キノコ茶の香りを探して突撃!? 高嶺の華邸(15-1)
この先、「やめろ。こっちを見るな」案件に注意。
通路に入ると空気が変わった。土埃と苔の臭いは薄れ、微かに甘い香りが漂う。石畳は磨かれ、壁には発光菌ランプが等間隔に並ぶ。迷宮の荒れ具合とは段違いだ。
やがて、出口の外から柔らかな光が差し込み、その脇に人影が立っていた。外套のフードを深く被り、足を止める。黒い給仕服に白い手袋の人物が、落ち着いた声で言った。
「お待ちしておりました。読書会の方ですね」
廊下には額縁付きの絵画と、ランプの光を受けて淡く輝くガラス細工が並んでいる。
不躾を承知で振り返り、エシュと視線を交わした。返事は望んでいない。確認したかっただけだ。
給仕は一礼し、奥の扉へ進む。
扉が静かに開くと、温かな光と香ばしいキノコ茶の香りが流れ込んできた。
広間の中央には長机と椅子、奥の肘掛け椅子に女性が座っている。白銀の髪を左肩に流し、熟れた木の実のような紅い目が淡白色の肌に映える。
年齢は不明。二十代にも見えるが、長命種族なら、その十倍もあり得る。突然の訪問にも動じない姿は、知性と度量を感じさせる。
彼女の笑みには、旧友に向けるような温かみがあった。
「ようこそ。さあ、座って。外套のフードは遠慮してね。片割れちゃんの顔が見えないのは嫌だわ」
陽気な声に、場の空気が柔らかくなる。
片割れちゃん。その一言で、彼女が僕を覚えていてくれたことが分かった。
それでも、フードを取る際には緊張で唇を噛んだが、忌避の目や奇声で報いられることはなかった。
「ちょっと痩せた?」
「……そう、見えますか?」
肌が青白く変化しても、僕は僕のままだと行動で示してくれた。心身の不調を正確に見抜く彼女だから、安堵と動揺が同時に押し寄せて処理が追いつかない。
彼女は微笑を湛えたまま給仕に合図を送った。湯気を立てるキノコ茶が、僕と彼女の前に置かれる。
「まずは、お茶を。難しい話は後にしましょう」
その言葉に、僕は身を捩ってエシュを見る。察したのか、何も言わず近づいてきた。隣の椅子を引く。
食に関しては不明だが、新しいもの好きなところがある。お茶と茶菓子で釣れば、腰を落ち着けてくれるはずだ。食器の扱いは、これから覚えてもらう。
エシュが座るのを待ち、彼女が合図を送る。追加のキノコ茶が、エシュの前に置かれた。
僕はカップから立ち上る湯気を黙って見つめた。
年長者を立てるのは最低限の礼儀。まずは彼女の作法を観察する。
彼女が優雅に口をつけたのを見てから、お先にどうぞ合戦をせずに済んだ喜びを噛み締め、一口含む。懐かしい香りが口いっぱいに広がった。
隣のカップに、給仕が新しい一杯を注いでいた。湯気が立つ注ぎたてを一息に飲み干すエシュ。困惑した給仕はポットの温度を疑い始めた。
お構いなしに茶菓子をつまみ、匂いを嗅ぐ大男。改めて見ると、装いから行いまでの全てが場違いだ。
頭を悩ませる僕の視線に、エシュが気づいた。
目を逸らさないで。
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今更だけど、エシュの正体は?
1. サトリ。
2. 究極進化したコダマ。
3. 炎の精霊イフリート or 不死鳥。
4. 鵺。
5. マシュマロマン。
※当てても景品は出ません。




