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Beyond of cosmos = 星巡りの物語 = 地球編  作者: 詩紡まりん
第1章 プロローグ = 再会 =

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9/10

「原 紫苑先生」と「大谷 蒼宙」


 紫がかった明るい黒髪のはら 紫苑(しおん)大学准教授は、へそを曲げていた。


「なんで私をのけ者にしたんです?」

 真夏だというのに、ホットのブラックコーヒーを飲みながらシオン先生はお怒りでした。


「君は、インパクト強すぎるだろ?覚醒前の彼らには、まだ灰汁アクが強すぎる」

 と黄谷橙吏こうたにとおりが言うと

「私をタケノコやジャガイモの芽と一緒にしないで下さい」

 と、原紫(シオン)大学准教授は反論した。


 それを見ていたアランが

「まぁシオン、君を呼ばなかったのは私の判断だ、許してくれ」

「でも、いずれ彼らを君に任せることもあるだろうから」

 と言うと、シオンも落ち着きを取り戻した。


 なんだかんだとシオンは、リゲル・ラナではアランの腹心の部下だったので、アランには素直なのである。

 むしろ、地球に自分から飛び込んできたのはシオンであり、他の者と違い、自らの意志でアランの元に来た忠臣なのである。


「しかし…、この星はおかしな世界ですよね?」

 と、シオンは落ち着きを取り戻して言った。


「この地球には、魔法の力がほとんど無い」

「科学という人間の目で確認できる物だけを信じ、そうした力に頼ることで魔力が弱まってしまったのかもしれない」

「だから、この星で魔法を教えるのは困難だ」

 杏奈と暁を教えることを思いシオンはそう言った。


「確かにこの星の魔力はほとんど消えている」

「しかし、神聖力は充分にある。Holy Powerは、宇宙《Cosmo》全てにある力だからこれだけは消えることはないのだろう」

 と、トゥルリーも同意した。


「あのふたりは、リゲル・ラナではどうだった?トゥルリー先生?」

 と、アランがトゥルリーに尋ねた。


「Holy Mageクラスには居たから、White mageよりは力も上だろう?」

「成績は、どうだった?マリア先生?」

 とマリアに話をふった。


 マリアは、しばら記憶を呼び起こすように一点をみつめてから言った。

「成績は悪くはなかったと思うわ」

「仲良も良くて、いつも一緒に自主練もしていたはずよ」

「だから、同じ高校で出会ったのかしらね?」


 ふたりと同じ高校に通うアランは思うところがあるように言った。

「そうか、引き合ったのかもしれないな」

「ツイン・レイだったりしてな?」

 するとマリアが、と意味ありげに言った。

「それはそれで苦しいことにもなるから…、出会うタイミングって大切よね?」

 男三人も、マリアの言いたいことの意味を理解しているかのように頷いた。

 なんといっても彼らの年齢は、ふたつの星を合わせて300歳前後。

 経験も豊富なのである。


 ツイン・レイとは、簡単に言えば自分の魂の片割れである。

 人は、自分の魂の片割れを求めて恋愛をすると言われるほどであるが、その己の魂の片割れと出会うことは至難の業である。

 また、たとえ出会えたとしても生まれた時代がズレていたり、必ずしも結ばれる状況に無かったりすることもある。

 何度も転星を繰り返し、やっと結ばれることもある。

 また、結ばれたとしてもいずれ死による別れは来る。


 その一例がアランの両親やアランの叔父夫妻なのだが、そのお話はリゲル・ラナ編でご覧頂きたい。


 さて、今日三人は、原紫苑はらしおん准教授の元に集まったのは、暁と杏奈が見つかったという報告と共に、もう一人の仲間の存在の確認の為であった。


 原准教授の大学に、どうやらリゲル・ラナから転生したらしい者がいるらしいというのだ。

 彼の地球での名前は、大谷蒼宙おおたにあお

 原紫苑ことシオンの大学「日本帝都大学」の学生らしいとのことだ。


 シオンが何度か話してみたところによると、本人はまだ気づいてなさそうとのこと。

 おそらく、オスカー・エンドリケ・ブルーフォレストの転生だろうとのことだ。


 ブルーフォレスト家の使徒は、代々、ドラゴンだった。

 リゲル・ラナでは、体を小さくも大きくも出来たが、さすがに地球にドラゴンは、存在しない。


 杏奈と暁の再生と共に使徒の猫も復活したが、オスカーの再生が進んで使徒の復活はあるのか?

 誰も経験がないことだけに四人も迷うところであった。

 シオンも確証が無いだけに、大谷蒼宙おおたにあおとの接触を迷っているところであった。


「それで、シオンはその学生との接点はあるのか?」

 アランが尋ねた。


 リゲル・ラナでは、アランの腹心の部下であったシオンは、地球でもアランには、忠実である。

 大学の准教授が、高校一年生の男に服従している姿は、傍から見たら不思議な光景だが、リゲル・ラナ時代からの付き合いである麻璃亜マリア橙吏トゥルリーにとっては、普通の光景であった。


「はい、一応、私の授業も履修している生徒です」

 と、シオンが答えた。


「シオンって、大学で何をしているんだったかしら?」

 と、マリアがシオンに尋ねた。


「建築学部で社会基盤学の研究室にいる」

「いわゆる道路・橋・ダムといったインフラ整備から都市計画、防災、環境保全などの社会環境を良くする研究だよ」

「リゲル・ラナに戻ったら役立つかと思ってね」

「本当は、物理化学も面白いと思ったんだが、大学ってところは、経済的利用価値があることにしか研究費が降りないから」

「結局は、軍事利用されるのがオチなので、私は好まない。ということで、社会基盤学にしたんだ」


 シオンの説明を聞いてアランは、感心したように言った。

「シオンは、昔から帝国思いだったからなぁ。ここ(地球)に来ても帝国のことを考えてくれていて俺は嬉しいよ」


 アランに褒められてシオンは嬉しそうに言った。

「アラン様にそう言って頂けると益々やる気になります」


「おいおい、ここではアラン様はやめてくれよ」

「大学の先生が高校生に様は、無いからな。アランと敬称略で良いよ」


「では、アラン君で!」

「まぁ、それなら良いか」


 リゲル・ラナでは、防衛参謀長だったシオンにとっては、帝国の執務大臣と帝国軍総司令を兼任していたアランは偉大な上官なのである。

 地球に転移して来たといえども、いつかリゲル・ラナに戻るつもりでいる彼にとっては、今もアランは尊敬する上司なのである。


「ところで、大谷蒼宙おおたにあおのことだが、彼も、高校生の時にうちのシステム利用してた気がする。データーはあると思うが…」

 と、トゥルリーが言うと、すかさずシオンが、

「まぁ、今の地球では、個人情報法に引っ掛るけどね」

 と、言った。


「自宅はわかるってことか!!」

 と、アランがふたりの会話の間に割って入った。

 リゲル・ラナ時代は、ライバル?のような関係のシオンとトゥルリーなのである。


「問題は、彼の再生がどれだけ進んでるか次第だな」


「大学生は、夏休みには大学には来ないのかしら?」

 と、マリアが尋ねた。


「そういえば、河川のマイクロプラスチックゴミの研究の一環で、学部主催の河川のゴミ回収のボランティア活動があるんだ」

「私は、暑いから行かないつもりだったけど、彼は参加すると思う」


「相変わらずだなぁ、シオンは」

「昔から本の虫で、帝国図書館に籠ってて外には出ないヤツだったもんな」

 トゥルリーがそう言うと、

「いや、ここの夏は暑すぎるよ」

 と、シオンが反論した。


「特に、ここ数年は異常よね?」

 と、マリアがシオンの加勢に入った。


「それで、そのボランティア活動はいつ?」

「来週です」

「高校生の俺が参加しても?」

 と、アランが尋ねた。


「はい、地元のボランティアも参加しますので問題ないと思います」

「では、高校一年の赤井凛音と桃井杏奈、栗栖 暁の三名を参加にしておいてくれ!」


 アランが、クリスとアンナを誘うと聞いて、驚いたようにマリアが言った。

「えっ?あのふたりも?」

「いいだろ?」

「それなら、私も参加しようかな?」

 暑いのが苦手なシオン先生が参加表明をした。


「シオン、暑いのは苦手でしょ?」

「悩みますなぁ」

 彼は、早く同じ星(リゲル・ラナ)の、これから自分の教え子になる者たちに会いたいのである。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 俺は、大谷蒼宙おおたにあお

 大学に入学して二度目の夏休み。

 バイト以外は今のところすることが無い。


 遊ぶ友達もいない。

 というか、心を許せる友達がいない。


 勉強も運動もちょっと頑張ればすぐ人並み以上には出来る。

 でも、頑張る理由が無いのでやる気が出ない。


 最近は、やたらと変な夢ばかり見る。

 よく前世の記憶がある人の話を動画で見たりするが、それとはちょっと違う気もする。

 中世ヨーロッパ時代のようにも思えるが、それとも違う。

 今流行の転生ってヤツなのか?とも思うが、こんな平凡な男に生まれ変わってもお話にもならんしなぁ。


 とりあえず、大学に入ったら生まれ変わった気持ちで新しい自分で頑張ろうと思っていた。

 高校の頃までやっていた剣道と柔道を続けるか迷ったが結局大学ではやらなかった。

 スポーツは、なんでもそれなりに出来るので、何か他のものをしてみたいと思いつつ夏になってしまった。


 スポーツは、好きだが、団体競技の人間関係が苦手なのだ。

 初め少し、大学のサークルに参加してみたが、やはり人付き合いが面倒で辞めた。

 このままだと、体が鈍ってしまう。

 それは、それで良い気がしない。

 今、流行のジムにでも通おうかと思ったりしている。


 理系の大学は夏休みも無いと聞いていたが、うちの大学はそうでも無なさそうだ。

 来週、大学のボランティア活動で、川でゴミ拾いがあるらしい。

 このクソ暑い中、そんなことする暇人は大学生くらいなのかと思っていたら、地元の一般の人も参加するらしい。

 俺は、魚や虫が好きだから、川でゴミ拾いも悪くないかと思って参加することにした。

 とにかく、何かしなければという気持ちが俺をつついている。


 最近、なぜか俺に一匹のイモリ?ヤモリ?が懐いている。

 家の周りに居たからヤモリなのだろう。

 こいつらは普通、人間を見たら逃げていくはずなのに、コイツだけは逃げずにいる。

 元々爬虫類好きなので、飼うことにしたのだが、こいつも川に連れて行ったら喜ぶのだろうか?

 それとも逃げるのだろうか?

 不思議なことに、なんとなく、逃げないような気がする。


 最近は、なんだかコイツに感情まである気がして来た。

 家族は、

「そんな爬虫類相手にニヤニヤして気持ち悪い」

 と、言うが、俺はコイツを可愛いと思ってしまう。

 そろそろ、名前を付けてやりたいと思うが…俺、へんなのか??


 大谷蒼宙おおたにあお

 とりあえず、大学生にはなったが不完全燃焼。

 何か熱中できるものを見つけて全力でやってみたい19歳の夏。



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