第9話 先代魔王の死
【レオンダイト視点】
「これが僕とアーロンが知るウルファスの過去だよ」
ホワイティは首を傾げて僕に尋ねた。
「それならウルファスは純潔な白狼って事ですよね。それなら現時点で80歳のはずこの見た目なのはオカシイです。狼族は不死では無いですから年齢が止まったりしません」
話を聞いていたアーロンが口を開いた。
「兄貴その件に関しては俺も気になってた。何故ウルファスが歳をとらねぇのか」
ウルファスも覚悟を決めて。
「兄上、まだ隠してることがあるんじゃないですか?」
僕は可愛い弟であるウルファスに嫌われるかもしれない覚悟を決めて話した。
「可愛いお前が歳を取り死に向かう様を見れるほど僕は強くない。ウルファスが20歳になりこのまま歳を取り続ければ吸血鬼で僕の弟である嘘が通らなくなるそう考えた僕はウルファスに毎月渡していた飲み物に僕の血を混ぜたんだ」
「兄貴は、まさか魔法陣を用いずに血の契約ができるってのか?」
「魔法陣の上に小瓶を置きその中に血を溜め、それをウルファスの好物であるトマトジュースに混ぜた。ウルファスの飲み物が赤かったからこそできたやり方だったんだ」
「兄貴、流石にそれは引くわ」
「アーロンお前ならどうしたって言うんだ。あのまま歳を取り続けてたら間違いなくウルファスは亡くなるんだぞ。そんなの見れるほど僕は強くないんだ。親しいものの死を見るぐらいなら自分が死んでも良いと思うほどな」
「アーロン兄上、レオン兄上がそうまでして俺なんかを大事にしてくれていたその気持ちの方が大事です。俺はむしろレオン兄上とアーロン兄上の仲が復旧してた事の方がむしろ驚いてますよ」
「その話もしないといけないな。その件もウルファスに大きく関わってくるから」
「あぁ、それはリリア姐さんも関わるあの純血戦争の話ってことだろ、兄貴は吸血鬼たちとエルフェアリーナ王国の両方を守ろうとした」
「レオンが私たちエルフの国も守ってくれていた。それは当時私も確信が持てなかった件よ」
「兄貴は、吸血鬼の中で優しすぎる異端児だった。だから50年前の魔王が変わった直後に命令されたエルフェアリーナ王国の殲滅作戦。通称純血戦争を誰の血も流さず終結させるために策を張り巡らせたんだ。それにたまたま姐さんが引っかかっただけなんだ」
そう聞いたバルバラがアーロンに普通の口調で叱りつけた。
「アーロンそれは違うわ。レオンお兄様は私の気持ちを汲み取りアーロンの妻になれるようにしてくれたり、リリアお姉様のエルフェアリーナ王国を守りたいって気持ちを汲み取れる優しい方なの。元々戦闘集団の吸血鬼がお兄様に従っているのもそれが巡り回って吸血鬼たちを守ってくれているのを皆がわかっているからよ。それにレオンお兄様はリリアお姉様に初めて会った時にきっと恋してたのよ」
「はっバルバラの気持ちを汲んだ。それ何。どういうこと。兄貴は俺にも隠し事があるのか?」
バルバラはあっまずったといった顔をして僕をみた。
「ハァ〜、バルバラはアーロンにずっと惚れてたんだ。父が勝手に決めた僕の許嫁の時からね」
バルバラは顔を赤らめていつもの口調に戻って言った。
「アーロンは鈍感さんなのだぁ」
「えっえっ兄貴がリリア姐さんと結婚して落ち込んでたお前を慰めた時あの時に気持ちが俺に傾いたと思ってた」
「あっ落ち込んでるように見えてたのだぁ。それならレオンお兄様の策に見事にハマってるのだぁ。レオンお兄様が『アーロンは弱ってる女をほっとけない優しいやつだからひどく落ち込んでるように見せればイチコロだよ』ってアドバイスくれたのだぁ」
「兄貴の手の上だったのか。という事は俺のバルバラへの気持ちも最初から知ってたのか?」
「むしろ気付かないと思ったのかアーロン」
「兄貴ってリリア姐さん以外の女性経験ないのにどんだけ敏感なんだよ」
「うるせぇ、うるせぇ。それより本題に戻して純血戦争について次は語ろう」
「レオン兄上、純血戦争の時俺は一度死にかけましたひょっとしてそのことに関係してるのですか?」
「あぁ、今こそ純血戦争の全てを語ろう」
始まりは父上から魔王軍吸血鬼兵団の党首を受け継いで間もない50年前の先代の魔王様が危篤となり王城に呼び出された日だ。
「デモンズ魔王様、レオンダイト・ヴラッド密命により参上いたしました」
デモンズ様は消えいりそうな声で
「レオンダイトよ。よく来てくれた。私が逝けば我が息子はドラゴレアムの傀儡となり、エルフェアリーナ王国の殲滅を支持するだろう。お前を初めて見た時お前のような聡明な男が何故私の息子ではなかったのかと恨んだが、恥を偲んで頼みたい。我が息子に先鋒を命じられたらそれをお受けせよ。そしてエルフェアリーナ王国と一滴の血も流さず和解するように動くのだ。難しい任務をお前に与える先代魔王を恨んでも構わぬ。だがドラゴレアムのやり方ではきっと魔族のこの先の未来は無いだろう。お前だけが頼みだレオンダイトよ。うっうっ」
胸を苦しそうに抑えた魔王様。
「デモンズ魔王様、誰か誰かいないかデモンズ魔王様が」
光魔法の使い手がやってきて魔王様の脈を確認して「お疲れ様でした」と言った。
「やっと亡くなりやがったかクソ親父は」
そう言って遅れてやってきたのはこの後3代目の魔王となるドレッド・アンデスである。
「これで次の魔王様はドレッド様、次の丞相はこの私ドラゴレアムですなぁ。ハッハッハッ」
「待ってくださいドレッド魔王様、ドラゴレアム様、現丞相のドラマリア殿はどうなるのです」
「あぁあの女竜なら、魔王様に毒を盛った罪で地下牢に幽閉しました。近々斬首の予定ですよ。ハッハッハッ」
怒らせないように媚び諂う形で言ってみたが、コイツらとことん腐ってやがる。だがここは堪えて先代魔王様の最後の意思を汲み取らないとと我慢する。
「レオンダイト、貴様に魔王に就任した俺から命令をプレゼントしてやるありがたく頂戴しろよ。エルフェアリーナ王国を吸血鬼兵団を率いて滅ぼしてこい」
「はっ謹んでお受けいたします」
そう言って僕はラーキア城に踵を返したのである。
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