける。
「まおー様、ちょっといいですか?」
「何だ、オリーか」
魔王に拉致されてから一週間が経った。ここでの暮らしは思いの外のんびりとしていて、捕われている身だが贅沢三昧で自由度も高く、かなり満足している。
だから今日は私の疲労回復魔法と自慢の手技を使って魔王にお礼をすることにした。
魔王の部屋にやってきた私はその部屋のシックな雰囲気に見惚れながらも口を開く。
「無料で贅沢な暮らしをさせてもらってるので、お礼がしたいなぁって」
「お礼? 何をしてくれるの?」
「マッサージです! 実はパーティーメンバーからもマッサージだけは上手だって褒められてました」
戦いの場では足手まといになっていたが、仲間の疲れ切った体を癒やすのは本職というだけあって得意だった。
「・・・へぇ、きみみたいな可愛い子からマッサージしてもらえたら、さぞ最高だろうなァ」
魔王はベッドに腰を下ろし私を手招きした。
「可愛い?」
「あぁ、オリーは可愛いよ」
魔王に可愛いと言われた―――?
今まで可愛いと言われたことは何度かあるが、こんな美しい人に言われるとなんだか気恥ずかしい。
「まおー様も美しいですよ」
「―――っ」
魔王も私と同じように反応に困っている様子だった。
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「では始めますね」
「うん」
服を脱ぐように指示したつもりはないが、魔王は自ら上半身に着ていた服を脱ぎ、ベッドの上にうつ伏せになった。
「鍛えてますね」
「そうかなァ?」
ここまで鍛えられた体を見るのは初めてだ。魔王は物理攻撃をあまり使わないはずなのに、しっかり鍛えてて偉いなと感じた。
私が疲労回復魔法を唱えると、魔王はリラックスした表情を見せた。
指先や手のひらを使って肩甲骨の後ろや腰のマッサージを繰り返し行う。
「ぁぁ・・・ そこいいね。気持ちいいよ、オリー」
魔王はご満悦な様子で、徐々に体の力が抜けていくのが分かる。
今の私にできることはこれくらいだ。
「俺もオリーにマッサージしたいな」
マッサージを終えると、魔王は私に涼しい笑顔を向けながらそう言った。
「わ、私に?まおー様がマッサージ?」
「あぁ、俺にもやらせて?」
「立場的に心配です」
「立場なんて気にするな。ほら、背中を向けろ」
魔王は半ば強引に私をうつ伏せに寝かせると、慣れた手つきで背中のつぼを押し始めた。
「―――っ」
痛みを感じつつも徐々に心地よさが上回る。
力が入っていた筋肉の緊張が抜けていき、こりがほぐれていく感覚に気持ちよさを覚える。
「まお――っ、ぁっ、そこ、気持ちいい」
魔王はマッサージのセンスがあるのかもしれない。
「―――オリーは俺を興奮させるのが得意だなァ」
想像以上に快適な魔王のマッサージを受けた私の体は驚くほど軽くなっていた。これが幸福感か。
「どうだった?」
「まおー様の、凄かったです。また一緒に気持ちよくなりましょう!」
「―――っ、可愛い・・・」
言葉のチョイスを間違えたような気もするが、気持ち良かったのは事実。私は魔王にとびきりの笑顔を向けた。
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