12話:マジかよ……
「えーと、とりあえず紹介しとくけど、ここは俺とダチさん方の隠れ家」
俺が野田につれてこられたのは、体育館の裏だった。意外と日当たりが良く、明るい場所だ。
「ふーん……何でこんなとこに連れてきたんだ?」
「え? 龍野のこと教えてやろ―と思って……まぁ暇つぶしっつーのは秘密なんだが」
「あ、なるほど。いい暇つぶしになるかもな」
……納得。
「でもわざわざこんなとこまで来てあいつのこと話す必要……」
そう言いかけて、口を閉じる。
野田がなぜか、ふっ、とほほ笑んでいた。
「……何だよ気持ちわりぃな」
「……失礼だな君は。えーっと、龍野のことだっけ?」
「ああ」
変な奴………。
まぁいいや。俺はさっきの野田の微笑みを頭から振り払い、話を切り出すことにした。
「えと、その龍野って奴から、殺気を感じるのだが」
「え? ああ、あいつはそういう奴だ」
…………どんな奴だよ。
非常に気になったが、俺はできるだけ平静を保ちつつまた話を切り出す。
「じゃあさ……何で龍野ってあんなに怖がられてるんだ?」
「……んー、昔いろいろあったからじゃねーの?」
野田の目が体育館の方を追っていた。体育館の中で、元気に遊んでいる人がいっぱいいた。……その
中になぜか校長が混ざってバスケットボールをしていた。元気だなぁ。
「……そっか。でもさ、あいつってそんな悪い奴じゃないよな?」
「……ホントにそう思うか?」
「ホントに、ってどういう意味だよ」
俺は首をかしげた。
「んー……昔、色々あったからなぁ。ってか、あいつお前と初対面だったから優しそうに見えたかもし
れないけど、実際のとこらマジで危ない奴だから! それだけは保障するっ!!」
野田がなぜか必死な表情をしてこう言う。
「……へぇ。それで、そいつは昔何があったん――
キーンコーンカーンコーン。
もう、何て悪いタイミングなんだよ。最悪。
「うげ。まぁまたあとで話せばいいよな? 赤井」
野田がちょっと顔をしかめてから、俺にこう聞いてくる。
「……ああ。あと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど……」
「ん? 何だ? 俺でよければ何でも聞くぞ」
「あの……すっごい聞きづらいことなんだけど……」
思わず口ごもってしまう。……うぅ、野田が真剣そうな顔してるから余計に話しづらいじゃねー
か……。
「龍野って……不良の部類に入りますか??」
うん、よく言ったぞ、俺。まぁ質問の内容が低レベルかつ意味の分からない、って言うのは気にしな
いこととするか。
……それにしても俺、一体何を聞いてるんだ?
野田は、
「は? ……はいんねぇよあんな奴。てか常識的に入るわけねーからな」
いつになく冷たい口調でこう言い放つのであった。
「……はぁ」
てか何だよこの威圧感。ちょっと怖い。
「じゃ、俺は先に行ってるから!」
野田は少し急ぎ気味に教室の方へ帰って行ってしまった。
「……?」
俺もそろそろ帰るかなぁ。
……と、いう訳で俺はゆっくり教室に向かい歩き始めた。