皆様お待ちかねの入浴シーン【全年齢対象】です(間9)
腰ほどの水深の場所で座ると、呼吸困難になります。異論は認めます。
街の喧騒が髪と衣服に染みついて離れない。埃と臭いが鼻を刺し、集中力を妨げる。
とはいえ、飲み水に使っている湖を汚すのは気が引ける。
そこで僕は、地底湖の周囲を歩いてみることにした。水面に葉を浮かべて、湧き出し口や流れを探る。
けれど、どこを見ても水は澄んでいて、流れの有無すら素人には分からなかった。ならばと、地熱岩から少し離れた場所で、浅瀬を探すことにした。
草陰と水中に外敵の気配がないこと、エシュの姿が見えないことを確認してから、靴を脱ぎ、そっと足を踏み入れる。
ほんのり温かい。
外套以外の衣服を順に脱ぎ、水に沈めて押し洗う。繊維に染み込んだ臭いや埃が、ゆっくりと水に溶け出ていく。
洗い終えたものは丁寧に絞り、茂みの上に掛けた。最後に外套と下着も洗い、石の上に広げて干す。
腰ほどの深さがある場所へ移動し、肩まで浸かる。目を閉じると、身体に残っていた緊張も水に溶けていく。
湖面に白髪が浮かび、逆さまの景色が揺れる。
静けさの中で、ふと違和感がよぎる。こんな場所に、僕がいるのは場違いじゃないか。
かつての聖域『神の古泉』を生活水に使うのは、神への冒涜だ。
けれど、汚いまま挨拶もなく上がり込んで、腐乱していく物体を水底に放置する方が、よほど罰当たりだろう。
年寄りたちの怒声が脳裏に浮かぶ。それを振り払うように、頭まで潜った。
くぐもった水音だけが囁き、悩みは遠ざかっていく。
神罰への不安よりも、今ここで生きているという感覚の方が、ずっと確かに感じられた。
息が苦しくなり、水面から顔を出す。目前にエシュがいた。咎めるでもなく、ただ見下ろしている。
もう見回りの時間だろうか。湖に踏み込んでまで僕を探す理由は何だ?
腰の外套が少し濡れている。
「……ロエ?」
きっと、長居しすぎたのだろう。
「君の外套も洗おうか? 髪も、たまには櫛で梳いて洗った方がいい」
わざと明るく声をかけたが、エシュは黙り込んだ。
「外套は、お預かりします。しゃがんで。その方が温かい。……何か落ちた。ハンカチかな?」
青白い光を見つめる琥珀色の瞳は、若葉のように澄んでいた。
呼ばれるたび、許されたような気がしてしまう。もう少しだけ留まっていたい。そう思っている自分に気づく。
でも、まだ呼ぶ決心はつかない。
僕は喋り続けた。
考えすぎる自分の意識を逸らすために。そして、エシュの聞こえすぎる耳を少しでも塞げるように。
この静かな時間が続けば良いのに……。
月曜〜金曜まで、5日連続で投稿します。
スローライフと謎解き、お付き合いくださいませ。
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※書き手は別の意味でハラハラしました。
反応のない方は、強く現状維持をお望みとの意思表示として判断させていただきます。大変良い趣味趣向をお持ちのようですね。ようこそコチラ側へ。




