間話② アーロンとバルバラ
アーロン視点も書いてみました。
レオンダイトとリリアの子供が生まれ、明日バルバラを連れてきてまた来てくれと言われたアーロンは自らの居城であるリッシュ城に向かっていた。
【アーロン・ヴラッド視点】
兄貴と姐さんの子供可愛かったなぁ。
お目目はクリックリの赤目混じりで、八重歯のあたりが牙が生えるために凹んでて、まぁ人間に溶け込む時とかように牙を収納したりもできるようになんだけど。
それになんといってもあの長い耳、鼻も高かったし、ありゃ将来女泣かせの顔になるかもなぁ。
女の数は親父超えしたりするかもな。
俺と兄貴の父であるヴェルデ・ヴラッドには30人の妻がいた。
まぁ、決闘好きな親父だったからほとんど略奪だけどな。
なのに全員親父が亡くなった時に共に逝くことにしたのだから親父も愛されてたってことか。
その子供たちは俺に仕えてくれているといっても兄貴の指示だけど、まぁ俺だって未だに吸血鬼族の頂点は兄貴だと思ってるし、兄貴とやり合えば十中八九負けるとわかる。
そんな兄貴と姐さんの子供だもんな。
十中八九最強クラスの才能を持っているだろう。
そんなことを考えているとリッシュ城が見えてきた。丘のラーキア城の防衛城として作られたリッシュ城は、城を中心に周りを高い外壁と16個の外敵対策用の監視櫓で構成されていて、今のアーロンはラーキア城の兄貴の監視という魔王様からの命令を受けている。
まぁ兄貴は俺に迷惑をかけたく無いみたいで城の執務室に篭って、謀略と策略を張り巡らせ、政務をしているがそんなこと馬鹿な魔王様の一派が気付くはずがない。
さて俺のやるべきことは馬鹿なドラゴン族に情報を小出しで与えて揺さぶりをかける。
今の兄貴は魔王様に利益がある時以外は王城に呼ばれない。
兄貴から毎月届くエルフェアリーナ王国との定例報告書ですらろくに目を通していない。
だがここに来てハイエルフの姐さんと兄貴の子供が特異体質持ちの可能性を伝えたら、自分達が脅かされると考えるドラゴン族の馬鹿は兄貴の王城への出仕を魔王様に進言するはずだ。
兄貴の策謀を成就させるアシストとしては最適だろう。
そう考えを纏めると我が居城リッシュ城に着いた。
「お帰り〜アーロン、早く早くお姉様とお兄様の子供の話して欲しいのだぁ」
「おかえりなさいませアーロン様」
出迎えてくれたのは2人の女性で、俺のことをアーロンと呼ぶ無邪気で天真爛漫な女性が第一正妃のバルバラ・ツェペリ、アーロン様と呼ぶお淑やかで純粋な女性が第二正妃のミレーネ・レストだ。
純血吸血鬼の血を多く残すため俺にはこの2人の他に3人の純血吸血鬼と5人の他の種族の妻がいる。
「留守の間変わったことは無かったか」
「アーロン様、ドラゴレアム丞相がお越しになられてます」
早速来やがったかドラゴン族の馬鹿丞相、まぁ魔王様の元に甥っ子の誕生に立ち会いたい旨は伝えたから、どんな子供なのか気にしてってのはわかるがまさか丞相自ら来るとはな。
「丞相様はどちらに」
「応接室の方にお通ししております」
「バルバラ、ミレーネ、後で話したい事があるので寝室で待っていろ、俺は丞相様にお会いしてくる」
「アーロン、わかったのだぁ。お姉様とお兄様の子供の話を楽しみに待ってるのだぁ」
「アーロン様、了解致しました」
俺は足早に応接室に向かう。
「丞相様、お待たせして申し訳ございません」
「ホッホッホッ、良いのですよアーロン。してあの魔族の面汚しと忌々しいハイエルフの子供はどうでしたか」
「ハッ、どうやら特異体質持ちの可能性があり、一度王城にレオンダイトを呼んで些細を魔王様に話させるのが良いかと」
「な、な、な、なんと特異体質ですと、それは困ります、困りますぞ、それが本当なら例外など無くステテコ山脈の谷に突き落とさないと、突き落とさないとですぞ」
おいおい明らかに動揺してんじゃねぇかこの馬鹿丞相。
笑いを堪えつつ、アーロンは続けた。
「しかしそんなことをすれば、レオンダイトとエルフェアリーナ王国を完全に敵に回すことになりますが、双方相手にして、勝てるとお思いですか?」
「そっそっそれは、うーむですが例外など無いのですぞ。その子供が忌み子であるならばステテコ山脈の谷に突き落とすのが魔族の習わしなのですぞ」
「ならば簡単です王城にレオンダイトを呼び、子供が成人した暁には魔王様に人質に出すことを約束させるのです。今は腑抜けたレオンダイトのこと、きっと魔王様に息子を殺されなかったことを感謝し、その案を受け入れますよ」
「なっなるほど、それならレオンダイトとエルフェアリーナ王国を敵に回さず尚且つこちらにとっても利益にしかなりませんなぁ。アーロン殿流石ですなぁ。では私めは王城に帰りこのことを魔王様に進言させていただきます。明日改めて、王城への出仕書を持参するので、届き次第あの魔族の面汚しにお届け願えますかなぁ。ホッホッホッ」
単純な馬鹿丞相でほんと助かるぜそれも明日までに届けるって時点でお前が魔王様操ってるのバレバレだろ、もっと頭使えよ。
「心得ました。では城の外までお送りしましょう」
ドラゴレアム丞相は、それを聞くと外に出て、王城にむけて飛び去った。
アーロンはそれを見届けると、すぐに踵を返し妻2人の待つ寝室に向かう。
「はぁ〜あの馬鹿丞相の相手は肩凝るわ〜」
「アーロン、御苦労様なのだぁ。い・や・し・て・あ・げ・る」
おいバルバラそこはやめて、変な声出ちゃうから。
「バルバラ様、アーロン様をあまり虐めてはいけません」
ミレーネがそう言ってバルバラを掴んで引き離す。
「ミレーネも凝ってるのかなのだぁ、ここかここなのかぁ凝り凝りなのだぁ」
「あっバルバラ様そこはおやめくださいませ」
本題を思い出したアーロンが2人に向き直り、
「バルバラ、ミレーネ、それは本題が終わってからな」
2人は顔を真っ赤にして、コクコクと頷き黙った。
「兄貴と姐さんの子供なんだが、どうやら2人の血を色濃く継いだ忌み子の可能性がある。明日それを含めた話し合いに俺とバルバラの同席を求めている」
「待望の特異体質の子供なのだぁ」
「忌み子ですか」
喜ぶバルバラとは対照的にミレーネは思案顔だった。
「ミレーネ、お前には居城に俺とバルバラがいてるように偽ってもらいたい。バルバラお前には2体のドール人形に俺とお前の血をそれぞれ入れた分身人形を展開してもらう」
「かしこまりましたアーロン様」
「アーロン、了解なのだぁ」
「話は以上だ」
そう言ってアーロンはベットの横をポンポンと叩き側にきたバルバラとミレーネを抱き寄せ、やることやって眠りに落ちてった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。