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29話

 シャボン玉で遊び初めてから10分くらいも経つと、話を聞き付けた人達が広場に集まってきていた。

 みんな広場をふわふわを漂うシャボン玉を物珍しそうに眺め、子供達も沢山集まってきている。


「これに息を吹くんだよ」

「うん!ふーーっ!」


 シャボン玉の膜に、思いっきり息を吹き掛ける子供。そんなに強くしなくてもいいのに、と苦笑しつつ、舞い上がったシャボン玉にキャッキャと喜んでいる姿を見たら、まぁいいかとも思う。


「魔女さん、子供の相手は慣れているの?」

「え、いえ、全然…………」

「あら、そうなの」


 正直、まだちょっと緊張してるし。でも、それ以上に子供達が私の魔法ではしゃいでる姿を見るのは嬉しい。

 

「ねぇ、魔女さん」

「は、はい?な、なんでしょうか?」

「あなた、まだ若いでしょう?それなのに、なんで冒険者をしているの?」

「えっ………と………なんで、ですか?」

「…………うちの息子も、大きくなったら冒険者になりたいって言ってるのよ。息子の夢を応援はしたいけど、やっぱり親としては危ない事はしてほしくないの。だから少し気になっちゃって」


 そう言った女性の言葉に、やっぱり冒険者ってそう言うお仕事なんだなぁって実感する。

 ルナは私みたいな子供が冒険者になるのは珍しくないと言っていたけど、普通の親なら気が気じゃないだろう。


「そう、ですね。えっと…………私、凄く気弱で、人と話すのが得意じゃなくって…………」

「…………えぇ。まぁ、ちょっとだけそんな雰囲気はしたわ」


 女性が申し訳なさそうに言うから、私も苦笑してしまう。これでも普段よりは少しマシな気がするんだけど、やっぱり誤魔化せないらしい。


「はい…………それで、その…………この世界を見て回って、色んな経験をして、色んな事を知って…………そしたら、いつか自分を変えられるんじゃないかな、って………」

「………でも、冒険者は危ないことも多いでしょう?」

「そうですね…………正直、まだ怖い事がいっぱいです。でも、それで誰かを助けられることもありますから」

「そう。優しいのね」

「そ、そんなこと――――」


 私が首を振って答えようとしたとき、広場に子供の泣き声が響いた。何事かと思って咄嗟に声のする方へ顔を向けると、1人の子供が地面に座って、膝を押さえながら泣いている。

 私と女性はすぐにその子のもとへ走り出すと、他の子供も心配そうにその子の近くで心配の言葉を掛けていた。


「だ、大丈夫………!?」

「あれを追いかけてる時に転んじゃったのね………膝を擦りむいちゃってるわ」


 女性が子供の膝を見てそう言う。子供が泣いてる割には冷静だなぁと思ったけど、思えば小さな頃はこんなのは日常茶飯事な出来事な気もする。

 私もちょっとしたことで泣いてたなぁ…………そんなことはともかく。私も屈んで子供と目線を合わせ、声をかける。


「ちょっと待ってね…………痛いところ、見せてくれる?」

「う、うん…………」


 グスリながらも、怪我をした所を素直に見せてくれる。女性の言ったとおり、少し血が滲んではいるけど傷自体は大したことはない。

 それでも、泣いてる子供を見てなにもしないと言うのも嫌だし。私は左手に杖を持ちつつ、右手を子供の膝に向ける。


「『治って』」


 私が呟くと、右手に緑色の魔法陣が浮かび上がり、同時に擦りむいている膝に緑色の光が纏う。

 その一瞬で傷が消え去り、泣いていた子も目尻に涙を貯めつつ、目を見開いてそれを見ていた。


「えっと…………どう?まだ痛い?」

「う、ううん………痛くない」

「そっか。よかった」


 その子が立ち上がったのを見て、私は笑顔を浮かべる。「次は気をつけてね」と私が言うと、大きく頷いてまた子供達は遊びを再開したようだった。


「凄いわ。本当に色んな魔法が使えるのね………」

「あはは…………」


 女性は褒めてくれるけど、一方の私は不器用な愛想笑いを返す。理由は簡単で、さっきのを見た広場にいた冒険者の視線が私に集まるのを感じたからだ。

 ルナから魔法の基礎を学んだ時に、回復魔法には才能が必要だって教わっていた。だから使える人が少なくて、冒険者の回復手段と言えばポーションが一般的だと言うことも。


「ポーション…………買っとけばよかったかな」


 小さな声で呟く。私も別に習ったことを忘れてたわけじゃない。でも、泣いてる子供を前に黙ってるのも嫌だっただけ。それが間違いだったとは思わないけど、目立たないためにも咄嗟に使えるポーションくらいあれば良かったかな、と思ったり。自分に使う事はあんまりないかもしれないけど。


「無駄遣いはダメよ?今のあなたの評判なら、別に回復魔法くらい使えても変じゃないわ。それに、あんな擦り傷にポーションを使ってたらいくらあっても足らないでしょう」


 それはそうかもしれないけど…………まぁ、やっちゃったものは仕方ない。余計に目立ってしまったのは事実かもしれないけど、逆に言えばそう言うのと上手く向き合う練習になると考えよう。

 そうやって取り繕っておかないと、今すぐにでもここから逃げてしまいそうだったから。


「魔女さんはこの街に来たばかりなんでしょう?」

「えっ………な、何で知ってるんですか?」

「今は街の外から冒険者がいっぱい来るもの。あなたみたいに強い冒険者がいっぱい来ては、その度に話題になったりするの」

「そうなんですね………もしかして、ダインさんもですか?」

「あら、もしかして知り合い?その人も2ヶ月前くらいにこの街に来て、話題になっていたのよ」


 やっぱりそうなんだ。何となくあの人は普通とは何かが違うような気がしたから、そうなんじゃないかなって思った。何故なのかは分からないけど。


「少し話は変わるんだけど………魔女さんは、森のモンスターの討伐に出るの?」

「えっ?いえ………………ご、ごめんなさい。その………」

「あ、違うのよ。寧ろホッとしてるの。あの森のこと、何かおかしいんじゃないかって思う人はいっぱいいるのよ。でも、オルムがあの木々のおかげで発展したのも事実だから、領主様は何が何でも解決したいらしくて」

「その気持ちは………分からなくはないんですけど」

「そうね。でも、今は優秀な冒険者がいっぱい集まってるのも事実でしょう?領主様はあまり大事には考えてないらしいのよ」

「………そうなんですね」


 上の立場の人がそれでいいのかな………なんて思ったけど。そこは多分私が口を出す事じゃない。なんとなくまた考え事に耽ってしまい、シャボン玉が減っていた事に気付かず子供たちに呼ばれ、慌ててシャボン玉を追加していた。

 それからお昼ごろまで子供たちと遊んでいたけど、私は他にもやりたいことがあるのを思い出してそこで皆とは別れた。と言っても、やりたいことはさっきルナと話していた事だけど。


「………杖って、そこら辺で売ってる?」

「どこにでもあるわけではないわね。でも、この街で採れる木の話は聞いたでしょう?そう言った職人が居ないとは思えないわね」


 そうなんだ、と思いつつ。それっぽいお店は見つからない………それっぽいお店って何だろう?


「さっき通り過ぎたわよ」

「ねぇルナ!?」


 楽しんでるでしょ!?私が心の中でそう抗議すると、ルナは楽しげにクスクスと笑う。助けてもらうことだらけだし、彼女が居ないと生きていけないのは事実だけど、たまに意地悪してくるのが悪いとこだ。

 何となくというか、普通に納得できないながらもルナに教えてもらって店を見つける。絶対にいつかやり返してやるんだから、って思いながら、私は店の戸を開いたのだった。



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