第36話
流転の國に戻ったシロマは短時間でルーリに今の状況を報告します。
そして、クロネの念話を受けた後、ルーリはシャドーレの元へ転移するのでした。
「クロネ、ご苦労だった」
「はい。勿体ないお言葉です~」
クロネの念話ですぐにルーリは姿を現した。
「今は…眠っているのか…」
「かなりお疲れのご様子でございますね~」
「そうだな…。ていうか、いつまでそれを続けるつもりだ?」
「ここにいる間はクロネを貫いた方が良いのではないかと思いましてな。…それに、ようやくこのキャラにも慣れてきましたし~」
今日のネクロはなんだか楽しそうだ。
縦ロールの長い髪を指に巻き付けては、物珍しそうに弄っている。元がショートヘアだから、不思議な感覚なのかもしれない。
「メイド服も意外としっくりきました~。これからは隠遁のローブの下にメイド服を着るというのも良いですね~」
「…今は非常事態だが、お前が楽しそうで良かったよ」
ルーリは、高い声で間延びした甘ったるい喋り方をするクロネを見ながら呟く。
「それにしても、流転の國の主たる私がこうも頻繁に、しかも極秘に桜色の都を訪れるというのは、良くないことかもしれないな…」
マヤリィが流転の國の主であった時、彼女が國を離れたのは三回。そのうちの一回は魅惑の死神と共犯で、バイオの仇に天誅を下した時なのだが。それ以外は正式訪問である。
「私は流転の國の主に向いていないのかな」
「そんなことないですよ~、ルーリ様はマヤリィ様から直々に指名された御方ですもの~」
独り言のつもりがクロネにフォローされる。
どうも調子が狂う。
(あまり時間がかかるとヤバいな…)
シャドーレが目覚める前に王宮の者が来たら今度はルーリが『透明化』しなければならなくなる。
ルーリはシャドーレの身体については、怪我や呪いの類いではなく、過労という診断が出たのである意味安心していたが、問題はダークがシャドーレのことを思い出した点にあった。しかも、シロマの報告では、シャドーレはそのことを嬉しく思っているらしい。
(国王陛下と『クロス』の隊長が結婚…とかになるのか?)
ルーリはそこまで考えていた。
(でも、それはそれで良い…ことなのか?)
クロネは救護室の鏡で『変化』した姿を見て楽しんでいるようだし、ルーリは一人で考え続けるより他なかった。…しかし、クロネがヘアアレンジを始めた時はさすがに止めた。
「だって、暇じゃないですか~」
「後でいくらでもやってやるから、今は大人しく座ってろ」
「はい。畏まりました~、ご主人様」
クロネは大人しくルーリの隣に座る。
二人はしばらく無言でシャドーレを見守る。
「……あら…?ルーリ…?」
「シャドーレ、大丈夫か?」
「…それに…えっと…」
『変化』した時の名前が出てこない。
「国王陛下、クロネにございます~。非常事態とのことでしたので流転の國から飛んで参りました~」
「こら、名前を出すなと言っただろうが」
今、ここで「流転の國」の名を出してはいけない。誰かが聞いていないとも限らない。
「申し訳ないです、ご主人様」
棒読み。
絶対こいつ反省してないな。
ルーリは頭を抱えつつ、シャドーレを見る。
顔色は悪いが、とりあえずは平気そうだ。
「シャドーレ、疲れている時に悪いが、ダーク隊長がお前のことを思い出したとか…」
「っ…!シロマ様に聞いたのね?」
シャドーレは頬を染めて、
「そうなの。ダーク様は…私のことを思い出して下さったのですわ」
嬉しそうに言う。威厳ある国王陛下の顔などどこへやら、完全に女の顔になっている。
「…まぁ、しばらくは配下達も気付かないだろうが、お前が女として恋をしていると分かれば、黙っていない連中がいるだろう?それだけは気をつけろよ?お前は我が國にとって大切な存在であり、今でも私達の仲間だと思っている。…これ以上、傷付いて欲しくないというのが私の本音だ」
ルーリは魔力事故で急死したというミノリ嬢のことを思い出す。詳細は知らないが、本当に可哀想なことだったと思う。
「ええ、そうね。気をつけなくてはいけないわね。…ありがとう、ルーリ」
シャドーレはそう言ってからクロネの視線に気付き、
「ク、クロネさん…飛んで来て下さってありがとう…。今日も…メイド服ですのね」
「はい。先程、ダーク様に陛下をお守りするよう言われましてございます~。ルーリ様は王宮の者が来たらお帰りになられますが、私はメイドとしてしばらく貴女様の傍におりますので、どうかご心配なく~」
「ありがとう…心強いわ…」
どうも調子が狂う。
(ご本人が楽しそうだから良いのだけれど…)
シャドーレはクロネの『変化』とキャラ変に戸惑いつつも、こうしてルーリが来てくれたことを嬉しく思うのだった。
本当の意味で再会したシャドーレとダーク。
この先、二人はどうなるのでしょうか…?




