間話 真っ黒な仔犬
【リリ視点】
当時の現実世界では世間は犬ブームと言われる好景気でした。
なのでたくさん産んでは売るという悪どいブリーダーが少なからず居ました。
そのブリーダーの元、白色の犬と灰色の犬から産まれた真っ黒な私は親からも嫌われブリーダーからも不吉な色だと嫌われて高架下に捨てられたのです。
そんな私に転機が訪れたのは捨てられて5日後のことでした。
高架下に来た真っ黒な服を着た少年はずっと泣いていました。
私は慰めようと勇気を出してその少年に駆け寄り、ペロペロと舐めました。
少年はくすぐったそうにしながらも笑みを浮かべ。
「小さい犬だなぁ。慰めようとしてくれたんだろうありがとな。もう飼い主のとこに戻って良いぞ」
その少年は私を膝に抱えて撫でながらそう言った。
飼い主すらいない私はその少年の膝の上から一向に動かない。
すると少年は私の顔を覗き込み呟く。
「帰るところが無いならうちに来る?僕の名前は来世玲王だよ。君の名前はそうだな女の子かじゃあリリってのはどう?」
私はそれを聞くと元気よく「ワン」と吠えた。
玲王様の腕に抱かれながら私の新しい家に行く。
家に着くと玲王様は、ヤギミルクを温めて皿の中に入れ、もう一個の皿には色とりどりの温野菜の手作りご飯が入っていた。
「一応犬が食べちゃダメなものは全て取り除いたから大丈夫だよ。温かいヤギのミルクと温野菜のご飯だよ。好きなだけお食べ」
私は初めて見る美味しそうなご飯に飛びついてパクパク食べおかわりまで要求していました。
玲王様は私を見ながらクスクス笑って新しいご飯には今度は低温で熱したお肉や魚に大豆の入ったこれまた美味しそうなものが出てきました。
えっ私もちろん全部食べました。
こうしてガッチリと胃袋を掴まれたのです。
そんな玲王様との楽しい時間が終わるのは唐突でした。
玲王様が母さんと呼ぶその人が新しく旦那となる人として連れてきた死神留目と呼ばれる人は見ていないところで暴力を振るうクズ野郎でした。
ある日私はとうとう耐えきれなくなり玲王様の前に立ってその男を威嚇し続けました。
「なんだ鬱陶しい犬だな。犬畜生ごときが人間様に一丁前に逆らってんじゃねぇよ。そこどかねぇなら殺すぞ」
そんなこと言われても私は引く気はありません。
私を助けてくれた玲王様を虐める目の前のこのクズは明らかに敵であり排除するべきゴミなのですから。
「あーわかったわかった今日のところは犬畜生に免じて止めといてやるよ」
ニヤァとした笑みを浮かべながら去っていったその男に戦慄を覚えながらも大好きな玲王様を守れたことに安堵した私は2度と目を覚ますことはありませんでした。
えーあの男に殺されて鍋で煮込まれて、原型を留めていない私の身体を見ても気付かなかった玲王様に食べられたのです。
初めて料理を作ってくれた新しい父さんと仲良くなれると思っていたのでしょう。
「父さん、僕のために料理を作ってくれてありがとう。この肉美味しいね。何の肉なの?」
ニヤァとした笑みを浮かべながらその男は呟いたのです。
「何の肉ってそりゃあお前の大事な犬っころだよ。昨日ムカついたからよ夜のうちに殺して鍋で一晩コトコト煮込んだ特製の犬肉ビーフシチューだよ」
それを聞いた玲王様は外に駆け出し、泣きながら「リリごめん」と謝り全てを吐き出そうと吐いていました。
それを霊体で見ていた。
私もあれぐらいで引いてくれるやつだと甘く見ていた自分に腹が立ちながらももう玲王様のことを守れないことを悔いに思いながら暫く色んなところをフラフラと霊体で旅をした後天に昇っていきました。
次に目を覚ますと白い空間にいました。
目の前の杖をついた老人の姿の男が事務的に話し始めた。
「3歳と6ヶ月後苦労様でした。今回とても大変な死に方をした貴方の願いを一つだけ叶えてあげましょう。何が良いですか?」
私の願いそんなのひとつしかない。
「大好きな御主人様の玲王様にもう一度逢いたいです」
目の前の老人の男はキョトンとした顔をしながら呟く。
「その男ならもうこの世界には居らんのじゃが。というかその玲王とやらに逢いたいと言いにきた動物はお前で10匹目じゃ。大層愛されてあったのであろうな。良し向こうの世界の神に聞いてやるゆえ暫し待っておれ」
私はそれを聞きながらどうやら私が霊体として現世を漂っている間に玲王様もアイツに殺されてしまったのだと察した。
でももう一度会えるなら別の世界でも構わない。
だって私を救い出してくれた王子様で私の敬愛する大好きな御主人様なのだから。
「喜べ、あちらの神が受け入れてくれるそうじゃ」
そう目の前の老人が言う次の瞬間私は別の世界に飛ばされていました。
そして新しい神にヘルハウンドとして異世界で生きる権利を与えられた私は1年かけて必死に色んなところを探しました。
そしてやっと出逢えたのです。
私の愛しき御主人様に。
こっちの世界では従魔契約なるものがあるらしいです。
もちろんしてもらいます。
大好きな玲王様とずっと一緒に居られるのなら私はそれだけで満足なのです。
しかも異世界でのこの姿はかなりの力を持っているらしく玲王様を守れる力を備えて居るのです。
それにしても初めて血なんて飲みましたが大好きな御主人様の血なのでとても美味しかったです。
どうやらこっちの世界ではクレオ様らしいですが私は気にせず玲王様と呼びます。
玲王様を見つめる視線に気づいたからです。
あの狼の娘です。
遠くから玲王様を見つめながら目をハートにしています。
知ってますその顔は恋する乙女の顔です。
玲王様を好きになるのはわかります。
だって優しくてカッコ良くてピンチの時に駆けつけてくれるヒーローみたいですもんね。
この異世界での玲王様の幸せのため私も側で温かく見守ることにしましょう。
美味しいご飯と愛しき御主人様である玲王様のために。
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