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【闇堕ち直前】主人公の色なし観察日誌1  作者: 荒屋朔市
回想

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26/50

人生に1度くらいは遭遇するだろう? 凄まじい陽キャオーラを放つ子(間6−2)

主人公って、こういう子のことだと確信したね。

1人のモブとして遠くから応援したいと思ったよ。




 妹の隣にいたのは、子供だった。

 明るい桃色を基調としたワンピースに身を包み、くるくるした柔らかそうな金髪を揺らしながら、妹の背中を優しく撫でていた。


「だいじょぶだよ。片割れちゃんなら、ぜったい迎えに来るもん! うちの兄ちゃんは、迷子になっても、お菓子屋に寄ってから来るけどね」


 街の喧騒や妹の泣き声にも負けない声は、底抜けに明るく響いた。


 僕は思わず立ち止まる。その声に覚えがあった。読書会で、誰かと喋ってばかりいた子だ。


 本を読むよりも話すことが好きで、いつも笑い声の中心にいた。確か、ミシャと呼ばれていたはずだ。

 話しかけられたことはある。でも、上手く返せないでいるうちに、いつも他の子が彼女を呼びに来る。僕の煮え切らない態度を気にする様子もなく、またねと言い残してミシャは会話の輪の中へ戻って行った。


 目の前のミシャが、ぱっと顔を上げて僕に気づいた。満面の笑みを浮かべ、ブンブンと大きく手を振る。


「ほらねっ! 言ったでしょ? 来るって!」


 妹が僕の方へ手を伸ばす。僕は駆け寄って、妹を抱きしめた。

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔が、僕の胸元へ押し付けられそうになり、そっと避ける。つられて涙がにじんでくるのを堪えた。

 言いふらされたら困ったことになる。


「読書会に来てた子だよね? 妹ちゃん、泣いてたから、つい声かけちゃったの。だって、放っとけないじゃん。可愛いんだもん」


 そう言って、笑いながら立ち上がった。

 ミシャは裾をぱんぱんと払い、くるりと一回転する。まるで舞台の上に立っているみたいに大げさな動きだ。


「じゃ、またね! 今度こそ、お喋りしてくれると、うれしいな〜〜!」


 満面の笑顔で言い残し、手を振りながら路地の奥へと走り去っていった。


 ミシャがいなくなった裏通りは、すっかり静まり、まるで発光キノコが一つ減ったみたいに暗くなった。不可解なことに、そんな気がした。

 


 

 帰宅後、疲れ果てていた妹は布団に潜り込むと、すぐに寝息を立てた。その隣に寝そべり、僕は今日の出来事を思い返していた。


 あの子の笑顔。妹の涙。薄暗い路地裏。


 お礼を言い忘れた。迷子の妹に寄り添ってくれていたのに、言葉が喉の奥で絡まって、何も出てこなかった。


 次に会ったら、ちゃんと言おう。読書会でも、街のどこかでも、また会えたら。その時は、ちゃんと目を見て。


 そう思いながら、僕は目を閉じた。


 今度の読書会では、会話術の本を探そう。もし、見つけられなかったら、主催者さんにも聞いて、一緒に探してもらおう。

 

 

 

あの子の声が、まだ耳に残っている。

うるさいって意味じゃないよ。


……ゴメン。ちょっとだけ離れて。



今週の金曜〜日曜は、3日連続投稿します。


月曜は、お休みします。

30話は、時間・場所・登場人物が変わり、11話の裏話(ヒロイン登場)です。

火曜〜金曜まで30〜33話を連日投稿します。


回想が続いたことによる中弛み感が、想定していたよりも深刻なので……。

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