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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第48話

月日は流れた。

「やっぱり、ルーリ様はこうでなくっちゃ!」

輝くようなブロンドの髪を長く伸ばし、久々にウェーブをかけたルーリ。

「お美しいです…ルーリ様」

シロマが見とれている。

「それに、その黒いミニドレスも」

それは、前にマヤリィとシャドーレが選んでくれた漆黒のミニドレスだった。

「ルーリ様のお美しさは反則ですよ~。私、既に魅惑にかかっております〜!」

藍色の長い髪を縦ロールにし、可愛らしいメイド服に身を包んだネクロが言う。しばらく隠遁のローブは着ていない。

「そんなこと言ったら、クロネちゃんだって可愛すぎます…!私、魅力的な方々に囲まれて幸せにございます」

修道服を着てウィンプルを被ったシロマが言う。彼女は相変わらずだ。

「シロマは…もう髪は伸ばさないのか?」

「はい。私はずっとこの姿でおります」

優しげな微笑みをたたえてシロマが答える。

「私は今のシロマ殿が好きですぞ」

こういうことをさらっと言っちゃうネクロ。

勿論、クロネちゃんの声で。

「…そういえば、ネクロってこんなに小さかったっけ?」

元々の長身に加えてハイヒールを履いたルーリから見れば皆小柄なのだが、さらに小さくなった気がする。

公式設定では160cmだったよね?

「確かに、ネクロ様は私より背が高かったような気が致します」

シロマも首を傾げる。彼女は身長157cm。

「ついにバレましたか。…はい、その通りです~。実は自分自身に『縮小化』魔術をかけましてございます」

「それって、禁術じゃないか?」

時々、ネクロは禁術しか使わないのではないかとルーリは思う。

「一応、俺は止めたからな」

ネクロの傍に浮いている『鉄壁の細枝』が青年の声で喋る。

「細枝。お前、結構人の心を持ってるんだな」

「そりゃあ、一度『縮小化』をかけたら元に戻すことは出来ない。身体に負担もかかるしな。…ていうかルーリ。細枝言うな」

どうやら『人化』や『性転換』と同じカテゴリーに分類される禁術らしい。

「…どうにも、あの御方と同じ身長でいるのがつらくなってきまして…」

そう。元の顔立ちがそっくりなばかりではなく、身長も体重も同じだった。

「ネクロ様…」

シロマが心中を察して悲しそうな顔をする。

「今となっては、あの時ルーリ様がクロネちゃんの姿をお作りになってよかったですね」

元はと言えば、桜色の都に潜入する為にルーリがデザインした『変化』用の姿。あれ以来、ネクロは変化を解いていない。どれだけ魔力値が高いの?

「普段は5cmヒールの靴を履いておりますが、今の実際の身長は150cmにございます~。ねぇ、ルーリ様、可愛いですか〜?小さくなったネクロは可愛いですか〜?」

「ああ。お前は可愛い」

ルーリはそう言うと、ネクロを抱きしめる。

「その正体が『魔国』を滅ぼした鉄壁のネクロマンサーだなんて、誰も思わないだろうよ」

「それに、今はルーリ様の側近にして、メイド長ですものね、ネクロ様」

二人の抱擁を前に、シロマが微笑む。どうやら、見習いメイドから昇進したらしい。

「そうだ。お姫様抱っこして、玉座の間まで運んでやるよ」

言い終わらぬうちにルーリは軽々とネクロを抱き上げる。

「ル、ルーリ様…!?」

「さぁ、あざと可愛いネクロちゃん。玉座の間に行こうか」

急に抱き上げられて困っているネクロにキスをするルーリ。

「あら…」

シロマは微笑みながら見守る。

細枝は宙に浮かんだまま、

「…今日は部屋に帰ってこなくていいぞ、ネクロ。魅惑の死神に食われてこい」

「偉そうなことばかり言って~。魔術具(ほそえだ)はアイテムボックスに戻りなさ~い!」

そう言うと、ネクロはアイテムボックスに鉄壁の細枝をしまう。

「やれやれ、誰のお陰でこの世に顕現出来たと思っているのやら」

「いいじゃないか。心強い相棒がいて」

ルーリは皆とは違い、自らの身体に『流転の閃光』を宿している為、杖などのマジックアイテムは持っていない。

「シロマも『ダイヤモンドロック』とは長い付き合いなんだろう?」

「はい。私と共に流転の國に顕現した魔術具にございます。…ずっと一緒に白魔術の訓練を行ってきました」

そう言ってシロマが微笑む。

「お陰で皆が救われてきた。二人(・・)は、この國の救世主のような存在だな」

「勿体ないお言葉にございます、ご主人様」

シロマが跪いて頭を下げると、ダイヤモンドロックもシロマの隣に来てお辞儀するようなポーズをとる。

「…ご主人様~、そろそろ降ろして下さいませんか〜」

ルーリの腕の中でネクロが訴える。

「分かったよ、玉座の間に着いたらな」

そう言うと、ルーリは皆を連れて『転移』する。

「…さて、今朝お前が言っていた話だが」

玉座に座るなり、ルーリは真面目な顔になる。

「魔力探知に何かが引っかかったと言っていたな?その正体は分かったのか?」

「はっ。今現在も物凄いスピードでこちらに近付いております。…恐らく、桜色の都のシャドーレ様の使い魔ではないかと」

ネクロも真面目に答える。

「シャドーレの使い魔というと、例のカラスか。何か緊急の連絡だろうか…?」

シャドーレは今も『長距離念話』を習得していない為、流転の國にいる皆と念話が出来ない。その為、尋常ではないスピードで桜色の都と流転の國を往復出来るカラスの使い魔は必要不可欠な存在だ。

「ご主人様。もしや、お産まれになったのではないでしょうか…?」

シロマが言う。ルーリは計算する。

「そうか、もうそんな時期になるのか…」

二度目の闇堕ちマヤリィ襲来の後、桜色の都から、国王陛下ご懐妊の知らせが届いた。

あの時、過労で倒れたシャドーレは一時的に魔力値が大幅に下がった。そしてまだ本調子ではないというのに、記憶の戻ったダークと愛し合い、毎日のようにセックスした。

どうやら、その間に妊娠したらしい。

「結果的に、シャドーレ様は魔力値の高い女性の妊娠率の低さをご自身で証明されたことになりますな」

クロネちゃんの声でネクロが言う。

「ああ。…でも、よかったよ。シャドーレは自分に子どもが出来たことを本当に喜んでいた。それも、愛する男との間にな」

ルーリが言う。自分にはよく分からない感情だが、最後に会った時、シャドーレは今までになく嬉しそうな顔をしていた。

「ルーリ、私…本当は子どもが欲しかったの。即位する時にそれは諦めたはずだったのに、今、こうして私のお腹に赤ちゃんがいる。…それが嬉しくて仕方ないのよ。ダーク様も喜んでくれているの。もう名前も考えているんですって。男の子でも女の子でも、無事に産まれて元気に育ってくれたら、これ以上望むことは何もないわ」

シャドーレの笑顔を思い出す。

「きちんと日にちを計算して、感動の瞬間に立ち会わせて頂けばよかったですな」

「確かにな。私は無理でも、メイド姿のクロネなら、中に入れてもらえたかもな」

そんな話をしていると、城の最西端からカラスの声が聞こえる。ネクロが指を鳴らし、扉を開けると、使い魔は玉座の間に飛び込んでくる。

「ご苦労だった。さぁ、読ませてくれ」

カラスの使い魔は一声鳴くと、ルーリに一通の手紙を渡した。

ルーリはすぐに読み始める。ネクロとシロマは黙ってご主人様の次の言葉を待つ。

しかし、次第にルーリの手が震え出す。

「こ、これは…事実、なのか……?」

ルーリは使い魔に訊ねる。

カラスは悲しそうに一声鳴く。

「ご主人様、何事にございますか?」

ルーリは何も言えず、その手紙をシロマに渡す。二人は読み始める。

そこには「国王陛下ご逝去」の文字。

「そんな…!まさか、シャドーレ様が……!」

残酷な事実を突き付けられ、二人はその場に立ち尽くす。

「恐らく、出産時に何かあったのでしょう…。私達がお傍にいれば、何かして差し上げられることがあったでしょうか……」

シロマが肩を落とす。

「使い魔。ここに書かれている通りなら、シャドーレの子どもは無事なんだな?」

ルーリが訊ねる。カラスは頷く。

「そうか…。不幸中の幸いだな。シャドーレはダークとの間に子が出来たことをとても喜んでいた。しかし…我が子の成長を見ることもなく逝ってしまったのか…」

悲しみに沈むルーリに、使い魔はもう一通の書状を渡す。

「国葬…。そうだな、私が出席しないわけにはいかない」

ルーリは流転の國の主として、シャドーレの葬儀に出席することになる。

「…今から返事を書く。少し待っていてくれ」

そして、シャドーレの夫であり、現時点では桜色の都の国王代理を務めているダークに宛てて返事をしたため、使い魔に託すのだった。

次回、久々にシャドーレが登場します。

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