間話 喜怒哀楽の表現が苦手な兎
【ミミ視点】
私の名前はミミです。
この小学校に来てそう名付けられました。
小屋のようなところで6匹で暮らしてます。
私はとにかく人が怖くていつも隅っこの方で隠れてました。
他の仲間たちはみんな子供が来ると「わぁ〜い」とご飯に群がりパクパク食べます。
いつも隅っこの方にいてる私にはご飯が行き届きません。
私はいつも腹ペコでした。
そんな感情表現が苦手な私が感情表現を豊かにできる出来事がありました。
その少年は新しく飼育委員になったらしくて他の人と同じように群がる仲間たちにしかご飯を渡さないなんてことはなく、隅っこで隠れている私に気付いて笑顔を浮かべながら手招きしてきました。
私は何故かいつもと違う対応に惹かれて彼の手招きする方に行きました。
すると少年は私を抱えると小屋を閉めて、誰もいない隅っこの方に連れてきてくれました。
まるで私が人見知りで人が怖いことがわかっているかのようでした。
少年は大きなお皿に牧草をたくさん入れ、もう一個の大きなお皿にお水をたっぷり入れて出してくれました。
「ミミ、お腹空いてるでしょ。たくさん食べていいよ。まだまだあるからね」
私の目を見ながら優しくそう言い背中を撫でてくれます。
初めて人に撫でられましたがその少年の撫で方はとても気持ちよかったです。
それに初めてお腹いっぱい食べました。
食べ終わるのを見た少年は私を膝に乗せて撫でながら目を見つめてポケットから美味しそうなおやつを取り出し私の口まで運んでくれました。
甘くて美味しいフルーツみたいですが乾燥していて甘味が凝縮されていてとても美味しかったです。
そんな私の幸せな時間は唐突に終わりを迎えました。
「おーい玲王〜何やってんだよ。兎に餌あげるだけで何時間かけてんだよ。そろそろ帰るぞ」
アイツ知ってます、前回の飼育委員で餌を皿にきちんと入れずに放り捨てる適当野郎です。
私は思い出すと腹が立ちスタンピングをしました。
少年が私を見て察したように呟いた。
「僕はアイツとは違うから安心していいよ。ミミ」
私はそれを聞き嬉しかったので耳をピンと立て目をキラキラさせて「プゥプゥ」と高めの声を出しました。
それにしても新しい飼育委員さんの名前は玲王様と言うそうです。
こんなに動物に対して優しくしてくれる飼育委員さんは初めてなのでこれから楽しみです。
「わかった〜今行くから待ってて」
玲王様はそう言うと私を腕に抱えて小屋の中に戻すと仲間たちにも牧草と水をたっぷり追加してやり帰って行きました。
仲間たちは私の周りに集まってきて「お前のことまで気にしてくれる物好きがいるなんてな」「俺たちは愛嬌振り撒いてりゃ安全に飯が貰える」「お前ときたら隅っこに隠れてるだけの無能なのにな」とか心無い言葉が心に突き刺さります。
それから彼が小学校を卒業するまでの3年間はとても幸福な時間を過ごせました。
私は玲王様以外の人の時は隅っこに隠れて、玲王様が来た時は誰よりも早く駆けていき側を死守しました(笑)
そんな私の寿命ももうすぐ終わりを迎えようとしています。
玲王様が卒業してから3年後の冬頃、いつもの隅っこの方でひっそりと逝きました。
気がつくと白い空間にいて、目の前で杖を持った老人が私に告げました。
「8年間御苦労様でした。心労の絶えない毎日の中でこれほど長生きできたのは奇跡と言えるでしょう。しかし心残りがあるように見受けられますね」
それを聞いた私は答えました。
「辛い期間を耐えられたのは玲王様と出会えたことが大きかったと思います。心残りは玲王様にもう一度逢いたかったことですかね」
ふむふむと目の前の老人は頷くと言った。
「ハハハ、玲王はこの世界ではなく別の世界におる。あちらの神に話してやるゆえ。暫しまて」
私はもう一度逢えるなら何年でも待つ気持ちなのでそれを聞くと二つ返事で頷いた。
暫くすると話がまとまったのか別世界に飛ばされた。
そこには周りに10種類の動物?がいてみんな玲王様に逢いたいと言っていた。
神様がまずはお前からだと真っ黒な仔犬にこの世界での新しい姿を与えて地上に送り出すのを見た周りの動物たち何一斉に私も私もと言う。
その圧に押された私は隅っこの方に行こうとする。
それを見た神様が私の方に近付いてきて言う。
「こっちの世界で玲王が怪我した時、助けてあげられる存在になりたく無いかい」
それを聞いた私は喜んで頷いた。
「ヨシヨシ、なら君のこちらでの姿はジャッカロープだ。現実世界でも伝説上の兎として知られているし兎として生きてきた君にも馴染み深いだろう」
こうして私はジャッカロープとして、この異世界で生きていく事になった。
エルフたちにキラキラした目で追い回される3年間は死なないように必死でした。
そうして迷い込んだ城の外でまたしてもエルフです。
しかも白狼までいます。
シクシクせっかく転移したのにすぐ死ぬ未来だったなんて、最後に玲王様に逢いたかったなぁ。
その時エルフと白狼と私の間に男の子が入り込んだ。
私は姿形が変わってるけどすぐにわかったこの匂いは「玲王様だ〜」そう言って私は駆け寄った。
玲王様も気付いてくれたらしく「ミミ」と懐かしい名前で呼んでくれた。
こちらの世界では従魔契約というのをするとずっと居られるとのことなのでしてもらいました。
盃に並々と注がれた玲王様の血を飲むことで契約成立らしいです。
血なのに水のように透き通っていて普段飲んでいた水とは雲泥の差ぐらいに美味しかったです。
玲王様が私を抱えて「僕のだぞ〜」とエルフと白狼に見せつけていました。
玲王様の部屋に入ると真っ黒な仔犬が居ました。
あの娘も無事玲王様の元に辿り着けたみたいです。
私の口を舐め回して嬉しさを表現してくれたので私もひねりジャンプで嬉しさを表現し返しました。
そして2人で大好きな玲王様を守る約束をしたのです。
きっと他の動物たちもこの異世界で新しい姿となり玲王様を探しているはず集まれば心強いしみんな玲王様が大好きなのだ。
できるだけ早く合流したい。
あっこっちの世界では玲王様ではなくクレオ様らしいけど私も玲王様と呼ぶ事にした。
これから玲王様と生きていくこの世界が楽しみ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。




