毒吐
寝る前、独りになってから考える。
穏やかに流れていた時間が、嘘のように歪んでいく。
僕は生き延びた。
あの日に終わるはずだった命が、今もこうして生きている。
溺れかけた僕を引き上げたのは、エシュだ。
情けを掛けられたのでもなければ、その後に何かを要求されることもなかった。
飲水や食料の話題を振ると、エシュは僕に地底湖の水を勧め、果実を寄越してきた。水も果実も、勧められるがまま飲み込んだ。
身投げを責めず、引き上げた理由も語らない。
罰もなければ、赦しもない。虚しいばかりの日々が過ぎていく。
それなら、なぜ助けた?
なぜ、あの瞬間に手を伸ばした?
挨拶代わりに視線を交わし、核心には触れず、食事を共にする。
この時間に、何の意味がある?
気まぐれなら、そろそろ毒を寄越して欲しい。
無為に生かされていることが苦痛で仕方ないのに、僕はまだ呼吸を続けている。
何も求められない苦しみ。
生きる理由を見つけられず、役割も与えられないまま、ただ生かされ続ける。
以前と何も変わらない。
これが救いと言えるだろうか?
翌朝、何事も知らないような態度で差し出された果実を受け取り、僕は黙って食べた。
来週月曜日の連載投稿は、お休みします。
代わりに、24話は明日21時に投稿します。
来週月曜日は、1話完結の短編小説を投稿します。
24.5話として読める設計ですので、是非。




