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【闇堕ち直前】主人公の色なし観察日誌1  作者: 荒屋朔市
高嶺の華邸

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47/50

今、どんな顔していた?(15-4)

鏡の中に君はいない。

水面に映る影、ガラス細工に歪む光を見る度……。



 拮抗した勢力がぶつかり合えば損害は甚大。長命種族が数を減らせば、虐げられてきた異種族の反乱を誘発させる。そんなところだ。


 僕を観察していた彼女は、満足げにカップを傾けた。


「建国神話を覚えているかしら? 街で公開されているのは簡略化されたもの。真実の一部にすぎないわ」


 給仕に小箱を持って来させると、彼女は手袋を嵌めた手で古びた紙を取り出した。

 変色した紙面に、古い文字が並んでいる。


「終わらぬ冬に祈りを捧げし者、ロエル。風を伴い応える声は、木々を揺らし、大地を引き裂く。その時、天上にも届く異界への入り口が開かれた」


 僕の知らない一節だ。しかも、街外れの読書会跡地で聞いた名が記されている。これは偶然か?


「まさか、名もなき神が実在すると?」


 寝物語が史実を元にしていたとは信じ難い。きっと、これから語られるのは、限られた同族にのみ許される極秘情報なのだろう。


 僕はカップに残るキノコ茶を見つめる。


 知ることは楽しいはずなのに、この先を聞くのが怖い。覚悟が足りていないと痛感した。

 だけど、彼女が理由もなく秘密を明かすはずもない。気づかないうちに深みへ踏み込み、後戻りできない場所まで来ていたのだ。何の取柄もない僕が。

 そう考えれば、一周回って作り話を疑いたくなる。


「話の続きを辞退することは可能でしょうか?」


 彼女は最後の一口を飲み干すと、静かに答えた。


「その場合、片割れちゃんには、お家に帰ってもらうわ」


 喉を締め付けられるような息苦しさが襲い、唇を噛む。家に戻る選択肢など端からない。でも、誰の力も借りず、僕一人で生きて行くことは不可能だ。僕に選択権はない。


「今のは意地悪だったわね。どうしても続きを聞いてほしくて」


 視線をやると、エシュは椅子に背を預けて寛いでいる。


「帰りたくないなら、ここに残る選択肢もある。その場合、里親か保証人の手続きが必要だけれど。一日二食に、お茶とお菓子、昼寝付き。どうかしら?」


 真顔で告げられ、むず痒さを感じた。社交辞令と分かっているのに、夢のような空想が頭をよぎる。


「魅力的ですが、……日を改めて続きを伺うというのは?」

「焦らず、ゆっくり考えて」


 そう囁く彼女は、不思議な爽やかさが香るカップを揺らした。

 


 

「重要機密ではあるけれど、現実離れしているからこそ話せるの。知らないままでいる方が危険だわ」


 彼女は語り始める。


「建国以来、『神降ろし』の儀式は一族が担ってきた。大地を蘇らせるために、それを利用しようと考えたのが、今の革新派。彼らは保守派が取り仕切る儀式に介入して、主導権を奪おうとしたの」


 僕には無関係そうだ。緊張が緩み、無意識にエシュを見やった。この一瞬遅れで返される視線は、時折、歪んだ鏡を覗くような感覚を呼び起こす。今が、まさにだった。


 彼女は慈愛とも憐憫ともつかない眼差しをエシュに向ける。


「そして、目覚めたのが彼。不完全な召喚が生んだ神の『依代』。『人の姿を模した厄災』と、呼ぶ人もいるわ」

 

 

 

振り返らずには、いられなくなる。



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正直、この情報量をどう感じますか?

1. 情報処理が追いつかない。

2. 情報量より文章量を増やせ。

3. ちょうどいい。

4. 限界スレスレ感がクセになる。

5. 足りない。溺れるくらい寄越せ。


※無回答は、処理落ちから復帰できていない方ですね。お大事に。明日も、いらっしゃってください。

お薬は出せません。

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