Holy Mage達の地球ボランティア活動
第1章 終わりにあたり、章の設定をしました。
夏休みに入り、学校の課題とゲームしかやることが無いと思っていた栗栖暁。
しかし、マエルという使徒が現れ、謎の人物だった赤井凛音が、前星からの知り合いだったことを知り俄然人生が楽しくなって来た。
赤井凛音ことアランには、「魂を磨くように」と言われた。
まだイマイチ理解できていなかったが、全てのことに全力を尽くすことが大切らしい。
今さら部活に入る気はしないが、このまま何もしないと体を鍛えることは出来ない。
近くに出来たスポーツ・ジムにでも通おうかと考えていた。
「ねぇ、マエル?」
「はいにゃ」
暁の使徒の猫のマエルが答えた。
特に親しい友達のいない暁にとって、親友ができた気分である。
「マエルは、前の星での俺のことは覚えているの?」
「ご主人様の記憶が復活すれば、ボクの記憶も完全復活すると思います」
マエルは、暁と向かい合って、ちょこんと座って答えた。
「そっか~。リゲル・ラナってどんなところだったんだろう」
「ご主人様は、全く覚えてないですか?」
「なんか、うすぼんやり」
「でも、桃井さんと話していると、なんか思い出す気がするんだよね」
「ご主人様は、前の星では、アンナ様とすごく仲良しだったんですよ」
「えっ?!そうなの?だから、同じ高校になったのかもだなぁ」
暁は、驚いたが、それも納得だなと思った。
あのまま、不登校中学生のままロクに勉強をしないままだったなら、今の秋櫻学園高校には入れなかった。
そしたら、赤井凛音にも桃井杏奈にも出会うことはなかっただろうから。
やっぱり、今の自分に出来るベストを尽くそうと改めて思った。
そんな暁とマエル元にアランの使徒のルークが現れた。
ルークは、カラスの姿だったが室内に入ると鷹の姿に戻って言った。
「アラン様からの伝言を承って参りました。来週、川の清掃のボランテイァ活動に参加するので、一緒に参加して欲しいとのことです。ご主人様は、どういたしますか?」
アランからの突然のボランティア活動参加のお誘いに、戸惑う暁だったが、あんなに気になっていた赤井凛音の誘いだと思ったら、迷うことはなかった。
「もちろん、参加するよ」
と、答えた。
すると、ルークは、
「では、詳しくは、こちらをご覧ください」
と言って、一枚の紙をひらりと落とした。
それを、すかさずマエルが咥えて、暁に渡した。
「それでは、当日、トゥルリー様が車でお迎えに参りますので」
そう言い残して、ルークは、再びカラスの姿に戻って飛び去って行った。
「ボラティア活動かぁ、なんでまた?」
と、その紙を見ながらつぶやいた。
「アラン様にはお考えがあるんだと思います」
「アラン様は、帝国では、執務大臣と帝国軍総司令官をされていた方ですから」
「ええ!!そんなに偉い人だったの?」
「はい!公爵様で、前皇帝の息子で、現皇帝の甥だった方です」
「そーなの!!!じゃあ、俺なんか話すのも恐れ多い方だったんじゃ…」
「そうですにゃ」
暁は、改めて赤井凛音であり暮尾亜嵐でもあるアランの偉大さを知り驚愕していた。
「そりゃ~。俺が無意識にでも憧れるはずたよなぁ」
「同じ年齢でも無いどころか身分違いも甚だしい存在なんだもんな」
暁は、衝撃に耐えきれず
「マエル~!!! 」
と、言いながらマエルを抱いたままベッドに倒れ込んだ。
マエルは、よしよし、というように暁の頬を肉球で優しくたたいた。
ボランティア過活動の当日、約束通り廣谷橙吏ことトゥルリーが車で迎えに来た。
その助手席にはアラン、後部座席には桃井杏奈とノエルが乗っていた。
「おはよう、誘いに乗ってくれてありがとう」
と、アランが言った。
「おはようございます」
暁も挨拶をしてマエルと共に車の後部席に乗り込んだ。
「おはよう」
と、ノエルを膝に乗せた杏奈が言った。
「あ、おはよう!桃井さんも参加なんだね」
ちょっと照れながら暁が言った。
「アンナで良いわよ!」
と、杏奈が言うと暁も
「じゃぁ、俺もクリスで!」
と、言った。
膝の上のノエルとマエルも嬉しそうだった。
アラン達一行が、ボランティア会場となっている河川敷に到着した時は、既に地元のボランティア団体と学生数名が集まっていた。
今回のボランティア活動の主催者と思われる男性が、本部テントの前で受付名簿を確認しながら、ゴミを回収するためのゴミ袋や手袋、サンバイザーを渡していた。
ざっと見渡したところ原紫苑先生の姿は見当たらなかったが…
本部テントの奥を見ると、UVカット加工の黒い空調機付きベストを着てフードを頭からすっぽり被りサングラスまでかけた黒づくめの男の姿があった。
しっかりとテントの陰に入っていたその男がアランに向かって軽く手を振った。
原紫苑先生であった。
暑いのは、苦手と言いつつも、アランが来ると言うのに自分だけ涼しい顔で大学に居るわけにはいかないと完全防備で来ていた。
しかし、大谷蒼宙らしき学生もまだ来てないようだった。
会場には、小さな子供を連れた一般の家族連れも参加していた。
アラン、杏奈、暁の三人は、大学の原紫苑准教授の紹介ということで受付を済ませ、ゴミを拾う場所の案内図を渡しされた。
集合場所になっている河川敷を中心に上流と下流に分かれて活動をするらしかった。
アラン達三人は、橋で対岸に渡って下流に向けてゴミを拾うように言われた。
そもそも、アランはボランティアが目的ではなく、大谷蒼宙と接触するのが目的だったので、こののまま目的の男に会えずゴミ拾い開始するべきか悩んだ。
さて、どうしたものかと思っていたアランの脳裏にシオンの声が響いた。
「アラン様、大谷蒼宙が現れました」
シオンからのテレパシーである。
アランは、一目でそれが大谷蒼宙いやオスカー・エンドリケ・ブルー・フォレストだとわかった。
オスカーは、リゲル・ラナ時代、アランが可愛がっていた部下のひとりであった。
地球に飛ばされ、魂と肉体がバラバラになり新たな肉体を身に付けて産まれて来た彼も、飛ばされた時とほぼ同じ年齢に成長していた。
アランは、久しぶりに見る自分の部下を見て胸が熱くなっていた。
一方の杏奈と暁は、夏休みのボランティア活動を夏休み中の楽しい想い出になる活動としか思っていなかった。
アンナとクリスとオスカーは、リゲル・ラナでは面識はあったものの深い知り合いではなかった。
さらに三人ともリゲル・ラナでの記憶はまだ明確ではない。
アランは、シオンに
「オスカーも俺たちと同じエリアに配属するように手配できるか?」
と、思念を送るとすぐにシオンから
「了解しました」
と、返事が返って来た。
アランは、杏奈と暁と共に指示された場所でゴミ拾いを始めた。
リゲル・ラナでは、元皇帝の息子で現皇帝の甥、そして公爵であったアランが川でゴミ拾いをするなど、誰も想像できなかったことだろう。
しかし、三人は、案外ゴミ拾いを楽しんでいた。
「ゴミだと思うと、なんだかなぁと思うけれど、宝さがしだと思ったら楽しいよね?」
と、杏奈が言う。
「リゲル・ラナには、プラスチックなんてものは無かったから、自然をこんな風に破壊する心配は無いんだけどな」
と、アランが言う。
「そうなんだ。リゲル・ラナと地球ってだいぶ違うの?」
と、杏奈がアランに尋ねた。
「そうだな。俺は、ここに65年居るけれど、来たばかりの頃はそんなに違いを感じなかったけれど、ここ最近は大きな違いを感じてる」
アランは、少し寂しそうに言った。
「65年もかぁ。俺の親も生まれる前だよ」
「そりゃ~日本も変わっているもんなぁ」
「アラン君は、リゲル・ラナでは皇帝の甥で、軍の総司令官だったってマエルから聞いたけど、ここでゴミ拾いなんて帝国の人が聞いたら腰抜かさない?」
クリスは、マエルから聞いた情報を思い出して聞いてみた。
「ははは、そうだな。俺の部下たちは腰を抜かすかもしれんな」
「でも、俺の一番の腹心の部下だったヤツが、俺にゴミ拾いをさせて、自分は本部テントの日陰で涼んでるけどな」
と、アランは楽しそうに言った。
「えっ!?そうなの?」
と、杏奈はゴミを拾う手を休めてアランを見た。
アランが皇帝の甥だとか、帝国陸軍総司令官だとかいう情報は初めて耳にしたからである。
やはり、コイツは、ただ者ではなかった。
自分の前星での記憶が戻るのが恐ろしい。
もと、完全に戻ってしまったら、アランに対して行った自分の態度は、知らぬこととはいう打ち首ものだと思えて恐ろしかった。
「いや、ここでは普通の高校生だから、それはそれで楽しいよ」
と、アランは、さらりと言った。
「俺たちHoly Mageと呼ばれる者は、老化が遅く寿命も1000年くらいあるんだよ」
「だから、普通の人よりは変化に強く、焦らずじっくり構えてるように見えるらしいんだ
「自分では無自覚だけれどね」
ちょうど三人は対岸に渡る為の橋のところに差し掛っていた。
それまで、他の人間に見られように葦の陰に隠れながら付いて来ていた自分たちの使徒のノエルとマエルを気にしてアンナが言った。
「橋の上は焼けるように熱くなっているから、あの子たち素足だし肉球大丈夫かしら?」
「そうだよな」
クリスも慌ててマエルを見た。
するとアランが
「大丈夫だ!あいつらは、単なる猫じゃない、使徒だから、それくらいの調節はできる」
と、言っている間にノエルとマエルの二匹は、橋をかけ渡り三人を見守るように川岸の草むらに隠れて待っていた。
そんな、二匹を見ながらアンナがアランに尋ねた。
「私たちもHoly Mageという者だったんですか?」
「君らの使徒が再生されているってことは、君たちがHoly Mageだった証だよ」
ノエルとマエルは、再び他の人間に見つからないように三人から付かず離れずついて来ていた。
「でも、君たちは、まだそのために修行途中だったんだ。俺は、リゲル・ラナ時代は、君たちのことを良く知らないから、君たちの先生だったマリアやトゥルリーに聞くといいよ」
そうアランが言い終えた時に、後ろから彼らを呼ぶ声がした。
「おーい、君たち!!」
三人は、その声に振り返った。
大谷蒼宙だった。
「君たち、ゴミ袋が足りないだろうから原先生がこれをって」
と、追加のゴミ袋を差し出した。
するとアランが
「あいつ、どんだけ俺にゴミ拾いさせる気だ?」
と、笑いながらゴミ袋を受け取った。
大谷蒼宙は、高校生が大学の先生をあいつ呼ばわりするのを聞いてぽかんとしていた。
「君たち原先生の知り合い?」
と、蒼宙が聞いた。
「ああ、知り合いも、知り合い、前世からの」
とアランが答えた。
それを聞いていたアンナが、あれ?この感じデジャブ?と心の中で思った。
さらに「へ!?」と思っている蒼宙に対して、アランがすかさず
「初めまして!原先生の知り合いの赤井凛音です」
と、手を差し出した。
蒼宙も、その勢いに押されてすぐに手を出して握手を交わした。
その手に力が籠ったと思った瞬間、蒼宙の頭の中で声がした。
「オスカー、会いたかった。アランだ!! また、一緒に闘ってくれ」
蒼宙は、その声がどこから聞こえたのか一瞬わからなかった。
しかし、その声が目の前でニコニコしながら握手をしている相手の声だと察した。
蒼宙は、とっさに自分の頭の中で、その声に返事をしてみた。
「オスカーって誰のことですか?アランって君のこと?」
その頭の中の声は
「君は、オスカー・エンドリケ・ブルーフォレスト。俺は、リゲル・ラナのスチュアートリア帝国軍総司令官だったアラン・クレオ・ハイデルべルト・レッドリオンだ。ゆっくりでいい思い出してくれ」
と、答えて来た。
蒼宙は、軽いめまいと頭痛がした。
それでも、何か自分の中の心の中のパズルがハマり出す感じを得ていた。
そして、ハッと現実に戻り
「俺は、帝都大学一年の大谷蒼宙です。よろしく」
言って、アランの手を離した。
クリスもアンナも続いて自己紹介をし、四人でゴミ拾いを始めた。
蒼宙は、河川のゴミとしてコンビニの袋やペットボトル等のプラスチックゴミのこと、マイクロプラスチックという物質の危険性を語った。
三人は、蒼宙の説明を聞きながらゴミを拾いながら下流に歩いて行った。
蒼宙の説明を一通り聞いたところでアランが、
「大谷さんは、なぜこの建築学部の社会基盤学科を学ぶことにしたんですか?」
と、聞いた。
「うーん、なんとなくかなぁ。本当は、おれ爬虫類が好きで両生類の研究でもしようと思ったんだけれど、ここのオーキャンに来た時に原先生の模擬授業を聞いたら、治水工事とか海や河川の環境について勉強したいなと思ったんだよね」
と蒼宙は、答えた。
そして、ポケットから家から連れて来たイモリを出して言った。
「コイツが今のおれのペット。家族からはキモ悪がられてるけど、なんか可愛くてさ」
アンナは、爬虫類は苦手なはずで、思わず悲鳴を上げたくなった。
だが、なぜか今回は大丈夫だった。
アランは、周囲に誰も居ないのを確かめてから、マエルとノエルを呼んだ。
「マエル、ノエル。友達じゃないか?」
すると河岸の葦の陰からノエルとマエルが飛び出して来て蒼宙のイモリに飛びついた。
アンナとクリス、そして蒼宙は、イモリが食べられる!!!と焦った。
イモリは蒼宙の掌の上で、二本足で立ちあがっていた。
そして、そのままピョンと飛んでノエルとマエルの前に立った。
いつの間にか、二匹と同じくらいの大きさになっていて、挨拶をした。
「はじめまして。あちらでお会いしたことはなかったですよね?こちらではよろしくです」
「はにゃ~、ずいぶん可愛らしい姿になりましたにゃ」
「翼はこちらでは無いのかにゃ?」
すると、イモリは翼を広げて見せて
「こちらではドラゴンは存在しないらしくて、これが精一杯のようです。」
と、羽根つきの爬虫類の姿を見せた。
アラン以外の三人は、目が点になっていたが、特に蒼宙は腰を抜かしていた。
するとアランが、
「ごめんごめん、驚かせちゃったかな?」
「君も含めて俺たちは、リゲル・ラナという星から地球に転生して来たんだよ」
「俺は、転移してんだけどね」
「君は、このふたりと違って、リゲル・ラナでHoly Mageとして生きていたから、ふたりより記憶の再生が早いかと思ったんだが、俺と違って若かったから、肉体と魂が離れてしまったんだと思う」
蒼宙は、しばらくポカンとしていた。
それから、まるで画面が真っ暗になったコンピュータが再起動したかのように、少しずつ記憶を呼び戻し繋ぎ合わせて行った。
「ああ、そうか!だからか!!」
「前世で中世の時代に生きていた記憶のような夢をよく見ると思っていたが、あの違和感は地球じゃない星の夢だったんだ!」
「じゃあ、あれは君たちの言うリゲル・ラナという星の記憶なのか?」
蒼宙の疑問符を含んだ言葉にアランは、満足そうに答えた。
「そうだよ。オスカー・エンドリケ・ブルーフォレスト」
「こちらは、アンナとクリストファー。彼らもリゲル・ラナから地球に転生して、まだ記憶の再生途中なんだ」
「はじめまして、地球名は栗栖 暁です」
「はじめまして、私は桃井杏奈です」
と、クリスとアンナも蒼宙に挨拶した。
続いてノエルとマエルも
「ボクは、クリストファー様の使徒のマエルです」
「ボクは、アンナ様の使徒のノエルです」
と、それぞれぺこりと挨拶をした。
すると、蒼宙のイモリ?いや翼のあるトカゲが言った。
「私はオスカー様の使徒で、リゲル・ラナではクレイブという名前でした」
蒼宙は、そうだった!!というように「あ、あ!!」と、言った。
「クレイブ!クレイブだ!!で、父親の竜の名前はクロヴィス!!」
「そうです!そうです!ご主人様!!」
そう言って、クレイブは元の小さなトカゲの姿に戻って蒼宙の肩の上に飛び乗った。
「やはり、オスカーは、一人前のHoly Mageだったから記憶の再生も早そうだな」
と、アランが言うと蒼宙も嬉しそうに
「なんだか、今までモヤモヤしていた気持ちがスッキリして来ました」
と、言った。
四人がある程度ゴミ拾いを終えて上流に戻ろうと歩き出すと、蒼宙が言った。
「上流で雨が降り出したかもしれません」
アランは、思い出していた。
ブルーフォレス辺境伯家は、気象の変化に敏感で、天気の予測能力に長けている一族だったことを。
そうしているうちに、にわかに川の水かさが増えだしたように思えた。
すると、アランの脳の中でシオンの声が聞こえて来た。
「アラン様。上流で大雨が降っている様で、こちらも危険と言うことで本部は撤収します。お早めにお戻りください。」
「わかった」
アランは、三人に急いで戻ろうと促し、足早に上流に向かっていると、再びシオンからの声がした。
「子供が流されました。下流に向かって流されています。そちらまで流れていくかもしれません」
アランは、三人に
「上流で子どもが流されたそうだ、こちらまで来るかもしれない」
そう言って川の上流に目を凝らしていると
「見えた!!川の中ほどを流されている。男の子だ」
と、アランが言い終える間もなく、三人も見える範囲に男の子が流されて来るのが見えた。
すると、蒼宙とクリスは、上着を脱ぎ棄てると川に飛び、あっという間に川の中ほどにたどり着いた。
が、川の流れは速くふたりともに流されながら、蒼宙が男の子の頭を、クリスが腕を掴みなんとかキャッチした。
そのまま男の子の頭を上にして、顔が水面から出るようにして川岸に運んだ。
男の子は、体が冷え切っており、呼吸も止まりかけていた。
川岸でアランとアンナが男の子を受け取ると、すぐにアランが言った。
「アンナ、この子の胸に手を当てて念じてみろ!」
「えっ?」
「俺も一緒にやってやるから、呼吸が回復するイメージで念じてみるんだ」
そう言って、アンナの手をとり自分の手を重ねて男の子の胸のあたりにあてた。
「そうだ、そのまま自分の力を信じて、念じつづけろ」
初めは、アランのオーブの赤い光が、ふたりの手の下の男の子の胸で光っていた。
アランがそっと手を離すと、アンナの掌の下でピンク色の光が優しく光り男の子の体全体を包んでいった。
男の子の口から、水が流れ出ると胸が大きく膨らんだ。
そこをアランが軽く押すと、さらに口から水が吐き出されて、男の子がせき込みながら意識を取り戻した。
「ああ、良かったー!!」
アンナが男の子を抱きしめた。
アランは、自分のシャツを脱いで男の子を包み、川から上がって来たふたりを労った。
「よくやった!君たちじゃなければ、一緒に流されていただろう」
クリスと蒼宙は、顔を見合わせてがっしりと手を握り合い
「よかったな」
と、笑い合った。
が、喜びあっている間もなく蒼宙が言った。
「まもなく、ここも大雨になる。早く戻ろう」
アランが男の子を抱いて、皆で本部テントがあったところに戻った。
途中、雨に降られたが、アランが結界を張って走っていたので、全員ほとんど濡れていなかった。
本部に戻ると、男の子の救出のために呼ばれたレスキュー隊や救急車が待機していた。
そこで、オロオロしていた男の子の両親が、男の子の無事な姿を見て駈け寄って来た。
撤収しようとしていた本部テントは、男の子救出のレスキュー隊の本部となっていた。
その奥で、すっかり身軽な姿になった原先生がニヤニヤしていたのは言うまでもない。
「アラン様のことですから」
と、総司令官への絶大なる信頼感を持って待っていた帝国軍参謀長官のシオン・ミッシェル・ヴァイオレットフィールド侯爵だった。
「私、閣下の参謀なので」
第1章 プロローグ = 再会 =
終わり。
第二章は、リゲル・ラナ編の進みに応じて連載再開予定です。




