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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第52話

愛する(シャドーレ)の遺品整理。

それ以上に悲しい作業があるだろうか…。

「この箱は…なんだ?」

さほど多くないシャドーレの遺品を泣きながら整理していたダークは、見覚えのない箱を見つけて首を傾げた。誰かからの贈り物だろうか?

「思えば、シャドーレに可愛らしいプレゼントの一つも贈ったことがなかったな…。お前はいつも黒魔術のことを考えていたから、貴重な魔術書とか、珍しいマジックアイテムとか、そんな物ばかり贈っていた…」

それは恋人としてどうなのよ、ダークさん。

「休みの日くらい『クロス』から解放してやればよかった。普通の女の子のように、着飾らせてやればよかった…」

シャドーレはクロスにいた頃から仕事人間だった。思い返してみれば、彼女が私服でいるのを見たことがない。

それは恋人としてどうなのよ、ダークさん。

事実、流転の國でマヤリィに打ち明けた通りシャドーレは自分で服を選んだことがなかった。伯爵家にいた頃は貴族の令嬢として決められた服を着せられていたし、魔術学校時代は制服、そして『クロス』にいた頃は軍服を着て、ローブを羽織ることもあった。流転の國ではルーリが選んでくれた服を着ることもあったが…無論ダークはその姿を見たことがない。

「お前は長い髪が嫌だと言っていたが…綺麗な髪留めでもプレゼントしてみたら、案外気に入ってくれたかもしれないな…」

それはちょっと分からないけど。

「シャドーレ……」

ダークはシャドーレの部屋で一人、泣き続ける。誰にも入らせないよう命じてあるから、ここでは人目を憚らず泣くことが出来る。

シャドーレの私物は多くなかった。一通り部屋にある物を確認すると、ダークは再び不思議な箱と向き合った。

「誰からの贈り物だろう…?」

それは、シャドーレがミノリ・アルバにプレゼントしようとしていたネックレスだった。

ミノリが王宮に戻ってきたら、あの時言えなかった愛の言葉と一緒に贈るつもりだった。

「っ…!この箱『鍵』の魔力がかかっている…」

ミノリ亡き後、シャドーレは渡すことの叶わなかったその贈り物に『鍵』の魔術をかけた。

そして、時折それを見ては大好きなミノリのことを思い出していたが…無論ダークはそのことを知らない。

「シャドーレがかけた魔術だとするなら…俺の力では開けることが出来ないだろうな」

ダークは箱にかけられた魔術を解こうと試みるが、やはり開かない。

シャドーレの魔力には敵わない。

「一体、何が入っているというんだ…」

魔術書が入っている大きさには思えない。

かといってマジックアイテムを箱にしまっておくようなことはしないだろう。

「今も桜色の都には、シャドーレ以上の魔力を持つ者は存在しない…。これは、このままにしておくべきなのか?教えてくれ、シャドーレ…」

ダークは、シャドーレとミノリ・アルバの関係を知らない。ミノリが国王の側近として可愛がられていた頃、彼はまだ記憶を取り戻していない状態だったし、黒魔術師部隊を強化するのに忙しい時期だった為、国王陛下の御前に参上することもなかった。それは、謎の組織によって桜色の都に居住していた異種族が葬り去られた事件の後、国民を安心させる為にも『クロス』の戦力増強を図ろうとしてダーク隊長が奔走していた頃の話だ。

「どうしたらいいんだろう…」

ダークは箱を見つめたまま、考え続けた。

「これは、何もせずにしまっておくべき物なのかもしれない。しかし、シャドーレがいずれ我が子に託そうとしていた物だという可能性もある…」

ならば、やはり中身を確認したい。

「流転の國に頼るしかなさそうだな…」

シャドーレの葬儀の際、流転の國の主であるルーリに初めて会った。美しく気品にあふれ優雅な立ち居振る舞いでその場にいた者全てを魅了した流転の國の麗しき女主人。それと同時に、底知れない魔力を秘めた人なのだとダークは思った。勿論、彼女が普通の人間ではないことを彼は知らないし、専門分野が何であるかも聞かなかった。流転の國の主を務める人物ともなれば、計り知れない強大な魔力を持っているに違いないと思っただけだ。

「ルーリ様はシャドーレと公務以外のお話もされていたというし…これがシャドーレの形見となれば、快く引き受けて下さるのではないだろうか」

ダークは流転の國に連絡を取ろうと思った。

「さすがにルーリ様の専門が黒魔術とは思えないが、流転の國にはシャドーレをも凌ぐほどの黒魔術師がいると聞く。きっと、この箱にかけられた魔術も解いてくれるはずだ」

そう言って、ひとまず箱を元の場所に戻す。

ダークはルーリの美しい顔を思い出し、

「ルーリ様はきっと白魔術師だ。女神が降臨したかのような神々しさ。王子を抱いて下さった時の聖母のような優しい微笑み。一度あの御方の魔術を見てみたいものだが、さすがに畏れ多くてお願いすることは出来ないな」

色々と想像しながら、ダークは手紙を書く。

「早速、流転の國に使い魔を送ろう」

そして、その旨を記した手紙を受け取ったのは、流転の國の最西端で物思いに耽っていたネクロだった。

彼女は誰にも何も言わず、返事の手紙に『魔力解除』の魔術を織り込み、使い魔に託したのだった。

結局、ダークはルーリの専門分野(みわく)を知らないままです。

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