22話:オーラ輝く美少女さま
「ねぇ、ヤス?」
それは放課後に起こった。
「ヤス?」
さっきから、野田の耳元で、女の子がこう言っているのだ。
そして野田は、それをずっと無視し続けている。
「……?」
何だろう、この女の子。
俺はちらり、と野田のことを呼んでいる女の子を見た。
「ッ!」
……見てからすぐ、目をそらすことに決めた。
野田を呼んでいる女の子は……すっごく、すごく、野田に不似合いなほどに、可愛かったのだ。
「ヤスったら!聞こえてるんなら返事くらいしなさいよっ!」
野田を呼んでいる女の子が、むっとした表情になる。
「んぁ……何だようっせぇな……」
野田がやっと、女の子に反応した。野田は、女の子に向かい、ひらりと手を振ると、
「あ……何だ、カヨか……」
女の子……カヨ、さんとかいう人の方を気まずそうに見た。
そして、
「……んで、どうしたんだ?カヨ」
女の子にこう聞いた。
女の子は野田を思いっきり睨みつけると、
「ヤスのバカっ!!」
――いきなりこう言い放ったのであった。
「……はぁ?」
野田が、明らかに混乱している。俺もだけど。……いや、俺は、目の前にいる美少女の存在に混乱し
てるんだけどさ。
「何だよいきなり?」
「言葉のまんまよっ!他校の生徒に喧嘩売るなんて、マジありえない!ほんっと、バッカじゃない
の!?」
女の子――影ながら『カヨ』と呼ばせてもらうことにしよう――は、弾丸のごとく、こんな言葉を野田に浴びせた。……ホントにいきなり。
「……」
口が半開きになっていた。
カヨは、別に比喩とかじゃなくて……なんか、オーラが輝いていた。常にバックには花があるような
感じだ。
「何でお前がそんなこと知ってんだよ!?」
……お前、だって。野田とカヨは仲いいのかな。
「……よく聞いてくれたわね。それはね……」
カヨが、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「女子の間で、噂になってんのよ」