人生に1度くらいは遭遇するだろう? 凄まじい陽キャオーラを放つ子(間6−2)
主人公って、こういう子のことだと確信したね。
1人のモブとして遠くから応援したいと思ったよ。
妹の隣にいたのは、子供だった。
明るい桃色を基調としたワンピースに身を包み、くるくるした柔らかそうな金髪を揺らしながら、妹の背中を優しく撫でていた。
「だいじょぶだよ。片割れちゃんなら、ぜったい迎えに来るもん! うちの兄ちゃんは、迷子になっても、お菓子屋に寄ってから来るけどね」
街の喧騒や妹の泣き声にも負けない声は、底抜けに明るく響いた。
僕は思わず立ち止まる。その声に覚えがあった。読書会で、誰かと喋ってばかりいた子だ。
本を読むよりも話すことが好きで、いつも笑い声の中心にいた。確か、ミシャと呼ばれていたはずだ。
話しかけられたことはある。でも、上手く返せないでいるうちに、いつも他の子が彼女を呼びに来る。僕の煮え切らない態度を気にする様子もなく、またねと言い残してミシャは会話の輪の中へ戻って行った。
目の前のミシャが、ぱっと顔を上げて僕に気づいた。満面の笑みを浮かべ、ブンブンと大きく手を振る。
「ほらねっ! 言ったでしょ? 来るって!」
妹が僕の方へ手を伸ばす。僕は駆け寄って、妹を抱きしめた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔が、僕の胸元へ押し付けられそうになり、そっと避ける。つられて涙がにじんでくるのを堪えた。
言いふらされたら困ったことになる。
「読書会に来てた子だよね? 妹ちゃん、泣いてたから、つい声かけちゃったの。だって、放っとけないじゃん。可愛いんだもん」
そう言って、笑いながら立ち上がった。
ミシャは裾をぱんぱんと払い、くるりと一回転する。まるで舞台の上に立っているみたいに大げさな動きだ。
「じゃ、またね! 今度こそ、お喋りしてくれると、うれしいな〜〜!」
満面の笑顔で言い残し、手を振りながら路地の奥へと走り去っていった。
ミシャがいなくなった裏通りは、すっかり静まり、まるで発光キノコが一つ減ったみたいに暗くなった。不可解なことに、そんな気がした。
帰宅後、疲れ果てていた妹は布団に潜り込むと、すぐに寝息を立てた。その隣に寝そべり、僕は今日の出来事を思い返していた。
あの子の笑顔。妹の涙。薄暗い路地裏。
お礼を言い忘れた。迷子の妹に寄り添ってくれていたのに、言葉が喉の奥で絡まって、何も出てこなかった。
次に会ったら、ちゃんと言おう。読書会でも、街のどこかでも、また会えたら。その時は、ちゃんと目を見て。
そう思いながら、僕は目を閉じた。
今度の読書会では、会話術の本を探そう。もし、見つけられなかったら、主催者さんにも聞いて、一緒に探してもらおう。
あの子の声が、まだ耳に残っている。
うるさいって意味じゃないよ。
……ゴメン。ちょっとだけ離れて。
今週の金曜〜日曜は、3日連続投稿します。
月曜は、お休みします。
30話は、時間・場所・登場人物が変わり、11話の裏話(ヒロイン登場)です。
火曜〜金曜まで30〜33話を連日投稿します。
回想が続いたことによる中弛み感が、想定していたよりも深刻なので……。




