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18話:……怖い
手近な奴から、無我夢中になって殴ってやる。
それはそれほどきれいなものではなくて。
かといって乱闘とかそういうんでもなくて。
なんつーか……敵討ちっつーのもきれいすぎかもしれないけど……あぁ、もう俺何言ってんのかわかんねぇ。
「くそっ……!」
何言ってんのかわかんねぇけど、最近出会った奴のために、今、俺は殴りかかって行っていた。
「おっと? 赤井ってなかなか強い感じか?」
横で野田が、クス、っと笑っている。……喧嘩しているのに余裕の表情だ。
「……さぁな」
自分が強いのかなんてわからない。今は知りたくもない。
――なぜって?
そりゃ、どこまでも行きたいからだ。行けるところまでいって、限界を超えてやりたいんだ。
平和が好きな俺にしては珍しい発言かもしれない。
――自分で初めて、そう思った。
でも、やっぱり喧嘩は嫌だ。痛いのやだし。
んでも、一方で、ちょっとそんな状況を楽しんでる自分もいた。
何だか、こっちに越してきてから、自分を、つかむことができない。
……そんな自分が、自分じゃないようで、ちょっぴり怖かった。
ほんのちょっぴりだ。