穀潰し令嬢の花嫁街道
ほぼほぼノリで作りました。
ほぼギャグです。
私、クローゼはキリコス公爵三女として生を受けた。
歳の離れた長女は婿を取り家を継ぎ、父と母は引退。すたこらと領地に籠っていった。ほぼ姉婿にぶん投げである。
次女のプリメラは国の第二王子妃。普通なら姉様〜とか言うと思うでしょ?あのアマは本当に性格が悪い。ぶりっ子体質だ。結構犬猿の仲だ。
私も口が悪いと自負できる。が、しかし、養われている以上長女夫婦の命はほぼ絶対に近い。
何故かな?なぜ私がプリメラを補佐する侍女候補筆頭扱いなのか?
何故プリメラの代わりに妃教育を受けているのか?
魔物蔓延るこの世界、魔法なんかありゃしねぇ、物理で蹴散らせ打ちのめせがモットーな偉大なる隣国の英雄を招き講師に。…なぜ私が騎士団に混じって訓練を受ける?
マナー、歴史、ダンス、薬学、どれをおいても講師はつくけどさ、ぶっちゃけ妃教育関係なくね?
当の本人お茶会毎日開いてキャッキャうふふしながら笑ってやんの。
なぜか授業を受けても文句や指摘をされて、サボっても文句を言われ。
私は気付いたのだ。
もっと早く気づけばよかった!!
どうせ文句を言われるなら何もしないで言われる方が自分のストレス軽減されるんじゃないかって。
善は急げ、王城から逃走図って実家に逃げ帰り部屋に篭った。
ほら、夜は厨房に盗みに行き、風呂は自分で入り昼は逃走、好き勝手していた。
そんな、私が王都中の貴族から「穀潰し令嬢」と呼ばれる様になったのは、十八歳の春。
出会いと別れの季節に王城から呼び出しこんにちは。長女夫婦がキレキレで朝から人を捕まえ登城したら、国王夫婦と王太子夫婦と第二王子夫婦がこんにちは。
他貴族の皆様、こんにちは。
文句は言われ慣れてます、かかって来いやー!的なノリで待ち構えていると国王から言われた言葉は王命の結婚話。
王兄の大公(独身)に嫁げとのお達しで。
国王印と兄の名前忘れたけど大公爵の名前書いたやつと私の名前届けていくから逃げるなよ、王命だぞと念押してるのよ。
仲悪い兄弟でな、そー言えばここの第三王子も兄達と仲悪いで幼くして隣国の別荘地で隠居してる先代国王夫婦に育てられてるとかなんとかカントカ。
父親よりちょい下のおじさんかぁ〜と思いながら、長女に頭掴まれ頷かされ、あっという間に邸。
早くない、荷造り?
早くない?迎えの人。
家に帰ると、御者と名乗るイケメン兄貴がこんにちはしてたの。長女がぽけっとしてると姉婿が私とその人追い出して。
いざゆかん新天地へ!と思ったらなんでイケメン兄貴馬だけで来てるんだよ?!
普通馬車だろと思いながら一緒にパカパカ領地までの長旅をご招待されて、途中の森の中で馬車が壊れたとか笑うイケメン兄貴、スヴェンさん。三歳年上の二十一歳独身。
「荷物が一つで助かったわぁー」とかやる気のない声を出しながら、領地まであと十日かかるとか言い出してまったり旅を始めたのさ。
*
こう、魔が差したのだと思う。
相手はイケメン独身男、途中立ち寄った宿で酒飲み勝負を同室でするもんじゃないね。朝起きたら裸の男女がベッドの上でおはようございます、早くも不貞よこんにちは。床に散らばる数々の酒の空き瓶を眺めながら、未来の大公奥様の間男化した御者が抱きついて頬にキスしてくるのを流されるまま受け入れたのが悪かったと思う。
野外で寝る時は魔物の敵襲に備えてスヴェンさんの愛馬茶馬のキャンディーちゃん♂を守りながら寝ずの番を交代しながら行い宿に入ると、この大公家嫁迎えに来たはずなのに旅費ケチってね?ダブルのベッドよりセミダブルの方が部屋料金安いですよ、カップル価格利きますよとか宿の人達の口車に乗せられてお察しの通りの展開に。
若い男女を二人きりにさせるな大公とか思うじゃん?ワンナイトラブどころかスヴェンさん…さん付けいらないな、スヴェンを寄こして不貞を持ちかけ結婚破棄をさせる気か?とか勘繰るのよ。
そしてスヴェンもおかしいのよな、大型魔物出た時に講師が来た時教わった剣術披露すると秒で人のこと姉御呼ばわり始めたしな。姉御じゃねーよ、お前の未来の主人夫人だよとかツッコミどころある中、アヤツも小型魔物を沢山屍化してた。下手な王都の騎士よりこやつもしや強いのか?と最後の旅の宿で祝杯あげて流れながれの関係に。
「姉御は夜は俺より弱いんですね」とか美形が美声で囁きながら、もうただならぬ関係まで落ちたな、こりゃあかんと思いながら領地の首都の城に着くとゴリラが門のところに立っていた。
*
「お前は俺の可愛い息子をよくも誑かしてくれたな!!」
ゴリラの息子どこだよとか思うじゃん?
なんか燕尾服来たおじいちゃんがゴリラのこと大公とか言い始めるじゃん?
…大公とか言い始めるじゃん?
まじまじゴリラ見たら国王に面影あるんだよ、思わず私あんたの嫁に来た公爵家の〜とか紹介するとゴリラキレキレでウホウホ言い出すじゃん?
通訳は執事か?お前はするのか?!って目でおじいちゃん見たら気まずげに説明してくれたこと。
ゴリラと国王は仲の悪い兄弟で、ゴリラが側室の子供で大公に。仲悪い中、ゴリラに内縁の嫁さんいても存在国王認めず、子供出来ても国王認知せず。…王都では多分独身で通ってそうですがきちんと奥様も息子様もいらっしゃるそうな。先代国王夫妻には妻も子供も認知してもらっていて書面で残している、と。
「御子息のスヴェンセン様が…王家の結婚届と貴方様の姿絵を見てすぐに飛び出しまして…」
あの野郎、ゴリラの息子かよ?!
「婚約届には大公家は記入しておりましたが、名前までは…なのでスヴェン様が名前を書き先代国王様に勝手に送られまして…」
勝手にやりすぎじゃね?あの男!
え?なに?迎えに来たのは大公の息子で勝手に人と婚姻届を提出して宿での勢いはなんちゃって初夜だったの?あの旅は新婚旅行(笑)だったの?!
本人どこ消えたんじゃほーい!とか心の中でカムバックホームを叫ぶと、こちらも叫ぶゴリラ。
「ワシは認めん!!認めんぞおおぉ!!可愛い息子をこんな女なんかにぃぃい!!」
親バカゴリラの叫びが止まらず、「スヴェン様が旅立った後に王都から手紙が届いて。クローゼ様がスヴェン様らしき人物と王都を出たと連絡がありまして」
執事、お前は絶対執事長だろ?じゃねーとゴリラとの意思疎通がこんなに上手くねーって!!
「決闘じゃあぁぁー!!」
とか言って手袋人に投げつけてさ、このタイミングで現れるか愛しのゴリラの息子ちゃん。
キャンディーをお風呂入れてたじゃねーよ、お前はマイペース過ぎるじゃろ?
なんで手袋拾って私に渡してくるんだよ?!
ゴリラも受け取ったな?!じゃねーよ!!
「スヴェン様、当主様と若奥様があなたの愛を賭けて戦うらしいですよ」
ちげーよ、執事、変なこと言うなよ執事!
「姉御…!おじきぃ…」
なんでお前は父親をその呼びなんだよ!!イケメンが口に手を当てて涙目で感動するなよ、このイケメン!!
「スヴェン!パパって呼んでっていっつも言ってるよね?!」
ゴリラはちょっと黙ってろ!!
「パパは絶対勝つからね!この結婚は絶対認めないからね!」
とか言ってた気がする。
*
結果。
いい線まで行っていたけど決着付かず。
平和に腕相撲だったのよ、スヴェンが「俺のために血を流さないで!」とか言ったから。
しかもゴリラも人のことゴリラ呼ばわりするしな?怪力娘じゃねーよ、か弱い美少女クローゼちゃんだよ!ずっと握り合ってたらお互い腕プルプルし始めてさ、お前は絶対わざとだろ?
「おじきぃ!もうやめてくれ!姉御のお腹には俺の子がいるのに無理をさせたくないんだ!」とかデタラメ言うのよな。いねーよ、多分まだいねーよと思ったらゴリラが婚前交渉云々言い出して手を離して机ひっくり返して「ワシの大事なスヴェンを傷物に?!」とかキレるじゃん?記憶は酒で飛んだけど朝起きたらオタクの息子さんが上だったから私は多分襲われた方とか、余計なこと話したらあかんなと黙ってたら美女登場してな。
ゴリラのことをアナタ!とか言うのよ。
美女と野獣なら野獣は美形に早変わりするじゃん?残念ながらゴリラはゴリラのままで美女に抱きつかれながら、どう見てもスヴェンの方が悪いわよと正論ぶち込む美女。
いくら仲の悪い国王の息子の嫁の姉妹だからってこの子は関係ないわよとか個人情報ダダ漏れ発言しながら、スヴェンが人に抱きつきながらあれは母さんとかすげー真面目な説明が入るのよ。
そうかい、義母さんかいと納得しながら優しくお腹撫でられてゴリラウホウホ言いながら義母さん制して執事が医師を呼んでくれて結局勝負は流れた。ついでに妊娠もしてなかった。そんな滞在一日目だった。
*
ここの影の大公は義母じゃね?と思ったのよ。義母の一声で私はスヴェンセンの嫁認定された。ゴリラはウホウホ言ってた。多分人語喋りながら反対してるか文句言ってたと思うけどウホウホ聞こえるからウホウホなんだろう。
ちゃっかり隣国別荘地から先代国王の認印付きで結婚届認めが届いてた。なんか認めますって赤字で最後書かれてた。結婚おめでとうお兄ちゃんとか子供の直筆で書かれてた文を執事が第三王子は度々ここに遊びにくると伝えてくれた。逆に王都メンバーは来たことないとな。そうかいな。
そして忘れちゃいけない、この世界。
魔物蔓延るこの世界、魔法なんかありゃしない、頼れるは己の肉体、集え脳筋、おいでませ大公領。名産地は大型魔物が蔓延る山脈だよ、よってらっしゃい、絶対嫌だね。
もうね、ゴリラは脳筋の中の王らしいのよ。次期当主認定されてるスヴェンも綺麗なゴリラりしいのよ、大公家の騎士団の中では。その綺麗なゴリラが嫁の事、マジパネェ姉御一生ついて行くっす発言したもんだから、か弱きご令嬢もゴリラウホウホ隊と一緒に名産地大型魔物山脈にご招待されたわけですよ。
大公家にやってきて一週間の出来事ですよ。
他国の英雄がな、力で魔物従えてたんだよ〜、妃教育の時に習ってねーとか夕飯時にご飯作りながら綺麗なゴリラ夫とウホウホ隊に話すじゃん?ゴリラはどっかでウホウホしてると思う。多分作戦会議なんじゃね?
ウホウホ隊の一人が「若奥様は王都の令嬢でしたよね?何故料理が出来るのですか?」とか魔物使役と関係ないこと話し出してさ、妃教育の賜物かなと言うのよ。
何故私が妃教育受けてたんだって顔したんじゃよ。わたしゃ、三姉妹の末っ子で長女が家を継ぎ、次女が王子妃になったから長女から次女の補佐官兼侍女になれって言われて登城してたら、次女の妃教育の教師達が全て私にぶん投げてきたと。
普通おかしいだろとお茶会してる次女見て仕事辞めて家で好きなことしてたら王命で嫁がされてきたと馬鹿正直に答えてさ、普通感動か憐れむじゃろ?
このウホウホ隊は「魔物退治って妃教育関係なくないですか?」とか至極まともな意見を述べたのさ。まじ?クローゼちゃんの苦労話ちゃっかり流されてやんのとか思いながらも、料理作って傷薬になる薬草を現地調達して魔物山脈に着く頃には若奥様はいなくなってたんだよ。呼び名が姉御呼びだったんだよ、ゴリラはウホウホ言ってるけど。
別にスヴェンは空気化してたわけじゃなく、コイツも万能型だった。イケメンで脳筋で一応私に一途な年上旦那なんだよ。父親ウホウホしか言わねーけど。剣使ってたけど弓もいける口なんだな、勝手に食材持ってくる狩人的ポジションキープして私が料理してウホウホ隊が召し上がる。お前ら立場わかってるのか?次期大公とその嫁を使うなと言いたくなりながらも、魔物山脈に以下略。
*
「大型魔物がいるところには人語が喋れるボス的なゴリラ…ではなく魔物がいるみたいで。その魔物を使役すればその周辺の魔物は襲って来ないみたいです。なんかどっかの大国の英雄さんがきてそう話してました」
「ウホッ!ウッホッホ!ウッホ!」
わからねぇ、ゴリラの気持ちがわからねぇ。執事ここに連れてきたらすぐ寿命が来るだろうな、お迎えが来るだろうな。
ちょっと誰かゴリラ通訳しろと思いながら進んでいくと、出るわ出るわ、大型魔物が。
入り口付近の魔物を倒したらしばらくは魔物が襲ってこないらしく今回もここまでかと思いきや、ゴリラと私が率先して大型魔物を血祭りにあげたらしい。なんかウホウホ隊の歓喜の声と姉御コールが鳴り止まぬ中、ゴリラがこの間のリベンジの如く山脈の奥へ進んで行った。
「姉御!おじきの心に火がついたよ?!」
だからなんなんだとスヴェン見たら、こやつは人の手を恋人繋ぎしていざ行かん、デートへではなく魔物の巣窟内部へ。恋人繋ぎしていく場所じゃねーよと脳内ツッコミ入れながら後に続くウホウホ隊。
なんだかんだでゴリラに合流し、なんだかんだで山脈の頂上までやってきて大公領魔物山脈ボスのドラゴンさんこんにちはイベント発生した。
きちんと人語で喋りアレか?よくここまで辿り着けたとか言うオチか?
何故か巨大なドラゴンは私の方を見て、貴方様に従いますとか言い出す始末。
ゴリラの悔しがるウッホ!と言う叫び声がこだまする中、とりあえず大公領の魔物ボス、ドラゴンのゼンザイは私の配下となった。
つまりは大公領の魔物は全て私の支配下となったのだ、ふはははは。と、どこの王だよ?!なんで私なの?!か弱き令嬢のこの私が?!とか言うものなら「…魔物たちの血に染め上げた魔女様から私は殺されたくありません」とか怯えながら言われてよ、返り血まみれだということに気づいたのはその時だったの。
いや、ウホウホ隊もスヴェンも言えよと彼らの方見ると姉御最高コールしてて、ゴリラは悔しがりながらウホウホ言ってたな。
私は魔女じゃねーよ、ただの脳筋族の長だよ。
とりあえず白いドラゴン、ゼンザイに乗って大公城まで帰って行ってさ、魔物ボスドラって伝えてるはずなのに、ゼンザイが大公家の守護竜扱いになったのは後日のことだった。
ついでにゼンザイを慕ってついてきた魔物たちは無害で首都の子供の用心棒兼ペットになる彼奴等まで出てきてた。
*
「最近王都の様子が芳しくないらしいわ」とか義母さんが話してきたのはスヴェンと結婚して半年後。
そもそも結婚式してないよね?という話から始まり、そーいえば、ゴリラウホウホからなぁなぁになったなと義母さんの紅茶を注ぎながら頷くのよ。
間、ゼンザイ使役した後、薬草教室やら、噂を聞きつけた元講師の英雄が遊びにきたりやら、近辺の領持ち貴族を招いてお披露目パーティーをしたりやら、色々した。
お披露目パーティーをしたはずなのに結婚式してないよね?そもそも王命で結婚したはずだからプロポーズも指輪ももらってねーべと気づいたのは昨日の夜で。
その話に花を咲かせて昨晩はお楽しみでしたね、むしろ年頃なんでしょうね、毎日ガツガツいこうになってないかな、綺麗なゴリラはやっぱり本能がゴリラなのか?お前は人のこと年下姉御呼ばわりするくせにガツガツしてるよな、頻度で致してる今日この頃。
キャンディーちゃんとゼンザイとウホウホ隊と仲良くピクニックに出掛けた夫のお母様と二人きり、温室の中。
子供はいつ出来るの?とかナイーヴな話はされない、その前に結婚式じゃい。
で、王都。
「ほら、クゥちゃんの家庭教師だった人達が一斉にこっちにやってきたでしょう?一昨日。話を聞くと王太子妃様と第二王子妃様が政務を行わず散財ばかりしてるらしいわよ。王都税が上がっているらしいわ」
クローゼだからクゥちゃんねと犬みたいな呼び名をつけたのは義母さん本人。ゴリラ、犬、馬、ドラゴン、小型魔物。この人は大公領を動物園にしたいのじゃろうか?ドラゴンと小型魔物は風評被害だけどな。
まさかの家庭教師たちが総出でやってきたんじゃよ。大公領発展しすぎ暮らしやすすぎ、魔物と共存して被害被らないどころかペットにして癒されまくる家庭まで出てきてる、いますみたい街No.1の大公領(自己評価)
家庭教師たちから無駄に教わった知識で品種改良行って作物はよく実っている。
家畜も充実、大公ゴリラがウホウホ鳴くぐらいであとは至って平和な大公領。悪さをしたら即大公家守護竜が連れ去って行くそれが大公領。
まぁ、何が言いたいのかというと。
「今度ね、先代国王夫婦が狼煙を上げて第三王子を王位継がせるためにここで会議するらしいからクゥちゃんも参加してね」
という謀反のお知らせ。
先代国王夫婦は国王の実親だけど、当時の側妃と王妃は仲が良く、先代王妃はゴリラを実子より可愛がってるらしい、ゴリラなのに。
ちゃっかり隣国のお姫様を第三王子の婚約者に決めているらしく、準備万端とか笑顔で言い切る義母さん。
決行日前に一応スヴェンを大公爵にさせるからとか本人いないのに勝手に決めてる義母さん。「だって、国王達はクゥちゃんを大公の嫁に命を出したんでしょう?とことん騙さなきゃねぇ」
黒い笑みが似合う義母さん。
…ゴリラどこ消えたんじゃろな。
*
まさかの結婚式と爵位受け渡しと会議を一斉にするとは思わなかったんだよ。
誰がこのハードスケジュールを組み込んだのかな?義母さんかな?だってゴリラウホウホしか話してないもんな!!
先代国王夫婦と第三王子と隣国王族一同遊びに来ててさ、ちゃっかり式参列しながら、講師した英雄や、家庭教師やらが人のこと勝手に育てましたみたいなツラして泣いてるの。
スヴェンに至っては誓いの言葉も姉御呼びでお前は妻の名前を言えるのか?イケメンだからって何しても許されるわけじゃねーからなと思いながら指輪交換してラブラブアピールして、ゴリラからのウホウホコール。多分爵位を継承してるんじゃろう、花婿ぶんどられゴリラが頬擦り始めて多分継承終わったんだろう。なんかスヴェンの方見てみんなスヴェン大公万歳〜とか言い始めたから。
なんかまた誓いのキッス!みたいなアンコール始まってさ、ゴリラから逃れ近づいてくるスヴェン。
「いつも可愛いけど今日は一段と綺麗だよ、姉御…」
私はクローゼだよっ!と声に出たわぁ。
会議?会議は隣国王族と先代国王夫婦と第三王子、大公家、家庭教師達。
なんで家庭教師もなんだよ?!と脳内ツッコミ入れてたら彼らは今の王家の有り様を教えてくれた。
元々結構ひどかったから始まり、王太子妃は男爵家の生まれで恋の力で最初は頑張っていたと。どっかの第二王子の妻が公爵令嬢で、本来なら王太子妃のお手本となる令嬢であるべきだったはずなのに、と。第二王子婚約時代のプリメラの評価はすこぶる優だったと。そのまま結婚して、私も一緒に登城して、プリメラはしばらく体調不良になったからわざわざ教師達の時間を奪うのは忍びない。クローゼに教えて、クローゼから自分は聞くから彼女をよろしくお願いしますとか、頭下げてきたんじゃと。教師にもスケジュールがあるから私に教えてたら何故か教育魂に火がついて高度なことを教えていたと。
いや、当時結構ハードすぎだったじゃん?え?妃教育は私全て終わってたの?ダンス授業の運動神経見て武術もいける口だと思って続々と授業を増やしていったの?バカじゃない?え?え?
おかしいと思ったんだよ!!なんで家庭教師に医者までつくんだよとか、騎士団と訓練ってなんだよとかさ?!
「クローゼ殿が去った後、プリメラ様に基礎を教えなおしていましたが…わからないの一点張りで皆解雇されました」
皆、の中に兵や医者や薬学研究士までいるのはおかしいけどな?!それもプリメラにさせようとするのはまずおかしいからな?!
「加えて王太子妃と結託し、夫である王子達と毎日豪華な夜会を開き…国王は先代がなんとかしてくれるだろう、だめなら王太子が頑張るだろうと頓珍漢な発言ばかりで」
他力本願もクソもすげーな国王と思ってたら、先代国王が開き直って、だから自分は息子を卸し、第三王子を即位させ、補佐にゴリラをと。実際には息子と話したけど、要約するとゴリラの王都行きが決定したんじゃよ。
義母さんもクゥちゃん領地お願いねとか勝手に行くこと決めてるし、なんなら先代国王夫婦も自分らもそろそろ帰る頃合いだからと笑顔で話すんじゃよ。
第三王子には家庭教師をそのまま付けて、打倒クローゼ様です!とか家庭教師軍団、王子に鼓舞してるけど、私の立場はお前らの中でなんなんだよ!!
おい、ゴリラ!お前もウッホ!とか言って励ますなよ?!
*
そして決行日。
馬車に揺られてガタゴト王都まで四日。
…あの旅はなんだったんじゃろな?きっと新婚旅行だったんだろう、そう思っておこう。
目の前にゴリラと義母さん、隣にイケメン旦那。四人で仲良く…ならねーよ、義母とイケメンが窓見て微笑ましく親子会話してる隙にゴリラと足蹴り合いしてるよ、踏んだり踵落とししてるわ〜。
ゼンザイは呼ばれたら行きますとかどこでも配達員みたいなこと言って鱗で作った笛をくれたのさ。講師英雄も魔物使役してるから謀反なうの時に任せろとかノリノリでな、お前は一番赤の他人じゃねーかとツッコミどころ多かったけどやめた。パートナーは赤いドラゴンなんだってさ。やっぱり長はドラゴン系が多いのかね?
王都について実家に泊まることなく王家の別邸にお呼ばれしてまさかのパパスとママンが確保されてた。言い方悪かったな、普通にお呼ばれされてて王家に反感持ってる貴族達をうちうちに集めてたらしい。
マジかよ、娘王族の妻じゃぞと思いながらパパスとママン見てたら、私の結婚のこと知らなかったみたいでな、スヴェン呼び出してお揃いの指輪見せたのよ。
「クローゼ、貴方ご主人に姉御って呼ばせてるの?!」
自分で呼ぶからしゃーねーだろと思ったべ?それよりもとかパパスが話題を変えて姉夫婦も色々やらかしてるから今回領地から舞い戻ってきたとか言うじゃん?
私が残ってるから公爵家は大丈夫とか思ってたらまさかの嫁入りしてるじゃねーかと。どんだけ三女はスペア扱いなんじゃと思ったべ?
「大丈夫です、義父様、義母様。姉御との間に沢山子供が出来ますので誰か継ぎます」とか勝手に話し始めるスヴェン。
沢山の基準は何人じゃろな?夫婦円満なのね、とかママン言うけど姉御ネタ忘れてねーかな、この人。
「紹介します、あちら、私の義母様とゴリラです」
「母とおじきです」
私とスヴェンの声がダブってパパスとママンがまぁ、似た者夫婦なのねとか言い出したわぁ。ゴリラウホウホコールうるさいけど。
と、大体の流れを説明して、とりあえず王家に取り繕ってる腐った貴族達は身内いるだろうが覚悟は出来てるか?的な確認と、おおまかな罪状。
罪状ってなんじゃらほい、なんということだしょう。国王は何もしてない他力本願、王妃は奴隷売買、王太子は王太子妃に貢ぐため国費横領、王太子妃頭ン中、桃色ハッピー娘、第二王子、娼館通いして暴行事件、第二王子妃、つまり実姉プリメラ。
あの女やっぱりぶりっ子の境地だったのか?夫が夫ならお前もかよ?!男を囲いお茶会ってなんだよ?!何してたんだよあのアマ?!
「…つまりあのアマは人が妃教育を受けている時に男を侍らせ具合悪いの、ぐっすんとか言いながら遊んでたと?!え?人には明日の気分はぁ〜、ピンクダイヤモンド♪とか言って宝石ついたドレスを朝早く起きて何時間もかけて着させたのに、あのアマはホイホイ脱いだと?!」
どこが具合悪いんだあのアマはぁ!!とか叫んだと思う。
まさか妹が侍女までしてるとは思わなかったんだろうな実親は。たいそう驚きの顔を隠せないみたいで顔に出てるぞ、パパスとママンや。
「ウホッ!ウホホ!!」
「うるせぇ!!ウホウホ言うな!!」
「姉御違うよ!おじきは「言葉遣いに気をつけろ小娘!」って話したんだよ!大丈夫、俺はそんな姉御が好みだから!!口悪くしても夜は純情な姉御のギャップに悶えてるから全然大丈夫だよっ!!」
聞いてた貴族達は皆黙ってた。
だって、この世は脳筋が全て。この国での現時点での脳筋の頂点は大公家なのだから。
*
そして突如先代国王夫婦が第三王子連れて帰って来た夜会が開催された。
国中の貴族を呼び盛大に行うらしい。
準備の良いことに領地に帰っていた貴族達が二日内に皆現地入りを果たした。
下位貴族の紹介はスルーされて、有名どころの侯爵家、公爵家と入場して、多分パパスとママンは姉夫婦と合流してるじゃろう。
国唯一の大公家紹介に入ったとき、ゴリラと私が並び手を叩き合う。今日だけは停戦じゃとでも言いそうなゴリラ。二人で頷き合って、ゴリラの横に着飾った義母さん。私の横に無駄に整った顔の美形夫を添えて。四人で入場した。
現れた私達に知らない貴族達は皆驚いていた。ゴリラと義母さん。私とスヴェンが仲良くペアルックなのだ。お互いの夫婦はお揃いの指輪をはめ、手を繋いで王族席まで歩いていく。
わかる、顔に出過ぎてる。プリメラが私をめっちゃ睨んでる。
時々スヴェンの方を向いては熱い視線を送っている、王太子妃も、今まで通って来た令嬢達も。
でもこの美形はゴリラの息子なんやで?ゴリラの繁殖なみに人のことガッツリ食べてくるやつなんやで?綺麗な顔したゴリラなんやで?と湧き出る気持ちを抑えながら、最初に会った時から詐欺られた気分を装いながら話していく。
「国王陛下、この度は大公家への婚姻命令、誠にありがとうございました。私、クローゼはとても素敵な方と結ばれることができました」
「初めまして、おじうえ。私はスヴェンセンと申します。この度、父より大公爵を継ぎ新たな当主となりました。とても素晴らしい妻とのご縁をありがとうございます」
私達二人で同じタイミングで礼を行う。
ざわめき出す外野に驚く王族達。先代国王夫婦と第三王子は無表情だけど!
聞いてない!と国王がゴリラ指差してウホウホ言い出すゴリラ。
義母さんが「わたくし達の婚姻は先代様が了承済みです」と証書のコピーらしきものを見せていく義母さんとウホウホ言うゴリラ。
「息子は立派な大公ですの。わたくし夫婦はてっきり陛下が息子に相応しい嫁を選んでくれたのかとばかり…すでに息子とクローゼの、婚姻は認められて式も済んでおりますの。クローゼは歴とした大公夫人ですわ」
「ウッホッホ!!」
多分義母さんに合わせて肯定してるのじゃろうな、ゴリラ。
話し合わせるように先代国王夫婦や第三王子も隣国から時々遊びに行っていたとかネタバレ始めてさ、私をプリメラが殺す視線で睨みつけてたの。
今回の婚約話はこのアマの仕業だったんだろうな、唇噛み締めながら人を見てるの。
その顔、周りの貴族も見てるじょ、と思いながら優雅に礼をして笑みを浮かべる。
おかしな事に第二王子が人の顔見て頬緩んだじょ?!
そんな第二王子から隠すようにスヴェンが人をいきなり抱きしめてさ、「すみません、妻が可愛すぎて…」とか公衆の面前で甘い笑みを浮かべるの。何故か会場の令嬢の黄色い悲鳴も聞こえて来たけどな。
これ行動不敬じゃね?と思いながらさっき人のこと見てた第二王子の顔が真っ青になっててさ、あれ?もしや牽制か?牽制なのか?と頬が緩みながらスヴェンに抱きつき返すの。
多分横で義母さん無双始まってるんだよ、ゴリラの相槌ウホウホ聞こえるし。
王太子は王太子妃にぞっこんなのか?二人で桃色ハッピーなオーラ発して二人の世界に飛び立ってる。第二王子は震え上がって…。
「スヴェ様ぁ!!この愚妹は実は…結婚する前からいろんな男の人と関係を持っていた股の緩い女なのですぅう!」
それはお前のことじゃぞ、愚姉!!
プリメラは王族だけに聞こえるようなか細い声で言い出したのよな。
泣き真似相変わらずうめーよな、このアマ。
*
「この妹はいつもプリメラをいじめてぇ〜、いじめ抜いてぇ〜、沢山の男の人と遊び歩いていたのをプリメラのせいにしてたのですぅ!ふぇーーん!」
とか言って立ち上がりちゃっかり人に抱きついてるスヴェンの背後に抱きついて、ふぇええん!!とかまた泣き出すじゃろ?
「しかも妹は、プリメラの妃教育をプリメラが知らない内に勝手に受けて…夫とプリメラを別れさせて後釜を狙ってた意地の悪い悪女なのですぅ!!」
チラッと階下を見ると聞こえた貴族達の嘘じゃねーかと言う表情。おう、嘘だよ!!
咄嗟に私はスヴェンから離れようとしたけど奴がはなさねぇ。プリメラの話聞いてたか?人の髪の毛嗅いでスンスン聞こえるのは気のせいか?
「まぁ、クローゼが男好きですって?!」
義母さんわざとらしく話に加わってさ、その言葉で帰って来たのかスヴェンは「クローゼは男好きなんてありえませんよ。どこのクローゼの事を話しているのでしょうか?」とか言い出して、語りんぐするプリメラ。
ほぼオメーじゃねーか、「こうっ!か弱いフリして近づいて弱みを見せて関係を持って…」恥ずかしそうに声を抑えて「…こ、これ以上の事は言えないほどふしだらなことをしてますぅ!」とか言い出しすの。
「そんなの嘘ですよね。だってクローゼを迎えに来て関係を持つまでに酒を十五本飲ませないと体を許してくれないほどガードが固かったんですよ?わかります?やっと倒れたクローゼの処女を奪って既成事実を作った私の気持ちは貴方はわかりますか?大型の魔物を倒したり、父と同じ力を持つクローゼがか弱いはずないでしょう?」
お前は人のことをなんだと思ってるんだろな?初めて聞いた初夜話を堂々と話すなよ、ちょい先代王妃が第三王子の耳元抑えてるよ。
「で、でも、プリメラの方が可愛いですよ?」
…お前は何を言ってるんだ状態でみんなアマを見てたの。いや、だからなんでそうなった?
「私は婚約届とクローゼの姿絵を送られて来て一目惚れしてすぐに迎えに行ったのですよ?クローゼの方が可愛いに決まっているではありませんか?」
お前も馬鹿正直に答えるなよ、スヴェンや。
「で、でもっ!プリメラの方がか弱いんですよ?!」
だからどうしたって顔になる一同。
「クローゼは大型魔物の主に認められて大公領の魔物は皆クローゼの配下になったのですよ?!」
お前は何をしたんだって目で義母さんと私はスヴェンを見たのよ。ゴリラ?ゴリラはウッホ!と叫んでる。
*
「魔物?!魔物なんて怖いわっ!!」
とか王太子妃が泣き出してさ、国王や王妃も異端だって目で人のこと見出すじゃん?
貴族達の中にもちらほら聞こえてざわめきが大きくなったのをさ、先代の一言で静まり返るの。
「息子や、お前は本当に勉強したのか?」
呆れ返った先代が英雄呼んでさ、何故彼が英雄と呼ばれるようになったかを話すの。
英雄の国の各地の人語を話す魔物のボスを次々と使役していったと。ボスを抑えたら魔物達は暴れなくなると。そのボスと仲良くなればその地域の魔物は人間と共存できると。
「大公夫人は彼の一番弟子でね、彼女が嫁いで魔物達は皆領民達と共存の道を選んだんだ」
とかいい具合に締め括った先代にスヴェンに抱かれながら一礼して、スヴェン越しにプリメラを見る。
「プリメラお姉様の言う妃教育のおかげで私は強くなれましたの。ほら、お姉様が手放した優秀な教師の方々もあちらに…」
タイミング良くどっかから湧いて出てきた家庭教師達。あれ?数多くね?とか国王が遠回しに彼らのこと指差して話してさ、プリメラが「えぇぇ?!あの方々は陛下がプリメラの妃教育にって、紹介してくれたはずの先生達ぃ!」とか叫び出す。
「わ、ワシが招いたのはダンス講師と、マナーと、歴史と、刺繍だけだぞ?!」とか叫び出してあからさまに多い家庭教師達を代表して歴史教師が説明するの。
いつもプリメラの代わりにクローゼがやって来ていて、クローゼの才能が開花して続々と教える講師が増えていったと。クローゼの妃教育は終えていた、しかし上を目指す彼らがクローゼに高望みを要求して彼女は授業をボイコットし始めたと。ボイコットは余計じゃね?
妃教育を同じ様にプリメラ様に、との事で同じ教師達を揃えていたと。
「そのおかげで大公領はとても裕福になりましたの。クローゼの知識で沢山救われましたわ。ほら、長年我が領の悩みの種であった大型魔物の出現する山脈は、クローゼが彼らのボスを使役してくれたおかげでとても過ごしやすく平和になりましたの」
義母さんが人差し指を口に当てて、今だと合図を送る。
今なのか?!今なんだろう。
私はポケットの中の笛を持ち息を吹いた。
…音しねぇよ!!
*
と、ものの数秒で夜会会場の天井ガラスにゼンザイよ、こんばんは。
「姉御ぉ!もう帰りますか?!」
お前もいつの間に姉御呼びに変わったんだろうな?白竜はいけしゃあしゃあと子供より流暢に人語を話すのよ。
驚く貴族達ともちろん王族にゴリラが「ウッホーホーイ!ウッウッホ!」とか説明してるからきっと体良いこと言ってるんじゃろう。
「ク、クローゼばっかり!ずるいわぁぁん!!スヴェ様ぁー、クローゼがプリメラをいじめますぅうう!」
マジ第二王子このアマの何が良かったんだろうな?なんか、きゃっふん!!とかプリメラの声が聞こえてスヴェン越しに見ると、ドレスに男性の靴のあとがベッタリついてるの。
スヴェン、プリメラを蹴ったな、って理解できた。
らちがあかねぇと先代が指パッチンすると私兵も混じっていたのか、王家を慕う貴族達を一斉に捕まえてさ、会場ガラスにへばりついたゼンザイが「出番はまだですかぁ?」とか叫んでる。義母さんにきけぇ!!
ゴリラが王妃を捕らえ、スヴェンが第二王子を、私はプリメラを捕らえながら先代が戸惑いを隠せない国王に告げる。
お前の嫁な、奴隷売買してるぞ、お前の二番目の息子、娼館通って娼婦数名いたぶって亡くなってる人いるぞ、お前の息子嫁、妃教育サボって息子以外の男とただれた関係じゃぞと。ついでのように捕まえてない立ち尽くしていた王太子夫婦は散財と国費横領してるぞよと。何よりお前はそんな家族に無関心で知らぬ存ぜぬを突き通して今があるんじゃとキレキレで話してさ、ゼンザイの出番なしで騎士達がなし崩しに国王達捕らえていくの。
捕まった貴族達もそこまで落ちぶれていたのかよみたいな軽蔑の顔してるけど多分お前らも適度にやらかしてるはずなんだよ、報告書見ると。
新しい王に第三王子を、先代が後見人になり、補佐をゴリラに。婚約話は別荘地がある国の姫と婚約しているからと話した。
最低限の生活が保証されりゃそれでいいんだろう。残った貴族達は皆拍手で同意を示し、夜会は幕を閉じた。
*
その後の王族は魔物被害が酷い領地に飛ばされた。騎士達に見守られながら家族みんなで魔物と対峙させるらしい。あっ、先代切り捨てたなって思ったべ?ゴリラは今まで大公領で頑張ってきたから息子もできるだろ?同じ息子だから。プリメラも妃教育で習ったはずだからできるだろ?え?習ってない?またまたご冗談を〜!的な流れで送り出してた。
墓は王家じゃなくて現地で結構と話してたあたりもう帰ってこないと割り切ってるなと。
そんなこんなで忙しなく続く毎日。
断罪の後、ゼンザイ使えばすぐ王都につけることわかって帰りももうはよ帰ろうと義母さんや両親に別れを告げ、ゴリラに「ウッホ!」と、挨拶を交わすとあのゴリラ人の頭平手打ちしたんだよ。
気を失って医者の診察受けたらまさかの子供が出来てたんだよ。
スヴェンがゴリラにキレて「おじきには子供が生まれるまで会わせない!!」とか言ってさ、最後に悲痛な「ウッホォオォー!!」の嘆きを聞きながら五分。帰ってきた領地でゆるゆる毎日過ごしていたの。
早いものであっと言う間に長男生まれて第一声。
ゴリラじゃなくてよかった!!
もう、完璧父親似!!と叫んで失神したらしい。
そんなこんなで夫婦仲は変わらずよく、大公夫婦はおしどり夫婦と呼ばれるようになった頃、断罪された王族全滅の知らせが届いた。
最後まで粘ったのはまさかの元王太子に守られる元王太子妃だったらしい。
とまぁ、しんみりしながら話聞いてると第六子が泣き始めてあやすのよ。
「姉御ぉ!交代しようか?」
お前は相変わらず愛しの妻たんの事を姉御呼びだよなぁ、と思いながら第六子を渡して可愛い赤ちゃんの頬をつつく。
…まごう事なき、あのゴリラ顔だった。
ウッホ!
余談。
義母は城に勤めていた針子さんです。