第18話 純血(純潔)戦争③
2月5日修正しました。誤字報告ありがとうございます。
時はリリアが中央突撃を開始したレオンダイト本陣の様子。
【レオンダイト視点】
この挑発的な布陣を前に短気なリリア殿は我慢できないと踏んだが、ラス殿が膠着状態に持ち込まれ、灰狼が突撃するまでよく我慢したとほめておこう。
「伝令、中央を三陣に分ける。第一陣250をアルノルト、第二陣250をエルザ、第三陣500をダルタンで敵の突撃をそれぞれ包み込み受け止めるように伝えよ」「はっ」
さぁ詰みだ。
間も無くウルファスが敵狼族を一騎討ちにて撤退させリリア殿の背後を突くべく反転攻勢をかけるだろう。
逃げ道すらない死地の窪地に飛び込んできたリリア殿を捕まえる。
思えばここまで上手いこと行きすぎている。
吸血鬼とハイエルフにとっとと戦を始めてもらいたいドラゴレアム丞相を諜報活動の一環としての模擬戦で焦らし、その模擬戦で5戦全勝し、エルフの民衆の心を上げ下げさせて揺さぶり意識支配のスキルにかけやすくし、エルフェアリーナ王国9万5千の兵を不参戦にし、ドラゴレアム丞相の商売で一時の財政難の状態を作り出し民兵の動員という可能性を潰えさせ、国境線からこっちへ攻め込ませるための大義名分を作ってあげるために左右の戦場でこちらから仕掛け、中央のリリア殿本体をこの窪地に引き摺り込むことに成功した。
決定的な負け戦となったのだ。
リリア殿とて交渉に応じざるをえないだろう。
ククク、我が策なれり。
ハァ〜悪役に徹するのは辛いなぁ(泣)
「リリア殿来ます」伝令が告げる。
「バルバラ、アーロン手筈通りにな」
「わかったのだぁ」「任せとけ」
バルバラとアーロンの得意げな声を聞き僕は待ち構える。
「レオンダイト・ヴラッド覚悟〜」
リリア殿の怒りに満ち溢れた声を聞きながら僕は詰みの一手を放つ。
「リリア殿残念ながらそこは死地です」
僕は笑みを浮かべながら鋭く言い放つ。
バルバラの率いるスピニングスパイダーとキャプチャードールが一斉にエルフを捕まえ、アーロンと共に後方に撤退する。
「えっこんなことって」
たくさんの蜘蛛の魔物と人形を見たリリア殿が驚き尻餅をつく。
その間にリリア殿の連れてきたエルフの約半数が捕まった。
さらに後ろからは狼族を潰走させたウルファスが背後より襲いかかる。
「リリア様を守れ〜」「リリア様ここは撤退を」
エルフ軍500がリリア殿を守るためにウルファスに挑むがどんどん倒され捕まる。
それを見たリリア殿は怒りで我を忘れている。
「ふざけないで。こうなったら私の最高の魔法を見せてあげるんだから。光となりて我が眼前の魔を祓えライトセイバー」
まさか光魔法か?
まずい当たれば不死の吸血鬼といえ被害は甚大だ。
僕はキーン婆やから密かに教えてもらった闇属性の転移魔法でアーロンやバルバラ、エルフ軍と交戦している吸血鬼軍をラーキア城に避難させた。
これで被害は僕だけで済むはずだったのだが目の前にウルファスが飛び込んできた。
「兄上は決してやらせはせん。このウルファスの命に賭けて」
そう言い僕に向かってきていた光魔法を受け盾になったのだ。
リリア殿は顔を青ざめ「まさかこんなことになるなんて」と呟いている。
「ウルファス、お前何して、おい嘘だろ、返事をしろ、おいウルファス頼むから起きてくれ」
僕は目を覚さないウルファスを抱き抱えながらリリア殿を睨んで怒りの声で叫んだ。
「貴様ぁーーーーーーーー絶対に許さんぞ骨まで消し飛ばしてくれる。闇の中へ引き摺り込めブラック、、、」
闇の魔法の詠唱を唱え放とうとした時ウルファスのか細い声が聞こえ急いで止める。
「あ に う え そ れ は だ め だ。そ れ を す れ ば エ ル フ も わ れ わ れ も ま も れ な い」
そう言って気を失う。
長い耳のリリア殿にも聞こえたらしく、僕とウルファスを見て「エルフを守るとはどういうこと」と言った。
「貴様、回復魔法が使えるならウルファスの治療は可能か。話はウルファスが助かればそれからしてやる助からなければ貴様を殺す」
僕は怒気を込め呟いたがウルファスが生きていたのはわかったのでそこまで怒ってはいない。
生きてさえいれば助ける秘策があるのだから。
「無理よこの魔法で砕かれた身体を治療するなんて。私の回復魔法は怪我を治せる程度で穴の空いた身体を治せはしないわよ。そもそも私だって初めて使ったのよ。私はどうなっても構わない。だから最後になぜ貴方はエルフも守ろうとしていたのかそれだけは聞かせて」
リリア殿は光魔法を知らなかったのか。
しかもたまたまで使ったというのかこの性能の光魔法を、、、とんでもない。
だが回復魔法で治せないとなると残る一つはこの方法しかない。
幸い生きていることがわかったので、あれができる本来双方の契約が必要で尚且つ同性での成功率は良くて1%しかないがこの際そんなこと言ってられない。
どっちみちこのままなら間違いなくウルファスは死ぬのだ。
なら可能性のある方に望みをかける。
「リリア殿、わかりました。では今から僕がやる事を誰にも言わないと約束してくれますか」
リリア殿は驚いた顔をしながらも頷いてくれた。
ウルファスの下に血の魔法陣を召喚し、ウルファスの首元に噛みつき血を活性化させて吸血鬼へ変異させる儀式を行う。
「我、レオンダイト・ヴラッドはウルファス・レアンドロを生涯の弟とし眷属契約を行う願わくばこの者を吸血鬼へと昇華させたまえ」
【リリア視点】
吸血鬼の眷属契約の儀式、まさかウルファス殿が純潔の狼族だったなんて、私はそれも知らずにあんな高度な魔法を。
レオンダイト殿が怒るのも無理はない。
そもそもこの戦争自体今冷静になり思い返してみるとおかしい事だらけだった。
ラスの戦場は激戦だったのにも関わらず伝令からの連絡に死者の報告はなかった。
ルーカス殿の戦場の方も全員撤退した。
極め付けは中央の戦いですら私たちの突撃を受け止めながらなぜか私だけ抜けられた。
皆のおかげだと思っていたが吸血鬼側は抜けられそうな点を密かに作っているようだった。
極みつけは誘い込まれた私たちに対してもレオンダイト殿は殺すことはせずに捕まえる事を目的としているようだった。
まさかレオンダイト殿は最初から殺すつもりなどなく別の目的があったということなのかしら。
それならあんな遠回りなどせずに言ってくだされば良かったのにレオンダイト殿ったら。
私は頬を膨らませる。
神様どうか願いが届くのならウルファス殿をお助けください。
私は祈りながらレオンダイト殿とウルファス殿を見ていた。
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