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6,本当の医師

「おたけが、きゅうびょう⁉」


 呑兵衛くんから伝えた情報は、衝撃的だった。仲ばーちゃんは、驚きの余り声を失っているようだ。僕たちは大急ぎで、竹のいる場所へ向かう。


 大人のスピードに食らいつきながら、僕は呑兵衛くんに言いかけた。


「でも、あさはあんなに」


 元気そうだったのに、という言葉は続かなかった。本当にそうなのか?僕は竹を、本当に診ていたのだろうか?


 僕はそれきり、無言で向かった。


ーーー


「コホッ、コホッ」


 部屋に入るなり、竹ちゃんの苦しそうな咳が聞こえる。これはまずい。僕の脳裏に「結核」の2文字が思い浮かんだが、急いで振り払う。


 思い込みは、色眼鏡だ。とはいえ、今のところは得体の知れない病気である以上、マスクは必須である。


「くちとはなをおおうのってある?」


「はい」


 事の重大さが分かっているらしく、呑兵衛くんは僕たちにあの布を渡す。手早く結ぶと、僕たちは部屋に突入した。


「於竹……」


 部屋はまるで、お通夜のような雰囲気だった。秀吉とーさんは畳に突っ伏して於竹、於竹と呟き続け、寧々かーさんは号泣している。側に控える小姓たちも、何ともいえない悲しげな顔を浮かべていた。


 竹ちゃんは部屋の中央で、苦しそうに横になっていた。胸を押さえて、咳をする。


「コホッ、コホッ」


 僕は医師だ。でも僕は、何もできなかった。ここには、僕の使う道具が何もなかった。目の前に患者がいるのに。


 もし、石松丸くんがここにいたら、一体なんて言うんだろう。


 僕はずっと、石松丸くんの「演技」をしていただけだった。それで、良いのかな?それで、医師の本領を発揮せず、患者を見殺しにして良いのか?


 僕は、医師免許の取得の際に言った、ジュネーブ宣言の一項目を思い出す。


「I will not permit considerations of age, disease or disability, creed, ethnic origin, gender, nationality, political affiliation, race, sexual orientation, social standing or any other factor to intervene between my duty and my patient」


「僕は、年齢、病気や障害、信条、民族の出身、性別、国籍、政治的な立場、人種、性的指向、社会的地位、その他の要素の遠慮を、僕の職務と患者の間に介入させません」


 僕は決断した。僕は、時代も何もかもが止めようとしても、僕は僕の職務を全うする。


 僕は、悲哀に満ちた両親の方を向き、こう言った。


「父上、母上、大事なお話がございます」


 僕の豹変ぶりで、2人は正気に戻った。


「「於石……」」


 僕は2人に一礼し、別室で話すことを勧めた。


 僕は、全てを告白し、両親の協力を仰ぐことにしたのだ。

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