9話:特別な日って……?
「…は?」
朝8時。教室にて。俺は思わず野田を睨みつけてしまった。
「…おいそんな怖い目で見るな赤井」
野田が震えあがるまねをする。
俺が野田のことを睨みつけているのには、理由があった。
それは。
「怖い目で見てないから。…ってか、普通はありえないよな。全校生徒の半分が欠席って」
…嘘だぁ。昨日はほとんどの奴が来てたぞ。
「いやいやそれがあり得るんだよ赤井君」
野田が首を横に振りながらこう言う。
「ふーん…でも、昨日は半分以上来てたじゃん」
俺は、一人で勝手にうなずきながらこう言った。だって、本当に昨日はいっぱい来てたもん。
「っあー、昨日は特別」
野田が頭をぽりぽり掻きながら額に指を当ててこう言う。
「特別?」
昨日は普通の日に見えたんだけどなぁ。何が特別なんだろう。
「つまり、簡単に説明するとこういうことになるな」
野田が何やら黒板に書き始める。
……?
俺はその様子をぼーっと眺めていた。
「図で説明するとこうなるな。うん」
野田が意味の分からない絵を書いて、自慢げにこう言った。
「…何、これ?」
野田に向かい、小さな声でこう聞く。
「…え、まさか赤井、分からないのか?この絵が何なのか」
「…あー、分からないから教えてくれ、頼む」
俺の言葉を聞き、野田が得意げににやりと笑った気がした。
「りょーかい。…えーっと、この絵はな、特別な日、の図」
……………………………・・。
「何だそれ?…その意味分かんないのが、特別な日、の図???」
なんか頭がこんがらがってきた。どーしよ。
「なっ!!俺の素晴らしい芸術的な作品をけなすなんてっ…!いい度胸してやがるな。赤井お前には芸術的な作品の素晴らしさが分からないのか!例えば某有名画家の描いた絵とか彫刻とかその他もろもろ!…君は、君はっ!それをいとも簡単にけなしてしまうんだね!もういいよ。勝手にするがいいさ。俺は何も止めない。くそぉっ…!!青春のバカやろ―――――っ!!!!」
野田が校庭に向かい思いっきり叫んでいた。朝練をしていた連中が校舎を見上げている。
「ちょ、何やってんだよ野田!恥ずかしぃ…っ」
「は、お前が俺の作品をけなすからだろーが!」
「けなしてねーよ!お前が青春のバカヤローだとか叫ぶのが原因だろ!」
俺はこう言い放った。
その途端、野田の動きがぴた、っと止まる。
「はっ、俺は今いったい何を……」
野田がうぅ、と頭を抱えた。
「まぁ一人劇はいいから、とっととこの絵が何なのか教えてくれ。うんとっても素晴らしい絵だか
ら。…だから著作者の言葉を聞きたいんだ」
「あーはいはい。えーっと…この絵は…この絵はなぁ…」
野田が頭を掻きながら、うー、とうなった。そして、何を思いついたのか、満面の笑みで俺に、
「これは、特別な日の図だって言ったじゃん」
と言った。
野田はそのまま、こう続ける。
「そう。これは『絵』じゃなくて、『図』なんだ」
「あーはいはい。…んで、その『図』のどこが特別なんだ?」
「それはなぁ…ここだ」
野田が、『図』の一点をびしっ、と指さしながら自慢げにこう言った。
――そこに、黄色いチョークでこう書かれていた。
『昨日はなぜみんなが学校に来たのか?』
――と。
…なんかいい加減イライラしてきた。
「あのなぁ…今俺はそれについて聞いてるんだよっ!さっきっから何も話進んでねぇじゃねぇか!もう
っ!」
半ばヒステリックに叫ぶ俺。
「まぁまぁまぁ落ちつけ赤井。昨日がなぜ特別な日だったか?…because…ah…そう、君が転校してきたからです」
ふむ……って待てよ?