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弱小ヒーラー、非力さを痛感する。

「―――す、すごい!美味しそう!」


「きみはたくさん食べて力を付けないと」


長いテーブルの上にずらりと並べられたご馳走を見て、私は目を輝かせながら驚嘆の声を上げた。


「全部食べていいの?」

「あぁ、どうぞ」


「無料で!?」

「うん、無料だね」


(―――最高だ)


こんなにたくさんのご馳走を()()()食べられる日が来るなんて。

パーティーメンバーと過ごしていた頃は、勇者が大の節約狂だったため私の食事はいつもパンと水だけだった。

モンスターを倒せない私は自力でお金を稼ぐこともできず、こっそり贅沢をすることさえも許されなかったのだ。


それが、今、魔王城で―――

未だかつて経験したことのない贅沢な時間を過ごしている。


食べたことのない料理を口に含むと自然と笑みがこぼれる。

あぁ、なんて美味しいのだろう。

きっと一流のシェフが作ったに違いない。

レベルの高いパーティーは毎日こんな気分を味わっているのかな。


「見ていて飽きないなァ」


魔王は無遠慮に料理を頬張る私を興味深く見ていた。食べているところを見られるのは少し恥ずかしいが、私の手は止まらなかった。

自分の胃袋がこんなに大きかったなんて。魔王に捕まっている身だが、この生活、悪くない。むしろいい。


「お腹いっぱい・・・」


全ての料理を平らげた私を見て、魔王は目を丸くした。


「さすがに食べ過ぎましたかね?」


「ううん、満足してもらえたようで何より」


真向かいの椅子に座っていた魔王は立ち上がり私の真横まで来ると、私の大きく膨れたお腹を撫で始めた。


「・・・・・・あの」


「ん?いっぱい入ってるなァって」


いつもニコニコしているが、この男には裏の顔がある。油断は禁物だ。



「――よし、今日も特訓だ」


魔王に連れられてやってきたのは中級モンスターが生息する雪山だった。

この雪山の探索は結構難易度が高く、まず防水・防風性の高い装備を揃えるところから始めなければならない。通常装備のままここに入ってしまうと徐々にHPが削られていくため危険なのだ。

雪山は冒険者たちが苦手としているステージでもある。


私もここは苦手だが、魔王が超高級装備一式を貸してくれたおかげで今は無敵状態だった。


「今日は火の玉を出せるまで雪山修行だよ」


「えぇ、長時間は嫌です」


「じゃぁ頑張るしかないね」


私のレベル上げに付き合ってくれるのは嬉しいが、今更成果が出るとは思えない。

回復魔法なら自信があるのだけど。



1時間後―――


「駄目です。火の玉が出せません・・・」


やっぱり私には攻撃魔法のセンスがない。これだけ集中しても何も起きないなんて・・・ しかし魔力はあるのにどうして攻撃魔法だけ出せないのだろう。


「簡単なんだけどなァ」


ブワッ


「―――ひゃぁあ!!」


魔王の手から放たれた火の玉は相変わらず大きくて恐ろしかった。自分とは比べものにならないほどの凄まじい魔力量にはつい圧倒されてしまう。

しかも魔王は私みたいに杖を使わなくても魔法を発動させている。

私は杖の力を借りてもそこには虚しい空気が残るだけ・・・


「いいなぁ」


「俺がこれを君に向かって投げたらどうする?」


魔王は口角を上げ意地の悪い笑みを浮かべた。


(―――諦める)


魔王と私には絶対的な力の差がある。

私がいくら足掻いても魔王の手から逃げることは出来ないのだ。

きっと魔王は私に飽きたらすぐに・・・


「オリー?」


魔王は不思議そうに私の顔を覗き込む。


この気持ちはあなたには理解出来ないでしょうね―――。 弱者の気持ちなんて。


ふとこぼれ落ちた涙を魔王は見逃さなかったようで、頬を掴まれ無理やり上を向かされてしまった。


「オリーが泣いてる」


「何で?」と魔王は尋ねてきた。

自分の非力さに悲しくなって泣いてます。とは言えない。そんなこと言ったらますます馬鹿にされるだろう。


もっと強い心を持たねば―――!


「だ、大丈夫!目にスライムが入っただけ」


私は目をこすりながら苦笑いを浮かべた。


「―――ふぅん、スライムなんかいないけど」



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