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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第35話

シロマが『転移』する際に使ったのは、マヤリィが遺した宝玉です。

いまだに『転移』を使うことの出来ない者は、マヤリィの宝玉に頼っています。

「…シロマ様……?なぜこちらに……」

目を覚ましたシャドーレは、ベッドの傍らに控えていたシロマに声をかける。

その場にダークはいない。

シロマに言われた通り、救護室の入口で待機している。

「ネクロ様は常に魔力探知を行っていらっしゃる御方です。その為、シャドーレ様の魔力が途絶えたことに気付き、貴女様の身に何か起きたのではないかとご主人様が推測して、念の為に私が参上致しました」

シロマが淡々と説明する。

「強い精神的ショックに激務が重なり、貴女様のお身体は限界を超えてしまったのでしょう。しばらく休養された方がよろしいかと」

微笑みもせず、シロマが言う。

「流転の國の方々にまでご心配をおかけして、大変申し訳なく思います。されど、私には仕事が残っております」

そう言ってベッドから起き上がろうとする。

しかし、思うように身体が動かない。

「クロスの隊長殿によれば、今週のお仕事は全て終了しているとのことですね。それならばなおのこと、今はお身体を回復することに専念した方がよろしいかと存じます」

シロマはそう言って頭を下げる。

「ありがとうございます、シロマ様」

シャドーレは起き上がるのを諦めて、再び横になる。

シロマはひとまず安心して、ダークを呼ぶ。

「陛下は心労に加えて度重なる激務の…」

「シャドーレ!!」

シロマの説明を遮り、ダークは叫ぶ。

「俺は全て思い出した…!」

そう言って、シャドーレを抱きしめる。

「ダーク様…!」

その言葉にシャドーレは困惑するが、自分を思い出してくれて嬉しい気持ちの方が強い。

「俺が記憶を失っている間に、帰ってきてくれていたんだな…。しかも、まさか国王とは」

「ツキヨ様直々のご命令ゆえ、とうとうお断りすることが出来ませんでした。…ダーク様、お会い出来て嬉しく思いますわ」

すっかり素のシャドーレに戻って、ダークの抱擁を受け入れる。

「コホン。…私は長居するわけには参りませんので、これにて失礼致します。我が主に貴女様のご容態についてご報告致しますことをお許し下さいませ。…それでは」

二人の話にこれ以上付き合っていられないシロマは、事務的な挨拶を済ませるとすぐに救護室を出ていった。

シャドーレのことで頭がいっぱいのダークにはシロマが言った「我が主」について考える余裕などない。

「シャドーレ、お前は昔から努力家だったが、今回ばかりは無理をしすぎたんだよ。…俺が王宮の中枢に話をつける。お前は何も心配せず、今は身体を休めることだけを考えろ」

「ダーク様…あの時の…お手紙…」

「分かってる。もう、ここへ戻ってこられないと思って、俺のことを心配して、あのような手紙を寄越したんだろう?…全部分かってる」

記憶の戻ったダークは何もかもを自分の都合のいいように解釈している。シャドーレも、記憶の戻ったダークが自分のことを恨んでなくてよかったと安堵する。

「ダーク様…!」

「シャドーレ…!」

二人は久々のキスを交わす。

シャドーレは嬉しそうに頬を染めてから、少し真面目な顔に戻って、

「先程の白魔術師の方に、しばらくの間は回復に専念するよう言われました。事実、今は身体が思うように動かないのです。その旨を皆に説明し、私からの命令を伝えて頂きたいのですが、お願い出来ますか?」

「ああ、勿論だ。最近は『クロス』の任務も前ほど忙しくはないし、しばらくシャドーレの傍にいられると思う」

「ありがとうございます、ダーク様。よろしくお願い致します」

シャドーレは再び意識が遠くなっていくのを感じた。

「…眠ってしまったか。やはり、よほど疲れているんだな…」

ダークはシャドーレの髪を優しく撫でる。

「…さて、この場はメイドにでも任せて、俺は報告に行かなければ」

救護室を出て、メイドを探していると、タイミング良く通りかかった者がいた。

「あら、どうなさったのですか〜?」

藍色の長い髪を縦ロールにしたメイドが、救護室の前に立っているダークに声をかける。

藍色の瞳がダークに説明を求めている。

「…つまり、こういうことでだな…。俺はこれから少しこの場を離れるから、その間、陛下を見守っていてくれるか?」

ダークはシャドーレの容態について話す。

「はい、畏まりました〜。お任せ下さいませ」

独特の甘ったるい声をしているが、なかなかベテランのメイドのようだとダークは思う。そして何より美しい。

「では、頼む」

「はい。行ってらっしゃいませ〜」

メイドは美しい所作でお辞儀をする。

そして、ダークの姿が見えなくなった所で、救護室に入る。

「シャドーレ様…。これはまた、随分と無理をなされたのですな…」

そう呟くと、念話を送る。

《こちらクロネにございます~。ご主人様、シャドーレ様がいらっしゃる救護室に到着致しました~》

マヤリィが倒れた時もそうでしたが、白魔術で「疲労」を緩和することは難しいようです。

魔術によって生じた怪我には『全回復』は有効ですが、マヤリィの「過労」や「双極性障害」を治すことは出来ませんでした。

『完全治癒魔術』など、最上位の白魔術も存在しますが、万能というわけではありません。

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