情報過多だとダメ出しを受けたので、市街観光は半分に削っときますね(8)
エキストラの皆様、主人公が通ります。
撮影カメラを凝視するのは、お控えください。
数日、地底湖の畔で過ごした後、僕はエシュに街へ行くことを提案した。彼は言葉なく視線を返したが、引き留める様子はなかった。
物資を回収するため、北門を潜って、荒廃した道を進む。見慣れたはずの岩壁は一部が崩れ、足元には大穴まで開いていた。
仕方なく迂回して隠れ家を経由し、街へ向かうことになった。
歩き続け、辿り着いたのは国の下層。
その中心地の大広場を囲む商店街へ近づくほど、熱気と煤けた臭いが濃くなっていく。
発光菌ランプの青白い光が、柔らかく照らし出す。国一番の品揃えを誇るだけあり、通りの両脇には、粗い織物や枯木で組まれた店が連なっている。
活気にあふれ返る喧騒が耳に痛い。
漂ってくる腐敗したような甘い香りは、不愉快なものを連想させ、嫌な気分にさせられる。
外套を目深に被った僕は、人混みの中でも目立つエシュの影に隠れて追従した。道行く移民の異種族はエシュを遠巻きに観察するが、僕の存在には気づかない。
おかげで、僕は周囲を観察する余裕さえあった。
以前に訪れた時とは違う光景に目を向ける。その途中、エシュが僕の歩幅に合わせ、ゆっくり歩いている可能性に思い至った。
僕は足を止め、問いかける。
「休憩する? それとも、帰る?」
エシュは返事の代わりに、僕へ向けた視線を商店の棚へ戻した。反応の薄さに、小さく溜め息をこぼす。そんな僕の手を大きな手が掴んだ。
歩きにくいだろうに、エシュは構わず人混みを割って進んで行く。
キノコパン屋などの食品店、照明を含めた日用品、中古雑貨の露店。それらの店先で、エシュがしばしば足を止める。その様子を観察しつつ、衣料品店の前を通過して目的を目指した。
人通りの少ない道に到達して、手繋ぎ状態から解放されたのをいいことに、僕は古紙店の前で足を止める。奥には、書籍と紙束が置かれていた。
一冊の本に手を伸ばす。
埃を被った表紙には、古い字体で『世界史』と印字されている。ページをめくると、細かい文字がびっしりと書き込まれていた。
エシュは字を読めるのか、一瞬だけ頭を過ぎったが、どうでもいい。そろそろ目的地だ。
僕は本を閉じて棚に戻した。
観光ガイドブック代わりに主人公をキャリーするの、止めてもらってイイですか?
来週月曜日の投稿は、お休みします。
代わりに、1話完結の短編を投稿します。
24.5話として読める設計ですので、是非。




