57話
私達は森へと入り、ゲートのある場所を目指す。鳥に監視させていたゲートはさっきほどではないけどまだそれなりの数のモンスターは召喚をしていて、このまま進むならモンスター達との戦闘は避けられないはずだ。
「ゲートがまたモンスターを召喚してます!」
「了解!止まる時間はない!押し通ろう!」
ダインさんの言葉で、全員が武器を構える。ダインさんは大剣、ルインさんとアウルさんは長剣、ガウスさんは二本の斧、そしてエルクさんは素手………素手?そういえば、武器を持ってるところを見たことが無いような………
「え、エルクさん!武器は!?」
「俺は体術がメインだからね。武器も使えないことは無いが、俺が使うと寿命が極端に短くなってしまうんだ」
「そ、そうなんですね………」
大丈夫なのかな?………強化をした方が良いのかなとも思ったけど、そうすると今度は私が少し動きづらくなってしまう。それに、強化を掛けるとしたらエルクさんじゃなくてアウルさんの方が優先………のはず。
ドラゴンを素手で受け止めていたエルクさんなら大丈夫かな?そう納得して、私も杖を構えた。その時、私達の進む先から無数の足音が聞こえてくる。
「来る………!」
ダインさんは大剣を構え、その刀身が黄金の光が纏う。そして、誰よりも早く飛び出してモンスターの横薙ぎに一線。その瞬間、周囲の色がモノクロに見えるほどの光が周囲に放たれた直後に前方を巨大な斬撃が薙ぎ、続けて大きな光の爆発を起こす。
「すご………」
「ふぅん…………ただの人間で、魔法も使わずこの規模とはね」
私は呆気に取られて思わず声を上げる。ギルドでは謙遜していたけど、やっぱりBランクは当然なくらいだ。寧ろ私なんかがAランクを期待されていたようなら、ダインさんはAランクにもなれると思う。
「伊達にBランク冒険者をやってないからね!さぁ、進もう!」
「あぁ、俺も後輩には負けていられないのでね………!」
「当然だァ!!」
ガウスさんは斧を構え、エルクさんは拳に青いオーラを纏うと更に向かってくるモンスターの群れに飛び込む。その直後、大きな揺れを感じるほどの衝撃と共に大地が砕け、モンスター達が次々と吹き飛ばされて行った。
ルインさんも素早い身のこなしで前線に出て、モンスターの間を潜り抜けながらその首を断っていく。………あれ?これ、私いる………?
なんて考えが一瞬だけ頭を過ぎったその時、前方を見たルインさんが小さく舌打ちをする。
「ちっ………前方!キャスター系の亜人種が魔法を構えてるぞッ!」
「アリス!防げるかい!」
「わ、分かりました!!」
杖を構え、私達の前に結界を展開する。その直後、森の木々の間を抜けて風の刃、水の弾丸、岩の矢が無数に飛来する。それらを全て防いだ私は鳥を飛ばして木々の先にいるモンスター達の姿を捉え、結界を無数の剣に編み直して発射する。
そうして飛ばした剣を結界にもう一度変換し、再び魔法を放とうとしていたモンスター達を切断していく。その様子が見えていたのか、ルインさんが少し驚いたように呟いた。どうやら、ルインさんはとても目がいいみたいだ。
「………案外容赦ないな」
「流石、噂の『黒猫の魔女』と言ったところだ!その調子で遠距離型は任せるよ!」
「はい!」
さっきと違って人数がいる事と、ダインさん達自体が凄く強かったこともあってモンスターの群れに対して一切止まることなく私達は森の中を進み続ける。
この街に来た時は森の奥へ殲滅に行くなんて絶対に考えられなかったし、多分そのままだったら今もそのつもりはなかったと思う。けど、今は成り行きとは言え森の奥へ進み、襲撃の根源を断つために戦っている。
状況なんて、こうも簡単に変わってしまうんだ。なんて思いつつ、不思議と少し前までの恐怖は私の中からなくなっていた。
「アリス、私達の左右から来てるわよ」
「ん………!」
鳥を放って目を広げる。そして、確認したモンスター達の群れを魔法陣から放つ光弾で殲滅していく。そうしてようやく、私達は森を抜けてゲートへと辿り着いた。
私の放った鳥が旋回するそれはモンスターの召喚こそしていなかったけど、可視化されるほどの魔力を周囲から集め、またすぐに召喚を開始するであろうことは誰の目からも明らかだった。
「これが………!」
「さっさと破壊するぞ!」
エルクさんとルインさんが一歩前に踏み出したその時だった。再びゲートが渦巻き、周囲に光を放ち始める。それを見たガウスさんは斧を構え直しつつ舌打ちをする。
「チッ!さっき召喚したばかりだろうが………!」
「早くゲートの破壊をしよう!!」
エルクさんとダインさんがそれぞれの武器に光を纏わせて走りだし、二人の攻撃がゲートに放たれようとしたその時だった。ゲートから激しい衝撃波が放たれ、私達は大きく吹き飛ばされてしまう。
「うっ………!?」
私は一番離れていたから尻もちをつく程度で済んだけど、攻撃しようとしていたダインさんとエルクさんは大きく吹き飛ばされて地面に叩きつけられていた。それでも倒れることなく着地していたのは凄いと思ったけど、それはそうとして今のは何かと考える。
「純粋な魔力の波動………ゲート自体が防衛機能を持っているのね。アリス、構えなさい。早く終わらせなければ、この周囲の魔力が全て吸い尽くされて不毛の地となるわよ」
「っ、うん………!」
私は杖を構え、周囲に魔法陣を作り出す。その時、対抗するようにゲートも周囲に魔法陣を生成し、弾幕を放ってきた。もはや生物ですらなさそうなのに、魔法を使って来るってどういう………いや、厳密には木も生物ではあるけど………!
「お願いっ!」
私も光弾の弾幕を放ち、私とゲートの光弾同士がぶつかって爆発を起こしていく。数は互角に見えたけど、ゲートは更に魔法陣を増やして弾幕を厚くする。
私もそれに対抗して魔法陣の数を増やし、拮抗した遠距離戦を行っていた。しかし、そんな中でゲートは再びモンスターの召喚を開始し始めたのだ。
「そのまま抑えてろ………小僧、行くぞ!」
「こぞっ………はぁ!?お前もそう変わんないだろうが!!」
ルインさんに続いてアウルさんも走る。一瞬だけアウルさんの心配をしてしまったけど、彼もルインさん程ではないとはいえ素早い身のこなしでモンスターを次々と倒していく。ダンジョンで見た頃よりキレがあるように見えるし、もしかしたらあの時の経験が彼にとって成長のきっかけになったのかもしれない。
「はっ、あいつも強くなりやがって………それとも、良いところを見せたかったのかね」
「だ、誰にですか?」
「さてな………集中しな、嬢ちゃん。援護は頼んだぞっ!」
そう言ってガウスさんも走り出す。モンスターを召喚し始めたからか弾幕の数は減ったけど、それはそれとして今度は結界を使い始めて私の攻撃は防がれてしまっていた。その結界はとても強固で、ガウスさんの一撃も容易く弾いていた所を見るに恐らく私の結界と同等レベル。どうにかしてあれを突破しない限りは攻撃が届かない。
暫くして召喚が再び止まると、また弾幕の数が増えて少しずつ拮抗するのが難しくなってくるのを必死で止める。
「エルク、次の召喚のタイミングで攻撃を仕掛けるよ!アリス!合図をした時に君が持つ最も強い攻撃を頼む!」
「了解ッ!」
「はいっ!!」
私は杖を強く握りしめ、背後に月光の門を開く。そして、私は弾幕だけではなく結界を一瞬だけ展開して弾幕を防ぎ、また別の場所に結界を一瞬だけ展開して弾幕を防ぐ。それを何度も繰り返していた。
「アリス、大丈夫なのか!?」
「問題ありません!………それより、また召喚が始まりますっ!」
ゲートが発光を開始する。すると、またゲートが放つ弾幕の数が減って結界を使って攻撃を防ぎ始める。
「アリス、頼む!」
「はいっ!」
私は結界を二つ同時に作り出して、それを自ら破壊して編み直す。
そうして作り出したのは、結界を束ねた巨大な二本の半透明な剣。私はもう一度結界を二つ作り出し、それに剣をセットする。元々弓のように弾いたりして使っていた結界だ。なら、こんな使い方だって………!!
「放てっ!!!」
結界を弾き押し出された剣がゲートに発射される。その二つの剣はゲートの結界とぶつかり合い、同時に激しい衝撃波を放つ。けれど、剣が結界を貫通する素振りはなかった。
このままじゃ破れない。そう確信した私は剣を再び編み直し、更に魔力を切っ先へ収束させた槍にして、更に槍の後ろに結界を作って力任せに押し込んでいった。そうしてついにその先端が結界を突き破る。
「爆ぜて!!」
槍に籠った魔力が拡散し爆発を起こす。槍を押し込んだ結界が私達の方への爆発を防ぐけど、それでも衝撃が伝わる程の威力と轟音。そんな爆発と同時に何かが割れるような音が周囲に響き渡った。
「エルク!」
「あぁ!」
ダインさんの掛け声に合わせて二人が走り出し一瞬でゲートに迫る。私の魔法の爆発が消えた瞬間、エルクさんの拳に纏った膨大な光が巨大な獅子の形となり、ダインさんの剣に輝く黄金の光は一層強くなって――――
「アインツ・エッジ!!」
「ダイナ・クエイク!!」
瞬間、激しい揺れと衝撃波、そして極光が爆ぜてゲートを呑み込むのだった。




