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弱小ヒーラー、危機に陥る。

私の名前はオリヴィア・ノールズ。

パーティーメンバーからはオリーと呼ばれている。

群青色の瞳に、銀白色の長い髪。

服装は白いロングケープ、白いブーツと、全身を白で統一している。

そんな私の職業はヒーラーで、《《あまり言いたくないが》》攻撃魔法をひとつも使えない回復専門の魔法使いである。


長い旅の末、ようやく辿り着いた魔王城で私達を待ち構えていたのは冷酷無慈悲な魔王、ジェイス・ブラックウッド。

どこか危うさを感じる切れ長の紅蓮色の瞳。暗めのパープルブラックの髪は腰まで伸びていて、妖艶な光沢を浴びている。

私も髪の長さには自信があったが、魔王には負けた。


(―――綺麗だ)


魔王は恐ろしいほど美しい容姿をしていて、私は危機的状況にも関わらず目を奪われていた。


(―――って、だめだめ!)


昔から美しいものには目がないのだ。 


「あっれ~ぇ、残りはヒーラーのきみだけかぁ~」


余裕を感じる低く、柔らかい声。

長い脚を組みながら玉座に座っている魔王は片肘をつきながら怪しく微笑んだ。


今現在、私はMP不足で瀕死状態の味方を回復してあげる事が出来ず、魔王と一対一になっていた。圧倒的に不利な状況だ。


(この状況、どう考えたってやばい)


「今回も弱小パーティだったなぁ~。相手にならなくてつまんな」


「・・・・・・」


「ばいばい」


魔王は私達を小馬鹿にするかのように目を細めて笑うと、左手を宙にかざし強力な魔法を放った。


ブワッ


「―――っ」


巨大な火の塊が私めがけて飛んでくる。


避けられない。焼き尽くされる。ゲームオーバーだ。

味方を癒す役目の私は所詮、一人では敵に立ち向かうことすら出来ない―――!


目を閉じて最期ゲームオーバーを待とう。



(あれ? 火の塊は?)


いくら時間が経過してもゲームオーバーになる気配がなかったため、薄っすらと目を開ける。

魔王から放たれた巨大な火の塊はこつ然と消えていて、何が起きたのか分からなかった私は辺りをキョロキョロと見渡した。


まさか私の内なる力が発動したとか?

あり得る。最終決戦らしいシナリオだ―――!


「ふふっ」


魔王に目を向けると、私を見下しながら薄ら笑いを浮かべていた。

不気味だが、魔王の顔は彫刻のように美しい。


「あのさァ、ヒーラーって攻撃手段あるの?」


(ない―――。少なくとも私は)


「ちょっと気になるから攻撃してみてよ、俺に。きみ、ザコいから特別にターンを譲ってあげる!」


すごく馬鹿にされている―――!?

私の内なる力は?

ますます雲行きが怪しくなってきた。 け、けれど・・・ この状況を打破するためには、魔王からもらったチャンスを活かさなければならない!


私は形相を変えて魔王に近付き―――


コツン


とりあえず、杖先で魔王の体を叩いた。


「―――え?」


魔王は不思議そうに私を見つめた。


攻撃魔法を期待した?残念、私は《《杖で叩く》》と言う物理攻撃しか携えていない。


何故なら攻撃魔法が使えないからである―――!


「こ、攻撃です」


「きみよくここまで来れたね」


「・・・・・・」


攻撃魔法を覚えようとしたこともあった。しかし私にはセンスがなかったのだ。

レベル1のスライムにすら負けて馬鹿にされる始末。

パーティーメンバーに「もう攻撃魔法は諦めて回復に専念しろ」と言われて以降、攻撃魔法の練習はしていない。

回復専門魔法使いとして、ひっそりと旅をしていた。

しかし最後の最後で、仇となるとは。

今まで仲間に頼りっぱなしだった自分に罰が当たったんだ―――。


「HPが1も減らないなんてことある?やっば、・・・ザッコぉ」


腹を抱えて笑う魔王をよそに私は次の一手を考えていた。

この魔王、無駄口が多いし、もしかしたら隙を見て味方を回復できるかもしれない。


私をあまく見たこと後悔させてあげる―――!


私は意識を集中させ回復魔法を唱える。


「はいだめー!」


突如、玉座から立ち上がった魔王は私の杖に手を伸ばした。


「―――か、返して!」


魔王に無理やり杖を奪われてしまい、完全に無防備状態になってしまった私は絶望の表情を浮かべる。


(私の大切な杖がぁ・・・)


身長差のある魔王から杖を奪い返すことができず、私はその場に立ち尽くすことしかできなかった。


終わった―――。 悔しいが私一人では魔王に対抗できない。


「弱い者いじめしてごめんね?はい、返すね」


魔王は心無い謝罪をしながら私に杖を返した。

見下されていることには腹が立つが仕方ない。

私は確かに弱い魔法使いだ。

魔王に挑むには早すぎた。次はもっとレベル上げてからここに来よう。


「では私にトドメをさして、ゲームオーバーにしてください」


「・・・潔い魔法使いサンだ」


ボッ


私の周りを炎が囲う。まるで灼熱の牢獄だ。

これほど強い魔王が相手だと、もはや逃げる気力も起きない。


「あつい・・・」


ゲームオーバーになったあとは生まれ変われるとは限らないけど、もし生まれ変わることができたら・・・

次は攻撃魔法も使える強い魔法使いになりたいな―――。


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