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流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜  作者: 川口冬至夜


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第30話

流転の國と桜色の都の首脳会談。

時々、ネクロ。

あの悲劇が起きてから何度目の会談になるだろうか。

桜色の都でルーリとシャドーレが対面する。

「それでは…原因不明と結論付けるしかないのでしょうか…」

「はい。時間経過と共に、原因の特定は難しくなってきています。流転の國の力をお借りしても謎が解明されないのならば、私達に出来ることはもう残されていないでしょう」

シャドーレは流転の國の分析力を頼りにしていた。桜色の都の専門家には特定出来なくとも、流転の國がきっと解決してくれると。

実際、滅ぼされた集落に関して大規模な調査が行われた。流転の國からは、書物に詳しいミノリとその助手としてユキが現地を訪れ、調査にあたった。桜色の都の学者や専門家も各地から集まってきて、色々な仮説を立てては話し合いを重ねた。

しかし、結局はなぜ異種族が狙われたのかということも、これが何者の仕業であるかということも、何一つ分からなかった。

人間至上主義を掲げる過激派組織の犯行ではないかという見方が有力だが、その足取りが掴めないどころか、集落が攻撃されている場面を目撃した者さえ出てこない為、結局は謎に包まれたままだった。

「天界を滅ぼしたのも同一犯だとするなら、相当の戦力を持っているはずです。…今の所、我々人間が標的にされたという情報はありませんが『クロス』を始めとする都の防衛部隊は緊張感を高めています」

「人間至上主義を掲げる国家や、団体などにお心当たりはございませんか…?我が國の東側に位置する地域についても調べさせましたが、広大な砂漠が広がるのみでした」

流転の國の西には桜色の都。東には果てしなく広がる砂漠。よく分からない気候だ。

「残念ながら、そのような国家や組織については聞いたことがございません。…桜色の都の西側にも砂漠はございます。その果てに何かが存在するのでしょうか…?」

桜色の都の東には流転の國。西には果てしなく広がる砂漠。よく分からない気候だ。

「…そこまでは、我が國の書物には記載がございませんでした。現段階では、謎の組織と呼ぶより他はないでしょう」

ルーリは真面目な顔で言う。

しかし、実際、今回の悲劇を起こしたのは謎の組織などではない。黄泉の国から来た漆黒の殺戮者マヤリィの単独犯である。…が、そんなことは言えない。

流転の國の皆もそれを分かった上で、桜色の都の調査に全面協力する形を取っている。

全ては流転の國の為。シャドーレを騙すのは心苦しいが、彼女が自分自身の記憶を消してしまった以上、こうするしかない。シャドーレが自らに『忘却』魔術をかけずに協力してくれれば、ここまで大がかりな作戦は立てずとも良かったのだが。

今さら言っても仕方のないことだ。

「謎の組織、ですか…」

シャドーレは頭を抱える。

「亡くなられた異種族の方々には申し訳ない限りですが、こうなった以上は、その謎の組織が人間至上主義のままであって欲しいと願わずにはいられません」

それは当然だ。現在の桜色の都の国民は全て人間種なのだから。

「…陛下」

ルーリが改まって呼ぶ。

「此度の調査においては原因不明の襲撃という結論を出すしかないと存じます。その上で、人間至上主義を掲げる強大な力を持った謎の組織が存在する可能性があるとの記録を残しておきましょう」

ルーリはミノリが作成したもっともらしい調査報告書の最後に、今の言葉を記す。

「ありがとうございます。貴女様方のお陰で、隅々まで調べることが出来ました。原因不明と結論付けるに足る報告書も沢山上がってきておりますし、これ以上この件を長引かせて国民を不安がらせるのも本意ではありませんので、これにて調査を終了したいと思います」

シャドーレはそう言い切って、ルーリに手渡された報告書にサインをする。


「…ところで、ルーリは大丈夫なの?貴女は人間ではないのでしょう?」

貴賓室でコーヒーを飲みながら話している最中、シャドーレが今気付いたように聞く。

「その質問、今さら過ぎないか?確かに私は悪魔だが、これでもマヤリィ様から流転の國一番の実力を持っているとのお言葉を頂戴している。だから大丈夫だ」

ルーリはシャドーレの質問を巧みにかわす。

「そうよね、ルーリは魅惑の死神だものね。いくら相手が強くたって負けるわけないわ」

シャドーレは安心してくれたようだ。

「女神の顔をした死神…っていう二つ名もなかったかしら?」

「今は閃光の大魔術師という異名もとっておりますぞ」

突然、ネクロが現れる。

「なんだ、ここにいたのか…」

ネクロが来ることは分かっていたが、どこに現れるかまでは聞いていなかった。

「ネクロ様…いつからいらしたの?」

「貴女様方がここにお入りになる前から待機しておりましたぞ。『透明化』を解くタイミングを逃してしまいましてな…」

「お前はいつもそれだ」

ルーリは頭を抱えつつ、笑ってしまう。

「『透明化』する上に気配まで完全に消すから探そうにも探せないんだよ」

「ネクロ様の得意技というわけですわね」

そう言ってシャドーレも笑うが、

「…ネクロ様が狙われたら困りますわ」

目の前の黒魔術師もまた人間ではないことに気付き、シャドーレが心配そうな顔になる。

「シャドーレ様、私も人間ではございませんがご安心下され。このネクロを滅ぼそうと企む者など、返り討ちに致しますゆえ」

「確かにな…ネクロに勝てる奴はいないだろうよ。最上位の黒魔術師にして鉄壁のネクロマンサー。…死にたい奴がいたら紹介してくれ。後でこいつが有効活用するから」

ルーリが笑う。

「い、いえ…いないと思うから、大丈夫よ…」

シャドーレに死神ジョークは通じない。

(もしかして私、今すごく怖い方々と一緒にいるのではないかしら…)

シャドーレさん、今さら過ぎるよ。

「ルーリ様、シャドーレ様は普通の人間であられますから、あまり過激な発言はなさらないで下さいませ」

シャドーレの笑顔が引きつっているのを見てネクロが言う。

「ごめんごめん、つい…」

「つい…ではございませんぞ、ご主人様」

最近の二人はいつもこんな感じらしい。

シャドーレは流転の國が懐かしくなる。

(でも、マヤリィ様はもうどこにもいらっしゃらない…)

と、そこへノックの音。

「失礼致します、陛下。コーヒーのおかわりをお持ち致しました」

先程コーヒーを運んできたメイドとは違う娘の登場にルーリは少し驚く。初めて見る顔だ。メイド服ではないし、新しい配下かな。

「陛下…!こちらの御方が流転の國の主様でいらっしゃいますか…?」

「そうか…お前は初めて会うのだったな」

シャドーレが言う。

「はい!流転の國の主様、お目にかかれて光栄にございます。私は国王陛下の側近を務めさせて頂いております、ミノリ・アルバと申します。よろしくお願い申し上げます」

一瞬、ルーリは横目でシャドーレを見ると、流転の國の気品ある主の顔になり、

「初めまして。いかにも、私は流転の國の主。名をルーリと申します。…貴女のような可愛らしい側近をお持ちのシャドーレ様が羨ましいわ。今後とも、よろしくお願いしますね」

ルーリは女神のような微笑みをたたえて、桜色の都のミノリに挨拶する。

その気品あふれる美しさと優美な佇まい、麗しいドレス姿にミノリは魅了される。

「はっ!…ルーリ様とおっしゃるのですね…!本日はお越し下さり、感謝申し上げます!どうぞごゆっくりとお過ごし下さいませ」

(ルーリ様は魔術なしでも人を『魅惑』にかけることが出来ますな…)

絶賛『透明化』中のネクロが目の前の光景を見ながら、人知れず微笑んでいる。

(ネクロ様ったら…また消えてるわ…)

シャドーレもそろそろ慣れてきている。

「ありがとう、ミノリさん。…では、もう少しお話していこうかしら。ねぇ、陛下?」

優しい声で誘われ、シャドーレは頷く。

「ミノリ、ご苦労だった。…下がれ」

「はっ!」

ミノリはドキドキしながら貴賓室を出る。

(美しい御方…流転の國のルーリ様…)

しっかりと顔を覚えた。

「私にまで魅惑をかけないで頂戴、ルーリ!」

ルーリの気品あふれるよそゆき顔と優美な言葉遣いにすっかり魅了されたシャドーレは、ミノリが貴賓室を出るなり、抗議する。

「落ち着け、シャドーレ。魅惑なんて使ってないってば」

「それなら…どうしてこんなに私をドキドキさせるの?貴女って人は!!」

シャドーレは余計興奮する。そして、勢い余ってルーリにキスをするが…

「んっ……」

ルーリは戸惑うこともなく、慣れた手つきでシャドーレの身体を引き寄せ、唇を重ねたまま抱きしめる。

シャドーレの顔が真っ赤になる。

「今夜、泊まっていった方がいいか?」

「っ……!」

(これは…どうしたものですかな)

『透明化』したままのネクロは困っている。

「シャドーレ、とりあえず落ち着け。…お前、ネクロが見ていることを忘れていないか?」

その瞬間を逃さず、ネクロが姿を現す。

「やれやれ。ありがとうございます、ルーリ様。術を解くタイミングを失っておりました」

「ネクロ様…!今の…見てた…?」

「いえ、見ようと思って見ていたわけではございませんが…美女同士のキスシーンはなかなか絵になりますな」

こういうことをさらっと言っちゃうネクロ。

「…ところで、今の側近、お前のお気に入りだろう?」

「なっ…!」

「桜色の都のミノリちゃんか…。可愛い子だね。覚えとくよ」

ルーリが笑う。完全に魅惑の死神に弄ばれているシャドーレだったが、

「…あっ、そうだわ」

突然ネクロを見る。

「ちょっと、いいかしら…」

ネクロは頷く。

(あのお話でございますか…)

あれからよく考えて、ルーリにも相談する気になったらしい。

「急に改まって、どうしたんだ?」

「実は…相談したいことがあるのだけれど」

シャドーレはそう言って、前にネクロに相談した『性転換』魔術の話を始めるのだった。

気品あふれる美しさ。

優雅な立ち居振る舞い。


桜色の都に降臨した女神。

その名はルーリ。

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