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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第43話

さぁ、参りましょうか〜。

……貴女の帰るべき国を壊しに。

「私は…これからどうなるのかしら」

裁判長に判決を言い渡されるのを待つ被告人のような顔でマヤリィが聞く。

「さぁ?魔国へ行って悪魔と契約してそれが破れた後のことは存じ上げませんね〜」

あくまでもクロネのネクロ。

「まぁ、少なくとも今の貴女は死霊と呼ばれる存在です〜。この私の魔力が効いているのですから〜」

マヤリィは拘束されているわけでもなく、怪我を負って動けないわけでもない。

ただ『死霊使役』という魔術をかけられているだけだ。生者ならば当然効かない魔術である。

「そういえば…貴女、顔立ちも変わってる…」

「今さらですか〜?」

クロネの姿は、元々桜色の都に潜入する為にルーリが作り出したもの。マヤリィにそっくりなままというわけにはいかない。

「『変化』を続けるには大量の魔力が必要になるはず。…貴女はなぜその姿のままで、禁術を連続発動出来たの?」

「宙色の大魔術師であられた御方の言葉とは思えませんねぇ…」

クロネは笑顔で、

「単純に、魔力値が高いだけです〜」

「なっ……何ですって?」

マヤリィは驚く。そういえば、今のネクロは青い靄の杖を持っていない。もしや彼女の魔力に耐えられなくなったのだろうか?

「私が以前マヤリィ様から賜った杖は壊れてしまいましたから、自分でマジックアイテムを作るより他ありませんでした〜。そこで、魔術の訓練も兼ねて適当に魔力を込めてたら突然変異的に出来ちゃったのが、この『鉄壁の細枝』でございます〜」

「…細枝とは失礼な。もっとマシな名前はなかったのか?」

先程、地獄の底から響くような声で悪魔を脅していた細い杖がクロネに抗議する。

今はいたって普通の青年の声である。

「いいじゃないですか〜。細いわりに全然壊れそうもないから『鉄壁』って言葉をつけてあげたんだし〜」

「お陰でルーリに鉄壁のネクロマンサーなんて二つ名をつけられたんだっけな」

よく喋るマジックアイテムである。

「ご主人様を呼び捨てにするマジックアイテムなんて貴方くらいですよぉ。もっと敬意を表して下さいませ〜」

「だって、実力はお前と同じくらいだろ?」

その言葉をマヤリィは聞き逃さなかった。

「ルーリとネクロの実力が同じ…?」

流転の國最強の魔力を持っているのはルーリのはずだった。以前取り上げた『魅惑』の魔力は返したし、先程の『閃光』だって、全然衰えているようには見えなかった。

「まぁ、それは置いときまして〜」

ネクロはようやく本題に戻る。

「貴女、これからどうします〜?」

「どうって…こっちが聞きたいわ」

「そうですか〜。困りましたね〜。私も分からないんですよね〜」

あくまでもクロネのネクロ。

「例えば、ここで貴女を傷付けてみたら、どうなるんでしょうか〜?…そう、そこに転がっている拳銃とやらで貴女を撃ってみたら、どうなるんでしょうか〜?」

ネクロは殺気をあらわにする。

彼女には今も皆の安否が分からない。

目の前の死霊に仲間を殺されたかもしれないという最悪の可能性から目を背けたくても、考えずにはいられない。絶対に許さない。

「貴女は私の帰る國を壊そうとしている。ならば、私も貴女の帰るべき国を壊すまで」

そう言うと『長距離転移』を発動する為の魔法陣を展開する。

「どこへ行くと言うの!?」

「そりゃあ『魔国』に決まってるじゃないですか〜。貴女を銃なんかで傷付けてみた所で、面白くもなんともないですし、せっかくの機会ですから魔国と一緒に心中して下さいませ〜。天界も滅びたことですもの〜。天使だけではなく悪魔だって消え去ってしまえば良いと私は思います〜」

自分も悪魔だが、魔国には縁もゆかりもない。

「さぁ、参りましょ〜!マヤリィ様〜!」

とても可愛らしい姿で、とても恐ろしいことをしようとしているネクロver.クロネ。

『死霊使役』を発動したまま『長距離転移』の魔法陣にマヤリィを巻き込む。


あの日、衣装部屋で彼女を想って泣いた。

優しいマヤリィ様に会いたかった。

そのうちに青い靄の杖まで壊れてしまった。

哀しかった。恋しかった。

………なのに。

待っていたのは最悪の再会だった。


「貴女と戦いたくはありませんでしたな」

鉄壁のネクロマンサー。最恐の黒魔術師。

『変化』は解かない。しかし、その表情は凍り付いたように冷たく、藍色の瞳はマヤリィを射抜くように鋭く光っていた。

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