25話:ムカついたらダメだって分かってるけど・・
「あれ。おっかしーな神元ぉ。ここに奴らがいるんだろ?」
ぼけーっとしながら、河原の芝生の所に寝転がっていたら、人の声が聞こえてきた。
「“神元ぉ”って何だよその小っちゃい『ぉ』は。ただでさえいイラついてんだからやめてくれ」
二人の男が会話しているようだった。……いや、『神元ぉ』って方は女の人の声に聞こえなくもない。
「はぁ~~?別によくねぇ?『ぉ』くらい」
「……よくねーよ。お前にそれ言われるとバカにされた感があって嫌だ」
俺は目を閉じて二人の会話を聞いていた。
「何だよそれ。失礼だ。失礼極まりないっ!!」
「あー分かったって黒崎。んで、あいつ……山崎いないじゃん」
……山崎?
無意識に、俺の体がピク、と動く。
俺は息を殺し、二人の声に耳を澄ませた。
「だな。今日こそはあの、野田とかいう奴も一緒にやってやろうと思ったのによぉ」
「面倒くさいなお前も。……とっととケリ付けたいのに何でこういう時に限っていないんだよあいつら……」
一人が、困ったようにため息をついた。
「まぁしょーがねーんじゃん?あいつらもだいぶ俺達の威力分かってきたみたいだし」
もう一人が、自慢げにこういうのが聞こえてくる。
「……おれは威力も何にも持ってないけどな」
「まぁいっか、今度で。……また出直すのも面倒くさいけど」
二人の男が、帰ろうとしたところ。
「……!?」
一人が、俺につまづいた。
『いってぇ……』
一人の男と、声が重なる。
「ったく、何やってんだよ神元……って、何そいつ?」
踏まれて起きあがった俺は、髪の毛が茶色っぽくて、耳に穴が空いている奴と目があった。
神元、と呼ばれた方の奴が、
「……知るかよ。……あいつらの仲間なんじゃねーの?」
と、興味のなさそうな調子で言った。
「……マジで?」
耳に穴の空いている奴が、俺の顔をじっと見つめる。
「……」
俺たちは、しばし睨みあった。でもやがて奴の方から目をそらし、
「あのさ、お前山崎とかどこにいるか知ってる?」
と、軽い調子でいきなりこんなことを尋ねてきた。
「……しらねーよ」
即答。
「ふーん。……お前の名前は?」
「……教えるかよ」
「あっそ。まぁいっかキョーミないから」
何て嫌味な奴なんだ。……あぁイライラする。
「ちぇー。神元、こいつも分かんねーってよ」
「……当たり前だろ」
……見たところ、神元って奴は冷静そうだ。耳に穴が空いている奴は、軽そうで、短気そう。
「……山崎に用があんのか?」
俺は、耳に穴が空いている奴に、こう聞いてみる。
「ああ。俺は主に、もう一人の『野田くん』って奴に用があるんだけどな」
「……へぇ」
一体何の用なんだろう。でも、山崎も野田も結構暴れていることは知っていたから、俺はそれ以上聞き出そうとはしなかった。
そう、その直後だった。