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【闇堕ち直前】主人公の色なし観察日誌1  作者: 荒屋朔市
回想

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27/50

古すぎて伝わらない告白ネタ。アナタ本当は何歳ですか?(間4)

あの子、質問が多くて、ちょっと疲れちゃうのよね。

真剣に話を聞いてくれているみたいだけど……。



 誰かと話す時は、いつもどこか息苦しくて、緊張してしまう。


 でも、「秘密の読書会」では誰かの話を遮ったり、否定したりしない。そんなマナーが自然に共有されていた。


 主催者は本が大好きな女性で、お勧めの本を紹介してくれたし、どんな話も「面白い見解ね」と肯定的に受け止めてくれた。不思議に思ったことも、嫌な顔を見せずに教えてくれた。

 


 

 ある日、僕が選んだ一冊は、地上の冒険譚だった。


「これ、朗読してもいいかしら?」


 本の持ち主でもある主催者が、そう聞いてきた。僕は声が出せずに頷くだけだった。


 彼女が読み始めると、ミシャも他の子たちも耳を傾けていた。時に固唾を飲み、時に胸を撫で下ろす。僕の中にだけあった感激が、伝染するみたいに広がっていく。


 朗読の後、感想を求められた僕は、いつものように喉の奥で言葉をこねていた。


 促されるまま話していいものか、こんなことでは笑われてしまうのではないか。考えるうちに時間ばかり過ぎていく。

 主催者は静かに待っていたが、それを僕は恨めしくも感じていた。


「……あの台詞、本心とは違うような気がして。言葉の裏に、うまく言えないけど、もっと何か……」


 話し終えないうちに声は萎んでいく。俯いた僕の耳に届いたのは、笑い声ではなかった。


「そうね。あの場面は、もっと別の気持ちが隠されていた。私も、そう感じたわ」


 呼吸が、ほんの少し楽になったような感覚があった。

 


 

 妹を連れて参加した日のことだ。


 僕らが並んで座っているのを見た主催者は、微笑みながら声をかけてきた。


「貴方たち、双子ちゃん? そっくりね」


 僕らは双子ではなかったけれど、白い髪に黒い肌と紅い目は、長命種族の特徴として最も一般的だ。背格好ばかりか、髪型や服装まで似ていたため、よく間違えられていた。


 恥ずかしそうに顔を隠した妹にも、彼女は優しく微笑んで、他の参加者と同じようにキノコ茶と茶菓子を出してくれた。


 妹は膝の上の茶菓子ばかり見ていて、本に触れることもなく、ミシャに話しかけられても戸惑うだけ。主催者は咎めもせず、お茶が冷めていないかだけを何度も気にしていた。

 まるで、誰かの居場所の温度を保とうとしているみたいに。


 それ以来、僕が一人で読書会に参加する度、必ず声をかけられるようになった。


「あら、片割れちゃんは元気かしら?」


 最初は少し照れくさかったけれど、いつしか参加者の間で、「片割れちゃん」という変なアダ名は定着していった。


 そのアダ名が、僕を大勢いる中の一人とは違う何かにしてくれたような気がした。

 

 

 

たくさん本を読んで、大人になったら言うんだ。

『僕と契約してサマンサになってよ』って。


著作権問題は良いのかって?

閲覧数が伸び悩んでいる現状において、お気遣いは無用ですよ。



明日も明後日も同じ時刻に投稿します。

月曜は、お休みします。


30話は、時間・場所・登場人物が変わり、11話の裏話(ヒロイン登場)です。

火曜〜金曜まで30〜33話を連日投稿します。

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