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【闇堕ち直前】主人公の色なし観察日誌1  作者: 荒屋朔市
主人公覚醒

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18/50

熱狂に疑念が渦巻いて、胸の高鳴りは転がり落ちる。今、夢の中の貴方に会いたい(7−1)

天才的なワイだから気づいたやで。

寝とるアイツにも教えたろ。



 感動と興奮が、胸の内で渦を巻く。この高鳴りを今すぐ誰かと分かち合いたい。そんな衝動に突き動かされ、足元に気を配ることも忘れて、僕は泥濘みを横切るように駆けた。


 目指すは、赤髪の男の寝場所だ。


 しかし、岩盤の上に辿り着き、惰眠を貪る巨体を目にした瞬間、熱狂は急速に冷えていった。

 


 

 何故、こんなにも息を切らせているのだろう?

 謎を解き明かしても、そんな話を聞かされて誰が喜ぶ?

 この高揚を理解してくれる人物は、そもそも存在するのだろうか?

 これまでに何度失望したかも、覚えてはいないくらいだ。


 寝転がった赤髪の男は、まるで景色の一部になったかのように動かない。


 僕には驚きと感動をもたらす発見でも、相手にとっては違うこともある。休息の邪魔をしてまで、聞かせる事柄ではないのかも知れない。


 目を輝かせて話に聞き入る男の姿が、想像できない。無視か、気のない声を返されるか、沈黙と冷めた視線だけを返す姿なら容易に想像できる。

 相手の既知情報とは気づかず、得意気に語る子供へ向けるような温度感のない目で……。


 そもそも、この男は幻覚に気づいている素振りを見せていなかっただろうか? 僕の状態を知り、それを僕自身に気づかせようと試みてもいたのではないか?

 僕に声をかけたのも、豆菓子を投げて寄越すよう提案したのも、予め知っていたからでは……。


 静かな渦のように疑念は広がっていく。


 できることなら問い質して、すべてを聞き出したい。だけど、他人に振り回される側の気持ちを考えれば、起こすのは気が引ける。それなら、せめて待つのが道理だろう。


 僕は傍らに腰を下ろし、静かに息を整えた。

 


 

 足元の小石が転がり落ちる。

 その音に合わせるかのように、赤髪の男の瞼が、ゆっくりと持ち上げられた。

 

 

 

ちょっと待てよ。

もし、僕だけ気づいてなかったんだとしたら、メッチャ恥ずいヤツじゃん。

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