無断外泊から朝帰りするパーリーピーポーは、お嫌いですか?(6-4)
空気を変えたいと思っていたとこなんですよ。
イイ仕事しますね。
岩壁に沿って進む重量感のある足音を聞きつけた。
この場所へ辿り着けるのは、地底の複雑な通路に慣れた者か、予め存在を知っている者のみ。後者なら面倒臭そうだ。
僕は反射的に身を隠せる場所を探した。
まだ身体は重く、思い通りには動けない。近くの岩壁に窪みを見つけ、そこで身を縮めて、やり過ごすことにした。
手早く荷物をまとめ、できる限り痕跡を消して、物音を立てないよう気を配りながら移動する。
足音は進行方向を変えた。
水辺の淵に立ち寄り、その場に腰を下ろした。それから少し間を開けて、のっそりと立ち上がるような気配。
やがて足音は、僕が先ほどまで寝ていた岩盤の前に来て止まった。
息を潜める僕の耳に、自身の鼓動の音が響く。
短い静寂の後、再び音が聞こえた。大男が無造作に腰を下ろしたような音だ。
緊張の糸が切れて、僕は静かに息を吐き出した。ここは、あの赤髪の男の寝場所か。
どこからか漂う甘く清らかな香り。安全を確認するために、僕は窪みから顔を覗かせた。
視界を埋め尽くすのは、幽かに発光する菌類に照らされ、花を咲かせる植物たちだ。その向こうでは、湖の水が仄かな光を揺らめかせ、静かな庭園を青白い光で満たしている。
塒の主は寝転がって惰眠を貪るようだ。その間に、少しだけ散策してみようか。
だけど、頭が重い。
丸一日ほど寝た気はするのに、足りていないのか、逆に寝すぎたのか、怠さでフラフラする。不健康極まりない肌の色は、視界に入るだけでも目がチカチカして、目眩を引き起こしそうだ。
岩壁の窪みで、じっと踞っていたい。でも、寝心地は期待できない。しんみりと物思いへ浸るには、少しばかり眩し過ぎる。
瞼を閉ざしても、瞼越しに青白い光がチラつく。正体不明の匂いが鼻腔をくすぐってくる。
結局、不安に押された僕は耐えかねて、ゆっくりと立ち上がった。
ブーツは既に乾いている。ひんやりと冷たいが、履いて移動するのに問題はない。靴裏には、見覚えのない青い粘液がこびりついていた。
まだ新しそうだが、どこで踏んだのだろうか?
そういえば、あの赤髪が枝に引っ掛けてくれたのなら、礼を述べるべきだろうか。恩を受けたら返す。これも、僕を縛りつけ、苦しめてきた一般常識だ。
出会ってから、これまでに見せられた奇行の数々が、一気に浮び上がる。どんな表情を作り、何を言えば良いのか、わからなかった。
考えるだけで気が重い。それなら、今は楽しいこと探しに集中しよう。
向こうから接触してきたら、その時に考えればいい。
対応に失敗したとしても、怒りたい奴は何をどう返しても怒る。笑いたい奴は勝手に笑うのだから、好きにさせておけばいい。
靴紐を解くなんてことが『奴』に出来ると、お思いですか?
デストロイヤーですよ?




