夜の町の花子さん (第一部 最終回)
7月のある夜――。
極導と花子は追株総合体育館付近の巡回をしていた。
「でもよかったね。手組団子が採用されて」
「ああ。けど正直いうと、ダメだと思ってたんだ」
「緊張してプレゼンで噛みまくったから?」
「まあな」
極導が考案した手組団子だが、これは串を使わず、材料の柔らかさと粘り気を利用して、手をつなぐようにふたつの団子をくっつけたものである。
味のバリエーションは32種類と豊富で、チョコミントやいちごミルクなど、ネオ和菓子を意識したものも多い。
また事前に注文しておけば、ココアとキャラメルナッツといった好きな味の団子をくっつけることも可能だ。
「大切な人とシェアすることもできるし、付属のみたらしダレで味変もできるし、いろんな楽しみ方ができるいいお菓子だと思うよ」
「手組がいないと思いつかないアイデアだったんだ。おまえには礼を言うよ」
「ありがと。ねえ、ミッチー」
「ん? 疲れたか?」
「そうじゃないよ。その……昔、ミッチーがみたらし団子を押しつけた人だけどね」
「東浄先生かもしれない人のことか?」
「うん。その人――」
その人、じつはわたしなの。
そう言おうとした。
けど、花子は言葉をのどの奥で飲みこんだ。
「その人、ミッチーに、すっごく感謝してると思うよ」
「なんでそんなことわかるんだよ?」
「だって、わたしギャルだもん☆」
「はぁ?」
「ミッチーだってギャルの勘のすごさ、知ってるでしょ?」
「あー、はいはい。たしかにすごいな、あれは」
感心と呆れを混ぜあわせたような口調で極導が言った。
そう。世のなかには時としてハッキリさせないほうがいいこともある。
相手につたえず、心のなかに閉まっておくことで保たれる特別な輝きだってあるのだ。
「あ、ミッチー、そろそろ交代の時間だよ」
「よし、ルートはぜんぶ廻ったし、怪しいやつもいなかった。吉田さんのところに報告に行くぞ」
「うん」
「屋敷にもどったら、録画してた幕下の取組を観るか」
「うん。きょうの取組は花丸の勝ち越しをかけた大事な一番だもんね」
「ああ。おれとおまえの推しだからな。絶対に勝ってもらわないと」
夜の町を若い魔廻りとその手組が肩を並べて歩いてゆく。
そのすがたは、人と怪異が手を取り、共に歩んでゆく未来をあらわしているようだった。
(第一部 完)
読者の皆さまへ
約1ヶ月の連載にお付き合いしていただき、誠にありがとうございました。極導と花子の活躍、いかがだったでしょうか?
現代の時代劇をコンセプトにした本作ですが、思いのほか反響があり、現在、続編となる短編の執筆にとりかかっています。
今後は別の作品を投稿しつつ、その合間にゴクハナの短編を投稿するスタイルをとっていきたいと考えています。
11月25日に、続編のエピソードを投稿します。




