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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第38話

愛し合うシャドーレとダーク。

何もかも忘れて、今は二人だけの時間…。

シャドーレは思いの外、早く回復した。

あの後、ルーリは流転の國に戻り、クロネは引き続きシャドーレとダークの様子を見ることを命じられ、桜色の都に留まった。現段階で国王陛下とダークの間に噂でも立てば、国が揺らぎかねない。貴族達の目は厳しい。

しかし、実際シャドーレとダークは愛し合っている。まだ本調子ではないというのに、身体を重ね合い、二人の時間を愉しんでいる。回復が早かったのはそういう意味で心労から解放されたからなのかもしれないが。

「あんっ…ダーク様ぁ……」

「シャドーレ、挿入(いれ)るぞ……痛くないか?」

「気持ちいいですわ…!ああんっ」

寝室の扉を閉めていても、部屋のすぐ近くに控えているネクロにはその声が届いてしまう。彼女はとても耳が良い。

「んっ……あんっ…」

シャドーレの嬌声が聞こえる。

「ダーク様ぁ…シャドーレは、髪を伸ばした方がよろしいでしょうか…?」

「いや…お前の美しい顔立ちに短い髪は本当に似合っている。…桜色の都の女達の間に短髪を流行らせたいものだな」

ダークはすっかり短髪のシャドーレの虜になっている。

「女性専用の理髪店を作るのはどうだろう?…案外、貴族の娘達も長い髪の手入れに辟易しているかもしれないしな」

「うふふ、確かにそうですわね…」

シャドーレは同志を増やしたい。

「長い髪をバッサリと断ち切った時の解放感は一言では言い表せないほど素晴らしいものでした。それに、バリカンで髪を刈られている時の快感と言ったら…。ダーク様もご存知ですよね!?あっという間に髪が短くなって、じょりじょりとした手触りだけが残る…もう最高ですわ!あの快感を知らないなんて勿体ないと思いますの。…ああ、髪を刈りたくなって参りました!!」

そう言って頬を紅潮させる恋人を見て、ダークも笑顔になる。

バリカン好き女子シャドーレがいくら暴走しても、今では全て受け止めることが出来るようになったダークである。成長したな。

「シャドーレ…濡れまくってるぞ」

「あら…興奮しすぎたかしら。もう一度、挿入て下さいませんか?ダーク様」

もはやシャドーレは雌の顔になっている。

「あ…んっ……ああ…気持ちいいですわ……」

当然のように避妊はしていない。

だから、ある意味、気楽にセックス出来る。

「ああ…やめないで……あんっ…ダーク様ぁ…!」

ダークに勝るとも劣らない性欲をさらけ出して、シャドーレは何度も彼を求めた。

「んっ……愛していますわ…私のダーク様」

「俺もだ、シャドーレ。誰よりもお前を愛してる」

そして二人は熱いキスを交わす。

この日のセックスは夜が更けるまで続いた。

クロネちゃん、本当にご苦労様。


ベッドの中、重なり合って離れない二人。

気付けば、外が明るくなってきた。

シャドーレはゆっくりと起き上がり、時計を見ると、

「…ダーク様、今後のことですが」

一糸纏わぬ姿のまま、真面目な顔で話し始める。

「私は公務に復帰した後、養子を迎えることを皆に提案するつもりですわ。…私の後継者を早いうちから育てたいと思っているのです」

おっと、急展開。クロネは耳を澄ます。

「その際は、魔力値の高い子どもを選ぶ為にも、貴方様に協力をお願いしてもよろしいでしょうか?」

シャドーレに劣るとはいえ、ダークは精鋭黒魔術師部隊の隊長を務めるほどの実力を持っている。

「勿論だ。国王陛下の頼みとあらば、喜んで協力させてもらう」

ダークの力強い言葉に、シャドーレは安心するのだった。


職務に復帰したシャドーレはいつものように仕事に没頭しながらも、タイミングを伺い、その話を皆に提案した。

「確かに、早いうちに後継者を決め、次期国王として育てるというのは良いお考えにございますね」

「さすがは国王陛下。これで桜色の都の将来も安泰というものです」

誰も反対しなかった。桜色の都には、国王の座を巡って貴族達が醜い争いを繰り返してきた歴史があるからだ。ツキヨ王の先祖でさえ元は貴族出身の魔術師だった。

「では、王都に住む子どもの中から私の後継者として相応しい者を探すとしよう」

「はっ!」

シャドーレは魔力値が高い為、妊娠する確率は極めて低い。それに、もう35歳。

自分に子どもが出来ないのは寂しいが、それも仕方がないと思っている。


それでも、ダークとの関係は続いている。

子どもを望んでいるわけではない。

ただ、一人の女に戻りたい時があるだけだ。

…それも頻繁に。

「シャドーレ、理髪室に行ったんだな」

「ええ。気付いて下さるのは貴方だけですわ」

シャドーレは嬉しそうに笑う。

「やはり、お前には短い髪がよく似合う」

ダークはシャドーレの頭をくしゃくしゃと撫で回し、うなじにキスをした。

そして、シャドーレを仰向きに寝かせ、股を大きく開くと、クリトリスを舐め始め、そのまま中まで舌を入れる。

恥ずかしいポーズをさせられてシャドーレは頬を染めるが、恋人に愛撫されるがままになっている。

愛液があふれる。そろそろ挿入て欲しい。

「ダーク様…私の中に入ってきて下さいませ」

「ああ。今、挿入るからな…!」

「…あんっ……んっ……」

シャドーレは喘ぐ。

「ああんっ…気持ちいい……もっと私の奥深くへ…」

蕩けそうな表情でシャドーレは快感に浸る。

威厳ある国王陛下の面影はどこにもない。

そこにいるのは、ただの雌と雄。それだけ。


一方、寝室の外では。

《こちらクロネ。ルーリ様…私はいつまで陛下を見守っていれば良いのでしょう~?そろそろ帰りたいです~。もう大丈夫そうですよ~》

相変わらずの調子でシャドーレの様子を見守っているクロネが疲れた声でルーリに念話を送る。

しかし、すぐに返事が来ない。

(ご主人様…?)

ネクロが不思議に思って、もう一度念話を送ろうとした瞬間、

《こちらルーリ。ネクロ、緊急事態だ。今は戻ってくるな。不穏な気配を感じたらすぐにシールドを張れ。とにかく、今はダメだ!安全を確保しろ!!》

今までになく切迫したルーリの声。

《ご主人様!?流転の國に何が起きているのでございますか?…ルーリ様!!》

しかし、それきり念話は途絶えた。

(今のルーリ様のご様子…尋常ではない…)

ネクロは考える。緊急事態とは一体…?

(突然の話だった。急に何者かが流転の國を襲撃し始めた?…まさかそのようなことは…)

その時、ルーリが言った「不穏な気配」という言葉を思い出す。

今まさにそれが近付いて来ている気がする。

「『シールド』!!」

直後、窓の外を蝙蝠が飛んでいく。

突然、頭の中に声が響く。

普通の念話とは趣きが違う。

聞き覚えのある声が脳内に響き渡る。

《《《ネクロ、会いたいわ。どこにいるのかしら?必ず見つけ出すから、待っていて頂戴》》》

(マヤリィ様……!!)

ネクロの頭の中に直接話しかけてきたその声は、紛れもなくマヤリィのものだった。

(まさか、マヤリィ様は魔国に……)

ネクロマンサーにとっては、ミノリが読んだあの本に書いてあることは一般常識だ。

(まだ、未練があるとおっしゃるのですか……!?)

いつになく取り乱した様子のルーリの声を思い出す。皆は無事なのだろうか…?

(マヤリィ様、私には、貴女様をお救い申し上げることは出来ないのでしょうか…?)

シールドを張ったまま、窓の外を見上げる。

もう蝙蝠の姿はない。

(マヤリィ様……)

魔国で契約を交わせば甦ることも出来る。

しかし、それは悪魔との契約。


さらなる悲劇の幕開けに、今のネクロは為す術なくその場に立ち尽くす。

皆の無事を祈りながら。

今さらながら、ネクロの名前の由来が雑すぎる。

『変化』後のネーミングも雑すぎる。

一体誰が考えたんだか。

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