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【闇堕ち直前】主人公の色なし観察日誌1  作者: 荒屋朔市
スローライフ・謎解き

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38/50

聞き込み調査に尻込みする『迷宮探偵ヒラメキ』(12-3)

それは、己が推理力への奢りか?

あるいは……。




 洗い終えたハンカチを広げ、乾くまでの間に銀糸の草花刺繍を眺める。


 傍らの通達書が目に入った。女性が好んで使う私的な手紙でもないのに、文字とは異なる染料で印刷された装飾が四隅にある。公的な文書にしては妙だ。


 ハンカチと通達書を並べ、発光キノコの光にかざす。重ね合わせると、刺繍と印刷装飾の輪郭が寸分違わずに一致した。


 彼女との馴れ初めをエシュに問い質すべきか?

 


 

 通達書を改めて透かす。紙質は上層部の役人が使うものと同じだ。誰が何の目的で細工を施したのだろう。


 今になって思えば、読書会の主催者は素性を隠していた。思想や収集していた本は、権力者に危険視されそうなものが多くあった。

 あの読書会は、綱渡りをするようなバランスで成り立っていたに違いない。


 彼女なら、開催不能になった時のために、手を打っているはずだ。参加者との連絡手段。


 通達書の模様の形に覚えがある。

 僕は記憶を頼りに、脳内で地形を組み立てた。これは地図だ。示されているのは、国の外れに広がる立体迷路。子供たちの遊び場であり、待ち合わせにも使われていた場所。


 彼女の用心深さを考えれば、地図の目印は、手紙や物資の受け渡し場所。取引を行うための中継拠点だろう。

 繋がりを取り戻せるかもしれない。

 


 

 通達書を折りたたみ、千切った葉の半分を挟む。

 微動だにしないエシュに向けて声をかけた。


「場所がわかった。読書会の主催者へ手紙を出しに行く。君は、ここに残ってくれていい」


 エシュは答えず、僕を見つめる。


「引き止めたいなら考え直す。納得できる理由を君が説明してくれるなら。それか、ハンカチの持ち主の情報でもいい」


 沈黙が続く間に不安が募る。親の顔色に怯えていた頃を思い出した。あの頃と、何も変わっていない。

 安全な場所に収まろうと背を丸める自分の姿が浮かび、少し腹が立つ。


「君の許可を求めているわけじゃない。僕の行動で君が不利益を被るなら、それは少し気の毒だと思っただけだ」


 低く、そう付け加えた。

 長い沈黙の後、エシュは立ち上がり、北門の方へ歩き始める。その背中を見て、緊張が解けていくのを感じながら、静かに息を吐いた。

 


 

 僕らは、もう一度あの迷宮へ向かう。

 過去の繋がりを手繰り寄せ、これからの僕自身の立ち位置を確かめるために。

 

 

 

大人の男女間の出来事にウブなだけでは?



次回、地図を片手に地下迷宮探索へ。

明後日、19日に投稿します。

読者アンケート ☆をタップして教えてください。

どれを読みたいですか?

1. エシュとロエルの冒険譚。

2. 主人公最強。

3. ミシャが笑っているだけの話。

4. 身分差ロマンス。

5. ハルとレナの恋物語。


※結果は作者がこっそり観測します。

無回答を選びくださる方は全部をお望みなのですね。勿論、理解しておりますよ。

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