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漢の戦いという名の倫理的問題

私ごとですが、歳上なのに歳下みたいな性格の家族がいます。可愛いです。

 楽しいことには、いずれ終わりが訪れる。ゲームのクリア、漫画の読破、恋愛が失恋に変わる瞬間。


 だが人生とはそんなことの連続だ。楽しい事があればこそ、次に訪れる試練の時に耐える事ができるのだ。

 先ほどまでの酒宴もそう。エファちゃんも、ガウスさんも、シャエルさんもリスタさんも。


 勿論俺も。みんな、確かに笑っていた。


 だからこそ、俺も試練に耐えるだけのエネルギーを蓄えた、そう思える。


 "でもさぁ、神様。こんな試練は与えなくていいじゃない"


 俺は、自身の寝室で真剣に神に祈った。俺にとって、ある意味、最大の試練が訪れていたのだ。


「エファちゃん。どうしても言うことを聞いてくれないのかな?」


「はい。いやです!」


 そっかー、"はい"と"いや"って両立出来るんだぁ。なんて、現実逃避しそうになる思考を必死に手繰りよせながら、俺は現実を直視する。

 あぁ、エファちゃんのいやですには⭐︎がつくのだろう。ニッコニコだ。

 

 ニッコニコであるが故に、俺は恐怖する。


 なぜか。それは彼女の要望が


『あ、キョウヤさん、もうお休みになるんですか?なら、私もご一緒します!寝るまでお話ししましょう!』


 ……要は一緒に寝たいと言い出したからだ。


 最大の試練、それは理性


 ではなく、そこに至る前の問題


 ――――世間体(ロリコンぎわく)である


 これは、理性云々の前に、人としての倫理を問われる戦いなのだ。それ故、負けるわけにはいかない。俺はエファちゃんの目を見て、しっかりと否定の言葉を紡ぐ。


「流石に一緒に寝るのはマズイと思うよ?」


「え?だってこの間……」


 "ねぇ、それは事故じゃん!?事故みたいなものじゃん!!"


 そう叫びたくなるものの、アレは寝落ちした俺が完全に悪いため叫ぶわけにもいかず。


 貴様はすでに負けていた。事故とはいえ負けていたのだ!という頭の中に現れる謎の声を否定しつつ、この年頃のお嬢さんをいかに自室に返すかに頭を悩ませる。


「それはほら、お互い寝落ちしちゃった時の事でしょ?今回のは違うじゃない。男女が同じ部屋で寝るのって流石…に……!?」


「……?」


 言葉に途中で詰まる。え、何が違うんですか?そんな事を目が訴えてくる。やめてくれ、汚れた俺の思考に汚れなき瞳を向けないでくれ!


「……もう。いいじゃないですか。まだ少し、お話がしたいです」


「いや、そうしてあげたいけど。しかし、なぁ……」


 普段過ごす上でも逐一言葉を選んできたというエファちゃんは、余程自由に物を語れるのが嬉しいらしく、まだ元気いっぱい。


 かといって他の三人に言い含めて貰おうにも、あの三人は今は(意識が)この世に居ないため、孤軍奮闘するしかない。


 なにせ、エファちゃんを除く4人は食後もワインを追加で飲んでおり、再来年で成人扱いというエファちゃんはワインを飲めなかったため元気なまま。数年分の鬱憤を晴らすかの如くマシンガントークを繰り広げ。


 ガウスさんは今日の事がよほど嬉しかったようでハイペースでワインを開けていたからか、エファちゃんに付き合っている中ダウン。

 最後の言葉は「……申し訳ありません。お嬢様ぁ」であった。もっとかっこいい時に言ってほしい。


 リスタさんはやはり酒を飲んでも無表情なまま。「そうですか」とか「喜ばしいことです」とか言ってエファちゃんに付き合っていたのだが。

 急に無表情なまま「あはははは」と笑ったかと思うと、電池が切れるようにテーブルに突っ伏した。怖い。


 シャエルさんも途中までは同様である。が、彼女の場合は気がついたら突っ伏していた。表情にでないのだから限界なら教えて欲しいと切実に思う。


 俺はといえば、飲んでいたらエファちゃんが飲んでみたいなぁという視線を向けて来るため少し自重しており、凄惨な目にはあっていなかった。


 とはいえ、すでに眠気は限界。正直すぐにでも寝てしまいたい。


 それに―――


「……ん。わかった。じゃあ、今日だけね。明日からはダメだよ?」


「っ!はいっ」


 俺はどうにも、この子には甘いらしい。

 捨てられた子犬みたいな顔には、どうにもさせたくなかったのである。

 ――――――――――――――――――――

 

 俺はエファちゃんとの接触が最小限になるよう配慮したうえで、ベットに並んで寝そべっていた。

 何がどうなっているのかはわからないにせよ、どこかしら触れてさえいれば能力は発動しないようなので、左手の小指だけちょんとエファちゃんの右手に当たるように触れている。


 しかし、妙に静かだ。あんなに話しましょうオーラを出していたのだからベットに入り次第、マシンガントークが飛んでくるものだと思っていたが、全くそんなこともなく。

 仰向けに並んだまま、しかし、俺から話題を振ることもなく。エファちゃんが話し出すのを待っている。


「……あの、もう寝ちゃいましたか?」

「んー?ん、まだ起きてるよ」


来た。マシンガントークが始まるか?そう思っていたのだが。意外にも、そんなことは全くなく。寧ろ、呟くように。


「……あの。今日は無理言って、すみません」


エファちゃんはそう言った。

俺はなんだかんだ無理を言っている自覚はあったんだな、と苦笑するものの。


「ん、いや。気持ちがわかる、とは口が裂けても言えないけどさ。こんなことでいいなら、別にいいよ」


 そう返す。だって、いいじゃないか、これくらい。全然なんの負担にもならない無理だ。話し相手になってあげて、一緒の時間を過ごしただけなのだから。

 正直、色々と人生で悩んでいた俺にとってもここに来たのは良い経験となっているし。

 

 それに、ガウスさんたちが最初からよくしてくれたことだって、エファちゃんの能力で俺を呼んでしまった事への負い目からのものだったとしても。


 同じ釜の飯を食って、本当にいい人達だとわかったから。


 ―――だから


「エファちゃん。もしも、もしもまだ俺を呼んでしまった事を気にしてるなら。本当にもう、気になんてしないでね」


「えっ?」


 こちらを見てくるエファちゃんの顔を見ながらも、だんだん眠くなってきた。

 酒のせいか急速に意識が飛びそうになる中、必死に意識をつなぐ。これだけは、いっておかないと。


「……俺は君の語る勇者でも、きっとなんでもないけれど。代わりに年の離れた兄妹とか。そんな風に思ってくれて、いいからね」


 俺、恥ずかしいこといってんなぁと思いつつ、完全に意識を手放す。


意識は急速に泥の中へ。その途中でも頭に浮かぶことはある。


今後のこと。鏡花水月という謎の力のこと。そして、エファちゃんのこと。


最後にエファちゃんのことを考えたらからだろうか?


「……貴方はもう、私の勇者です。私を、救ってくれています」


 そう聞こえた気がした。


 きっと、微睡の中での俺の願望だったのだろう。


 でも、なぜだか不思議と。気持ちよく眠れる気がした夜だった。

ちなみにキョウヤ君の初恋は歳上の親戚のお姉さんだったとか。

あ、ほんとついでに言うと、次回からバトル展開開幕

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