失敗を恐れぬ挑戦士は見る者に希望を与え、そして伝説へ(13-3)
禍根を残したくないので、不満は今ぶち撒けてほしい。
僕は魚の干し肉を咥えながら、地図を広げた。キノコの残光を頼りに、残りの道順を記憶に留めておく。
目的地までは、あと数区画だ。
発光キノコが完全に光を失い、視界は悪化した。僕は平気だけど、後ろの奴はどうだろうか。何度か振り返ったが、ついて来ているから放っておこう。
それよりも今は、目上の課題に向き合うべきだ。
迷路は立体だけど、地図は平面。通路を示す線の太さが均一でないことも、気になっていた。
その答えは、太い線が細い線へ変わる箇所にあった。行き止まりでも、急な坂道でもない。登るしかない。
突起は少なく、苔で滑りやすい。小石を投げて反響音を確認し、意を決して振り返ると、エシュは既に腰を落として待っていた。
その背後に回り、両肩に手を添えた。脚を伸ばすと、視界が持ち上がる。残っていた柵を掴み、腕と肩を足場にして、よじ登った。
通路は広く、高さもある。湿り気が薄れ、光苔の色味も違う気がする。僕は通路脇によって、腰を落ち着けた。
エシュが壁を駆け上がって来た。縁に手をかけ、身体を持ち上げる。粉塵を払う仕草も、どこか小慣れてきた。
失敗は見なかったことにしておく。失敗を恐れず、挫けずに挑む。その姿勢は見習いたい。
「……登るためとは言え、踏みつけた件について、言いたいことがあれば、どうぞ」
苔の光を見ていたエシュが、視線を寄越す。
「帰りが楽しみだ」
無表情から繰り出された一言で、背筋が冷えた。
少し進むと、縦長の空間に、崩れかけた書架の残骸。地図上の印が示す目的地だ。
静まり返り、人影もない。周囲を見渡しながら、甘いキノコ茶の匂いを探した。
「無事に着いたみたいだね」
視線の先で、エシュが頷く。壁の刻印は、通達書の印刷と、ハンカチの刺繍に酷似していた。
会いたい人には会えなかったけど、失敗ではない。ここに手紙を残せば、読書会の主催者に届くはずだ。
彼女なら、僕の疑問に答えてくれる。
鞄から地図を取り出し、挟んでいた半分の葉と重し代わりの石を文机に置く。地図は鞄に戻した。
迷宮探索は、ここで折り返しだ。
「帰りが楽しみだ」
その一言が、今でも忘れられない。
明日は、投稿お休みします。
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