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灰色とあの日の青



いつからだろう。本気で何かを追い求めるのをやめてしまったのは。手に入るものだけで幸せだなんて平気でいえるようになったのは。




「ウソツキ」




――目を開けると真っ暗だった。携帯を探して明かりをともす。午前1時。帰ってきてからそのまま眠ってしまったらしい。画面にたまっている通知を流し見ていると週末に開催される高校の同窓会の場所が送られてきていたことに気づいた。





「土曜日か」

思わず漏れるため息に自分でも驚く。ふと思い立ち、クローゼットの中にある箱を取り出す。高校時代の思い出がそこにはつまっていた。卒業アルバムに卒業証書、教科書にノート、そしてたくさんの写真たち。





そこにいたのは、屈託もなく笑うあどけない子どもだった。運動会、文化祭、楽しくてたまらない日々を彼女はたしかに過ごしていた。





アルバムをめくっていると一枚の写真が落ちてきた。

そこには笑う彼がいた。動揺した。こんな顔で笑う彼を私は知らない。







彼は人当たりがよく、誰からも好かれる人だった。友達の多いクラスの人気者だった。それに比べて私は特段取り立ててなんの取り柄もない平凡な女だった。




彼と私はあくまでただのクラスメイトだった。関係が変化したのは、高校2年の夏休み。家族とともに訪れた海で海の家でバイトをする彼を見つけてからだった。




「焼きそば2つください」


「かしこまりました。800円になります――200円のお釣りです。…あれ、花村さん?」


「あ、瀬戸くん」


「あちゃー。誰にも会わないように、わざわざ遠くの海まで来たのに、バレちゃったか」


「え?あ、うちってバイトダメだったっけ」


「なあ、花村。これ俺の奢りだから、バイトのことは2人だけの秘密な。――って笑うなよ」




そう言ってりんご飴を渡してきた彼。別に言うつもりなんかなかったけれど、あまりにも必死だったからつい堪えきれずに笑ってしまった。





彼は欲しいもののためにお金を貯めているらしかった。休み明け、なんだか少し焦げたような小麦色の肌の彼は私をみつけると満足そうな顔をして笑っていて、それが妙にくすぐったかった。





私は彼との「2人だけの秘密」に案外浮かれているらしかった。皆の人気者である彼に私しか知らない秘密があることに優越感を感じていた。





突然彼からメッセージが届いた。いつの間にか追加されていたらしい連絡先に心が踊る。




『俺、真夏のサンタクロースしてきた』




意味不明な内容に思わず彼を見ると、どこで手に入れたのか分からない白いヒゲをつけてこちらを見ていて、ニカッと笑いかけてきた。





「瀬戸、ちなみに今授業中なのは理解してるか?パーティーは休み時間にやりなさい」





いつの間にか彼の後ろには若林先生が立っていて、彼は教科書で頭をはたかれていた。「いてぇ…」と頭を押さえ前を向く彼に『ばーか』と一言だけ書いて送った。







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