今さっきクライマックス終わったとこなんで主人公は寝てますが、良けりゃドウゾ(4-1)
主人公が『陰キャ』らしいんで寝かせました。日光だけは勘弁してください。灰になったら困るんで。
世界観の整理から始めて、美人と語らい、争奪戦を始めて参ります。
全部終わったら、主役の登場です。
水底から湧き立つ仄かな光が、静かな湖面を青白く染め上げる。輝きは微弱ながらも、この地底に脈打つ《根源の声》として、赤髪の男の意識へ響いていた。
彼は、その腕に抱えた塊をじっと見つめる。長命種族の特徴を色濃く現す黒い皮膚は、今や透き通るような白に変色していた。それでも、微かな寝息と体温を今も伝えてくる。
塊から聞こえる《声》は未だ弱く、か細い。頬に触れても、意識を取り戻す気配はない。肉体を維持するために、深い眠りを必要としているのだろう。
そうしている間にも、《声》から得た情報が瞬時に分類され、解析されていく。
長命種族の身体は、こと肉体的な強度に限れば、他種族と比較しても貧弱で脆い。故に、適切な体温を保つためには、温かい寝床が必要だ。ゆっくり身体を休められるように、ゴツゴツした岩場は避けなければならない。
こんな時にこそ知識と知恵を借りたい。そう彼は思い至り、視線を塊の顔に向けた。
張り詰めていた緊張から解放され、深い眠りに落ちている。この小さな身体に疲労を溜め、無理を続けていたことも、男は感じ取っていた。その《声》が、今は遙か遠くに感じられる。
観察するうちに、意識が《声》の濁流へ押し流されそうになるのを感じ取った。塊の寝息と体温に意識と感覚を集中させ、危ういところで踏み止まる。
男は急ぎ足で陸地を目指した。
辺りは吐息のような温湿気に満ち、苔むした岩肌を豊かな緑が覆い尽くしている。
赤髪の男は塊を抱えたまま、湖を囲む岩壁に沿って歩く。北門へ続く通路から身を隠せる場所を探した。
それを彼が見つけたのは、半周以上も歩いた後であった。柔らかそうな苔と芝草に覆われた天然の寝床とでも呼ぶべき奇跡の空間。
先ず、男は自身の手を伸ばし、植物に触れて確かめた。肌に触れる感触のみならず、体温を奪う湿り気も、この塊に障ることは《声》から学習済みだ。
確認を済ませた後で、鬱蒼と生い茂る植物の上へ塊を慎重に寝かせた。自身は傍らに腰を下ろす。
その寝息に耳を澄ませながら、男は感情豊かな《声》の続きを待った。
……ひと時の平穏が訪れた。
「擬似神視点」だの「構造語り」だの好き勝手やってますが、主人公の一人称視点は、ちゃんとしてます。
他は、キャラ設定の破綻により、限定三人称視点・三人称神視点がスクランブルします!
苦手な方は酔い止めをご用意くださいませ。
鈍感な方は、ごゆっくり読み進めてください。
ロマンあふれる視点の迷宮にようこそ。