15話 最後の戦
クレオは逃げ出した魔族たちを見て、もう終わりだと油断していた。そうどんな時も油断してはならない。魔王アンドレを支える10万の兵が急襲してきたのだ。それも地下から。これにはクレオも驚いた。
「クレオを探せ〜アンドレ様をクレオの元に届けるのだ」
「クレオ様を守れ。決して近づけるな」
奇襲により、混乱状態に陥った魔頂村軍の被害は甚大であった。クレオも命からがらその場から撤退に成功した。だがこの奇襲により数10万の被害が出た。
「油断していた僕が。アンドレはもう終わりだと。なんて不甲斐ない。僕の油断で多くの村民の命を失った。僕を逃すために」
離れた場所にいたシュテンたちが駆けつける。
「殿〜御無事ですか?」
「親父殿、なんてことだ。血塗れだ」
「シュテンにサモン。大丈夫だ。この血は俺を守ろうとした兵たちのものだ。こんな俺を」
「クレオ、弱気になるな。お前を守って兵が死んだから何だ。当然だろう。皆お前と同じ夢を見ているのだ。お前が死ねばその夢は叶わない。兵たちの想いを汲んで立て。立ち上がりやがれ」
「ダスティル、お前、だがそうじゃな。殿、立ちなされ。まだ終わっておりませんぞ」
「俺はもう立てない。戦場があんなに怖いものだったなんて、俺を守って死ぬ兵たちの顔が頭にこびりついて離れない。俺のせいで俺の油断のせいで。俺が」
「責めてばかりか?クレオ殿、ワシもサウザンド王国の陥落の際には、兵たちの死をこの目で見てきた。ワシのせいでと責めた。じゃが、そいつらの想いも背に乗せて、屈辱を受けてでも生きることを決めた。お前さんはまだ何も失っておらん。一度負けただけじゃ。今まで全勝しておった。だからこそその反動も大きかろう。じゃが、まだ負けたわけではあるまい。それにこのチャンスを逃せば2度と魔王に迫ることはできぬかもしれんぞ」
「わかっている。だが俺にはもう」
「逃げ出すのか?そんな男だったのか?俺たちに未来だけ押し付けて逃げるのか?お前のようなやつをなんて言う臆病者だ。お前が1番嫌っていた臆病者だ。本当にそれでいいのか?お前が逃げれば今後も誰かが虐げられる。お前はその世界で生きていくんだな?どうなんだよクレオ」
「ダスティルの言うとおりだ。どうかしていた。残存兵はいかほど残っている?」
「殿が率いていた兵は全滅として、我らが率いた10万づつの20万程かと」
「そうか、ではその兵で魔王を討つぞ」
「クレオ、いやクレオ様、最後までこの槍働きにて、宿願の成就を」
「殿、このシュテン、ここで死のうとも悔いはありませんわい。殿と出会い自分を取り戻し、最後はこうしてその側で武をふるえるのですからな」
「親父殿、このサモン。最後までお供いたします」
「それでこそ、クレオ殿じゃ。ワシも最後までついて行きますぞ」
クレオたちが反転して魔王城に迫ると、魔王軍はまたいなかった。
「10万の兵を隠せるところなんてどこに?」
「地下だ。来るぞ」
「また戻ってきたクレオを討つぞ」
「クレオを探せ〜」
身構えていた兵たちと奇襲を仕掛けてきた魔王軍と交戦状態となる。
「2度も同じ手は喰いませんか。さすがと言っておきましょう。アンドレ様の軍師を務めております丞相のドラムスと申します」
名前を聞いてリコルとエキナが反応した。
「貴方ドラムスなの?」
「何で、よりによって魔王に?まさか洗脳」
「久しぶりね。リコルにエキナ。あの時は助けてあげられなくてごめんね。でも残念ながら洗脳とかではないわ。これは私の意思よ。親友だった貴方たちと差し違えてでも私はアンドレ様を守る」
「そう、なら私もクレオ様の妻として、親友の貴方を止めるわ。いくわよリコル」
「あぁ、もう。わかってる」
ドラムスの剣筋が鈍る。
「どうしたの?」
「何でもありません」
「涙が」
「どこで間違えたのでしょうね」
ドラムスの剣が弾かれる。
「くっ流石ね」
「ドラムス様、一度お引きください。ここら我々が」
「貴方たち、わかったわ。任せるわ」
10万の兵が20万の兵を押し返していた。
「アンドレ様をクレオの元に行かせるんだ」
「クレオ様を守れ。何て力だ。これも薬の力なのか?」
「薬など飲んでいない。これは我らのアンドレ様に対する忠誠心だ」
「グワァー」
クレオ軍が吹き飛ぶ。
「道が開いたぞ行くぞー」
「やれやれ簡単に殿の元に行けると思うてか」
待ち構えていたシュテンにより、薙ぎ払われる魔王軍。
「グワァー」
「オーガ族か。成程、お前がクレオの片腕シュテンか」
「あぁ」
「そうか。どうりであいつらじゃ敵わないわけだ。お前らここは俺に任せて、別の道を切り開いてこい」
「了解しました。隊長」
「隊長ってことは名前があるだろ。名乗るが良い」
「117だ」
「はっ?」
「同じ下級魔族だったんだろこれで伝わると思うが」
「お前名前がないのか?」
「あぁ、だが名前がないからどうした。俺はアンドレ様に取り立てられ名前を与えられた。だがその名前を名乗るつもりはない。死にゆくお前に名乗る必要などないからな」
「ほぅ。このワシを良いだろう」
「あれがクレオのもう1人の片腕ダスティルだ。クレオは近いぞ」
各地で激戦が続いていた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。




