間話 影として使命を全うす
【シャドウ視点】
俺の名はシャドウ。
この名前は、頭領であるアランから付けてもらった名だ。
影という意味らしく現在のコボルト隊でNo.2の俺にとってぴったりの名だろう。
まぁ簡潔にいうとすごく気に入ってるってことだ。
現在、俺はアランが敬愛する御館様から命じられた任務の真っ最中でランスホース帝国に潜伏している。
任務の内容はウルゼ国王の容態についてだ。
忍ぶこともだいぶ板についてきた。
俺は今、ウルゼ国王の部屋の屋根裏に忍んでいる。
昨日やっとここに侵入することができようやく潜めれた。
何やら声が聞こえる。
「父上、今朝の薬をお持ちしました」
「おぉモルドレッドよ。ありがとう。してアーサーはどうした?」
「兄上は女の尻を追いかけ新しくできた魔族の村に攻め込んで行きました。父上が病気だというのに戦争ばかり最近の兄上はまるで何かに取り憑かれているようです」
「ふむぅ。あやつに家督を継がせるのは考えなければならないかも知れぬな」
「適任者が居ませんよ」
「モルドレッドがおるではないか?」
「僕には荷が重いですよ。御遠慮します」
「モルドレッドは謙遜がすぎる。もっと己に自信を持てば良いものを」
「では僕はこれで失礼します」
「あぁ引き留めてすまなかったな。もう下がって良いぞ」
「父上もどうか身体を休めてください」
「あぁ、ありがとう」
御館様から特に注意深く見るように言われた第2殿下のモルドレッド殿のようだ。
家族のことを心配する良い御仁にしか見えぬ。
やはりアーサーとやらが聖騎士ではないということか。
だがあの態度どうも引っかかる。
御館様からモルドレッド殿は恐らく野心家だと聞いたが家督の件も断っていた何故だ。
それにしても見えないからあの薬がなんなのかわからないのは困るな仕方ない御館様から渡された手紙をウルゼ国王の膝下に落ちるように投げ入れた。
「なんじゃこの手紙は何処から入ってきた。まぁ良い久々に王らしいことをしてみるか。何々、お久しぶりですウルゼ国王様、この筆跡は死んだと聞いたエレインからなのか。生きておったのだな。嬉しい限りだ。しかしこの手紙の内容が真実だとするとワシの病はこの薬が原因ということになる。そしてエレインは魔族と結婚したということになる。ハーッハッハッ実に面白い。さすがワシが見込んだだけのことはある。にしても表向き良い子であったモルドレッドがまさか裏で魔王と人身売買をしておったとはそれもまた周辺の友好小国を滅ぼして。寝耳に水の内容だがエレインが嘘を言うまい。それにエレインが惚れ込むクレオとやらにワシも会いたくなったわ。ハーッハッハッ。久々にこんなに笑ったわい。何々手紙の中に入っている薬をお飲みください。それで体調はみるみる改善されるでしょうか。全く魔族と結婚してもワシの心配なぞしよってほんに可愛い娘よな」
ん?
どう言うことだエレインがウルゼ国王の娘?
ゴクリと音が聞こえた後、いきなりウルゼ国王が呟く。
「屋根裏におるのは誰か知らぬがこの手紙を届けてくれた者であろう。お前も魔族なのであろう。何心配するな。言ったりせん。エレインのくれた薬によりワシは元気になった。手紙を書くゆえそれをエレイン、いや娘に渡して欲しいのだ。後お前の主君であるクレオとやらにも一筆書くゆえ持って行ってくれ」
ギクッ何故バレた。
元気になり感覚が研ぎ澄まされたということか?
話しかけられたのに答えないのは礼儀に反する。
ここは堂々と出ていくとしよう。
「ウルゼ国王様、俺はエレイン様の命を受け、国王様に手紙を届けに参ったシャドウと申します。御館様のことまで気にしていただき手紙を書いてくださるなどもったいなきことですがその任お受けいたしましょう」
「ハーッハッハッまさかこんなに礼儀正しく忍べるコボルトがおるとはなぁ。枝垂桜海洋国家の者ほどではないが誇ると良いぞ。病が治り感覚が研ぎ澄まされるまでこのワシが全く気づかなかったのだからな」
「いえ気付かれた時点で忍びとしてはまだまだ精進いたします」
「お前の主君は良い家臣を持ったようだな。これからもエレインともども気にかけてやってくれ。後この薬、万能薬として名高い魔物ジャッカロープの乳であろう。全く貴重なものを重ね重ね感謝する。生きていれば必ず御礼をしに参る」
「御館様に必ず伝えましょう。どうか生きてエレイン様にお会いになってください。エレイン様もきっとお喜びになられます」
「事ここに至ってはどうなるかわかるまいて、どれだけ城内のものがモルドレッド派になっているのか。運であろう。それにアーサーが攻めた魔族の村とはエレインがいる村なのであろうあの馬鹿息子は娘に夢中であったからなぁ」
「どうして兄妹だと伝えなかったのですか?」
「伝えられるわけが無かろう。エレインはワシと雪女との間に産まれ子でな。雪女族は短命の種族で、ワシと熱々の恋をした後、エレインを産んですぐに亡くなってしもうた。残されたエレインを子供の居なかった夫婦のところに差し出し養育して貰ったのだ。立派な騎士となりワシの側仕えとして戻ってくるとは当時は全く思っておらんかったが今となっては良かったと思うておる。娘と少しでも一緒にいられたのだからな。昔話をついつい話しすぎたな。これが手紙だ。ではよろしく頼む」
「いえとても良いお話を聞かせていただきました。その手紙を必ずやお届けしましょう。国王様、どうか御無事であられますよう祈っております」
「ありがとう」
俺は深々とお辞儀をしその場を立ち去る。
その後モルドレッド派がクーデターを起こしたそうだ。
この結果がどうなったかはこの国を出た俺にはわからない。
だがウルゼ国王が生きていることを切に願うばかりだ。
「シャドウ、帰ったのね」
「はっエレイン様、ウルゼ国王様に薬を手渡しました」
「ありがとう。こちらも撃退が完了して今戦後処理の最中よ。クレオ様はこっちにいるわ。付いてきて」
「はっ」
俺はエレイン様と共に御館様の執務室に入る。
「やぁシャドウ。任務御苦労様」
「ウルゼ国王様からエレイン様と御館様に手紙を預かっております。俺は外していますのでゆっくりお読みください」
「いえ、父がこの手紙を渡したということはシャドウも聞く権利があるわ。ここにいて」
「知ってらしたのですか?」
「えぇ物心ついた時にね。養父から聞いたの。私はそれを聞いて父の側に居たくて騎士を目指したのよ。私はね捨てられたのではなく守られていたのよ」
「親の心子知らずとはよく言うけど子の心親知らずだったわけだね」
「なんですかそれ?」
「まぁ言葉の通りだよ」
「ふーん」
手紙を読み終わるとエレイン様はポロポロも涙を流し、ランスホース帝国に向かうというのをクレオ様が必死に留めていた。
エレイン様の手紙には、エレイン様の生い立ちや娘として愛しているや感謝の言葉。
御館様への手紙には、ワシのところに向かおうとするエレインを必死に止めてくれって感じだろう。
2人とも静かに手紙に目を通していたので深い内容まではわからない。
何はともあれ取り敢えず任務は果たせただろう。
アランと合流しリグレスト聖教国について情報共有しなければならないな。
ここまでお読みくださりありがとうございます。




