第40話
気付けば、ミノリを拘束していた雷の鎖は消えている。
「こういうの、やってみたかったのよね」
羅針盤から両手に拳銃を受け取る、ミノリの姿をしたマヤリィ。
「さぁ、まずは城を破壊するとしましょうか。皆、ここからは脱出ゲームよ」
そう言って高笑いしながら、ミノリはユキに銃口を向ける。
思わずユキは目を瞑る。銃声が鳴り響く。
「………?」
恐る恐る目を開けると、そこには、ユキを庇って胸を貫かれたバイオの姿があった。
「バイオ!!」
ユキが傍に駆け寄る。
バイオの胸から血が流れている。
すかさずシロマが叫ぶ。
「『全回復』!!」
しかし、届かない。
シロマが立っている床も崩れ始める。
「マヤリィ様!!やめて下さい!!」
ルーリが叫ぶ。
マヤリィは『飛行』しながら城が崩壊していく様を見ている。
「突然現れた流転の國は突然消える。…これでいいじゃないの。正しいことだわ」
マヤリィは床を撃ち抜く。
「きゃあぁぁ!!」
バイオを抱き抱えたユキが悲鳴を上げる。
足場を失ったシロマは崩れた壁に掴まり、なんとか這い上がろうとしていたが、マヤリィはその手を撃つ。
「シロマ!!」
掴まる力を失くして落下するシロマを見て、ルーリが叫ぶ。手を伸ばそうにも、ここからではとても届かない。
「こんな時に他人の心配?」
マヤリィがまだ崩れていない床に降りて、ルーリに銃口を向ける。
「貴女も一緒にあちら側へ行きましょう?それには、死なないといけないのだけれど」
ルーリは『流転の閃光』を発動させる。
「仲間を見捨てるわけには参りません!」
「では、私を見捨てるというのね?」
マヤリィはミノリの姿で、ミノリの声で、ルーリを追い詰めていく。
「残念ね、ルーリ」
マヤリィは至近距離から発砲しようとする。
その時、身体が黒い靄に包まれる。
「『死霊使役』」
マヤリィの動きが止まる。ルーリに集中していたせいで気付くのが遅れてしまった。
「ご主人様、やっぱりクロネは帰ってきてしまいました~。皆を置いて、私だけ逃げるなんて、そんなこと出来るわけがないじゃないですか~!もう!!」
クロネが発動した魔術は禁術っぽく見えるが、ネクロマンサーにしてみれば基本中の基本である。
「貴女……!!」
クロネの魔術によって、マヤリィは動きを止められ、同時に『変化』も解ける。
外見だけは生前と変わらないマヤリィが姿を現す。
「やっぱり私の頭の中に話しかけてきたのはマヤリィ様だったのですね~。でも、困ります。私の帰る場所を壊さないで下さいませ~」
ネクロver.クロネ。
藍色の縦ロールの髪にミニ丈のメイド服を着て、戦力になりそうもない細い杖を手に持っているが、その魔力は果てしない。
マヤリィは呆気に取られている。先程まで自分も変化というかミノリの身体に乗り移っていたというのに、ネクロの『変化』には思考が追いつかない。
「貴女様が私を見つける前に私が貴女様を見つけてしまいましたね~。それもこれも貴女様の眷属であるこの子達のお陰です~」
そう言ってクロネが指を鳴らすと、大量の蝙蝠の死体が現れる。
「正直、貴女様の位置を魔力探知で特定するのは難しかったです~。それでこの子達に案内してもらったのですが、もういいですよね~?…『死霊使役』発動。マヤリィ様を拘束しなさい!!」
どこまでもクロネを貫くらしい。
ネクロマンサーの本領を発揮して、クロネは大量の蝙蝠の死体を操る。マヤリィは動けなくなったまま、蝙蝠に囲まれる。
「私、気付いたんです~」
クロネが言う。
「貴女様が悪魔と契約した『死霊』になられているのなら、私の力で操られて下さるのではないかと思いまして。…怖がるほどのことではございませんでしたね~」
「ネクロ…よく戻ってきてくれた…」
「ご主人様、念話をありがとうございました。お陰で対策を考えることが出来ました~」
今のマヤリィは黄泉の国の住人ではなく、魔国で悪魔と契約した死霊。冷静になって考えたネクロは『死霊使役』でマヤリィを操ることを決め、流転の國に帰ってきたのだった。
形勢逆転。
ネクロはこれからどうすべきかを考える。
ネクロが持っている「戦力になりそうもない細い杖」は彼女自身が作り出した強力なマジックアイテムです。彼女はそれを『鉄壁の細枝』と名付けました。因みに、喋ります。




