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16話:心拍数と自分の足の矛盾
どくん、どくん……。
さっきから俺の心臓はうるさいくらいに音を立てていた。まぁ怒鳴りつけてもしょうがないので、必死に心を落ち着かせる。
――だってどうにもこうにも慣れないのだ、喧嘩っつーのは。
喧嘩なんてしないし。それにそういうのって面倒臭そうだし。
確かに、確かにさ、そういう状況にあこがれたこともあるさ。
……でも、今は、そんな憧れとは程遠かった。
「はぁ……」
大きな大きなため息をつく。憂鬱だ……。
「赤井何ため息なんかついてるんだよ?」
隣から、野田ののんきそうな声。
「……いや、いいよなお前は単純そうで……」
ぼくは、なんてことない野田の顔を見て、ため息をついた。
「は?俺が、単純?」
野田が、俺のことを見つめる。というか、睨みつける。
「まぁ俺は優しいからすぐには手出ししないけど」
彼はそう言いながらも、こぶしを思いっきり握りしめていた。
……怖ぇ。
「まぁそれに……山崎を助けなきゃだし」
野田がこぶしを引っ込める。
俺と野田は、奴らがいる場所へと急いだ。