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片般若 13

 事件解決から2週間が経った。

 その日、夜の巡回をしていた極導(きわみち)(はな)()は、休憩のために〈きょらく〉に立ち寄った。

〈きょらく〉は、あの世とこの世の(はざ)()にある居酒屋。

 店というよりは厨房をかまえた倉庫のようなつくりだが、この秘密基地のようなワクワク感と隠れ家的な居心地のよさが気にいり、極導は(ひい)()にしているのだ。

 歩きまわった疲れを甘酒で癒していると、

「ねえ、ミッチー」

「なんだ?」

「ミキさん――ううん、ミキは、どうしてあの一家を殺害しようと思ったのかな」

 花子は極導の目をのぞきこむようにして、たずねた。

「そりゃ、やっぱ恨みだろ。下手人げしゅにんみずからが、そう言ってたじゃねえか」

「うん。でもハラスメントがいやなら、辞めるって道もあったはずだよ」

 実際、タクトのセクハラに耐えかねて辞めたメイドもいるのだ。

「わたしね、あの人の恨みは、ほかのメイドさんとはちがう気がするの」

 そこで花子は言葉を切った。

「きっと、あの人は、わたしたちが想像できないぐらい深くて黒い恨みを日比谷家に持っていた。その恨みが、あの人を殺人鬼に変えたんじゃないかな」

「ギャルの勘か?」

「うん」

 だがギャルの勘がいかに鋭くても、真実まで明らかにすることはできない。

 ミキと響介きょうすけの関係を――そして40年前、ながざんで起きた惨劇さんげきを知る者は、だれひとり、この世にいないのだ。


 そのとき店の戸が開き、美豆良(みずら)ヘアーの客が入ってきた。

「お、やっぱり来てたか」

 言うまでもなく、客の正体は蝦蟇(がま)(しち)。カエルサンダルをゲコゲコ鳴らしながら、ふたりの席までやってきた。

豆蔵まめぞうのじいさんから、おまえらもここの常連だって聞いてな。たまたま近くを通りかかったから寄ってみたんだ」

「おまえら()ってことは、蝦蟇七さんも常連なんですか?」

「いや、常連は電震(でんしん)のジジイだよ。おれも何度か来たことはあるが、贔屓にしてるのは、もっぱらこっちだ」

 そう言って、蝦蟇七はふたりに自分のスマホを見せた。

 スマホの画面に映っていたのは、鏡もちのような立派な体型のメイド。体重はゆうに100キロを超えているだろう。

「ところで、若いの。黒峰(くろみね)は元気にしてるか?」

「はい。傷も完治して、いまはべつの事件の報告書をつくっているそうです」

 ナイフで左胸を刺された黒峰だが、蝦蟇七の迅速じんそく手当てあてのおかげで一命を取り留めることができたのだ。

 そのとき、

「はーい、本日のサービスのたけのこ(めし)でーす」

 〈きょらく〉の看板娘・こつめが茶碗によそった3人分のたけのこ(めし)を運んできてくれた。

「うわぁ、おいしそう」

 具だくさんのたけのこ(めし)に、花子が歓喜の声をあげる。

「おとっつぁんが最近たけのこ(めし)にハマっちゃってね。炊き過ぎたのを、こうしてお客さんに無償で提供してるの」

「さすが、こつめさん。たけのこめし、ごっちゃんで~す」

 花子ががたなを切るマネをした。

「たけのこ(めし)はたくさんあるから、おにぎりにしたり、出汁(だし)茶漬けにもできますよ。カエルのおじさんも、どんどんおかわりしてくださいね」

「おう。ちょうど腹が減ってたところだ。遠慮なくいただくぜ」

 蝦蟇七ははしを取ると、湯気の立つたけのこ(めし)を、いきおいよく口のなかへ掻きこむのだった。


(片般若・完)


読者のみなさまへ

『片般若』のエピソードは今回でおしまいです。約2週間の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。


今後もゴクハナの短編・新作エピソードは投稿していく予定です。

次回、投稿するお話ですが……烏天狗の黒峰を主役にした短編を投稿したいと思います。投稿日は未定ですが、決まり次第、活動報告【おはぎ日和】で報告するので、興味のある方は、そちらもチェックしていただければと思います。(投稿日や話の内容は予告なく変更する場合があります。ご了承ください)


本日2月8日をもちまして、50年つづいたスーパー戦隊シリーズが一旦終了となりました。

『秘密戦隊ゴレンジャー』から『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』まで、たくさんのヒーロー・怪人・巨大ロボを産みだしてくれたスーパー戦隊シリーズ。パワーレンジャーとしてもアメリカで大ヒットした偉大なシリーズに、この場を借りて敬意と感謝の言葉を申しあげさせていただきます。


50年間、夢と勇気と感動をありがとう。そしてお疲れさまでした。いつかまた会う日のために、いまは戦いで疲れた身体をゆっくりと休めてください。


キバレンジャーの白虎真剣が欲しくて、親に泣きつきながら夏祭りの景品くじを引きまくった思い出……なつかしいなぁ。



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