21話:うぅ……
次の日。
野田は、舌打ちしながら教室に入ってきた。
「ッあーもう……」
かなりイラついているようだ。どうしたんだろうか。
「もう川なんて嫌いだ……」
野田がドカッ、と自分の席に腰を下ろすのをボーっと眺める。
「どうしたんだよ野田……?」
俺がそう聞こうとして野田に近付こうとした時、野田が不機嫌な理由がやっと分かった。
「うっ……」
野田は……野田は……
生臭かった。
本当にクソ生臭かった。思わず鼻つまんじゃいそうなほど生臭かった。
「最悪……昨日あいつに川に突き落とされたせいでさ、何か臭い抜けなくなった。
……あそこ、遊泳禁止なんだよな」
「へぇ……そりゃお気の毒に」
う―ん……でも、この臭いのきつさは、さすがに可哀想だ。
「ちゃんと洗ったか?」
とりあえず、こう聞くと、
「洗ってもこれだからあいつにムカついてんの」
ぶっきらぼうに答えが返ってきた。
「はぁ……」
昨日の出来事を思い出し、苦笑いする。
今日、学校で山崎は大丈夫なのだろうか? 酒臭くなってそうな気もするが、川の臭いの方が強いの
か?
うーん、でも、何にしろ二日酔いしてそうだな……。
とりあえず影ながら彼の無事を祈っておこう。