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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第45話

キスをして生き返るおとぎ話。

キスをして息絶えるおとぎ話。


さぁ、マヤリィ様。どちらがお好みですか〜?

「『完全消滅』!!」

『鉄壁の細枝』はクロネの可愛らしい声に合わせ魔国の住人を次々と葬り去っていく。

文字通り消滅してしまった彼等はどこの世界にも存在しない者となる。

「『完全消滅』!!」

「『最大強化』せよ~!!」

誰もが恐れるはずの魔国にクロネ様降臨。

悪魔共も操られている死者も、何が起きたのか分からないまま応戦するが、

「『シールド』!!」

「『カウンター』!!」

「『死霊使役』!!」

クロネが放つ魔術によって魔国の者共は動きを封じられ、次々と消されていく。

マヤリィにはもう魔力は残っていない。ルーリが推測した通り、自らの強大な魔力のほとんどを対価として悪魔に差し出し、契約を結んだのだった。その魔力も、悪魔が消滅したのと同時に消えてしまった。

マヤリィはその場に座り込んで動けないが、代わりにネクロに近付いてくる者がいた。

「そなたは…何者だ?」

見れば、ルーリの姿を彷彿とさせる長身の美女が立っていた。

漆黒のロングドレスを身に纏った只ならぬ雰囲気の女性である。

(魔国の偉い人ですかな?)

ネクロは怖気付くこともなく彼女を観察する。

膝を超えるほど長い黒髪。

黒光りしている長く鋭い爪。

背中には尖った悪魔の翼が生えている。

「お初にお目にかかります~。私はクロネ。最上位の黒魔術師にしてネクロマンサー。そこに座ってるマヤリィ様の元配下です〜」

ここまで来てもクロネを貫く。

「そなたがたった一人で悪魔達を消したというのか…?」

「はい。貴女にも消えてもらいます~」

クロネは笑顔で応じる。

「そんなことが本当に出来ると思うか!?」

彼女は指を鳴らし、魔術を発動する。

それは、幾度となく目にした光景。

「さぁ『魅惑』の風に包まれて息絶えるがよい」

どことなくルーリに似ていると思ったら、彼女もサキュバスらしい。蠱惑的な笑みを浮かべ、ネクロに手を伸ばす。

「可愛らしい顔をして、よくもこの国を踏み荒らしてくれたものだな。…クロネと申したか?そなたが倒れた暁には、私が責任を持ってその身体を食べるとしよう」

しかし、一向にクロネは倒れない。

「なぜ、この魅惑の風の中で立っていられるというのだ…!?そなたは一体…?」

散々サキュバスに魔力を使わせてから、クロネは甘ったるい声で種明かしをする。

「申し上げるのが遅れましたね~。私が現在お仕えしているご主人様は魅惑の死神と呼ばれし最強のサキュバス・ルーリ様にございます~。貴女如きの『魅惑』など私には効きませんよ〜?何しろ、普段からルーリ様と私はアンナコトやコンナコトをしているのですから〜。…では、今度はこちらから参ります~。『毒鎖拘束』!!」

サキュバスが困惑している間にさっさと拘束魔術をかける。

「ルーリ様は言葉では言い尽くせないほどにお美しい御方ですが…貴女もなかなかの美貌をお持ちではありませんか〜!キスくらいしても、罰は当たりませんよねぇ?」

クロネはそう言うと、わざわざ口紅を出して自分の唇に塗る。そして、動けなくなったサキュバスに迫る。

「んっ……」

魔国のサキュバスにキスをするクロネ。

本当にルーリ様に色々教わったのね。

「っ…そなたが仕えているサキュバスというのは……」

彼女はルーリに興味を持ったが、その先を言うことは出来なかった。クロネに口付けされたサキュバスの身体は石化し、瞬く間に崩れ落ちて砂に変わると、そのまま消え去ったのだ。

「『石化』の口紅。ルーリ様おすすめのマジックアイテムでございます~」

おすすめされても困るが。

マヤリィは黙ったまま、クロネを見る。

「いかがですか~?マヤリィ様。キスをして生き返るのではなく、キスをして息絶えるおとぎ話。魔国にはお似合いですよね〜?」

マヤリィの視線に構わず、クロネは一人で喋り続ける。

「私…マヤリィ様とキス…してみたいですな……」

一瞬、ネクロが真面目な顔になる。

「ネクロ……?」

かと思えばクロネの口調に戻り、

「生きてる間は全然私の部屋になんか来て下さいませんでしたもの〜。最期は、このネクロのキスで、消えて下さいませ」

そう言いながら、再び口紅を塗る。

ネクロの瞳と同じ、藍色の口紅。恐らく、先程とは違う魔術がかけられているのだろう。

「さぁ、マヤリィ様ぁ……!」

「ネクロ!やめて!!」

マヤリィは咄嗟に顔を背ける。気付かなかったが、既に『死霊使役』は解かれていた。

しかし、動くことが出来たせいでネクロの口紅はマヤリィの唇ではなく頬に付く。

「きゃあああ!!!」

口紅が付着した頬に激しい痛みを感じる。

「これは『腐食』の口紅。…あまり抵抗なさいますと、身体が腐り落ちた末に死ぬことになりますぞ?…ああ、もう死んでるんでしたねぇ!」

「っ……ネクロ……」

「何でございましょうか?マヤリィ様」

「貴女は…私のこと……」

『腐食』が首にまで広がってきている。

「…私はマヤリィ様のことが好きでした。でもそれはもはや過去のこと。今の私は流転の國、そしてルーリ様の御為にネクロマンサーとしての役割を果たすまでにございます!!」

そして、マジックアイテムを掲げる。

「『死霊使役』!!」

再び彼女は操り人形になる。

「マヤリィ様。これにて、ネクロは失礼致します。…永遠に」

そう言うと、クロネは今度こそマヤリィの唇にキスをする。彼女の身体が崩れ始める。

しかし、その様子を最後まで見ていることは出来なかった。


「…では『魔国』の崩壊に巻き込まれる前に流転の國へ帰還するとしましょう」

あれからどんな禁術を連発したのかはクロネにしか分からない。分かっているのは、あの本に書かれていた恐ろしい魔国が、たった一人の黒魔術師によって滅ぼされたという事実だけだった。

名もなき魔国のサキュバス。

ルーリに会わせてみたかった…。


じゃなくて、今度こそ確実にマヤリィは死にました。

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